農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (41) 【防除学習帖】第280回2025年1月11日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っているが、そのことを実現するのに必要なツールなり技術を確立するには、やはりIPM防除の有効活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探っている。
みどり戦略対策に向けたIPM防除でも、必要な場面では化学的防除を使用し、化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせて防除効果の最大化を狙うのだが、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できるようにするためには、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理すると、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道が探れると考えている。そのため、有効成分の作用機構ごとに分類し、RACコードの順番に整理を試みている。
現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
10.アリルフェニルケトン
(1)作用機構:[B]細胞骨格とモータータンパク質
(2)作用点: アクチン/ミオシン/フィンブリン機能
(3)グループ名: アリルフェニルケトン[グループコード:50]
(4)殺菌剤の耐性リスク:中
(5)耐性菌の発生状況:うどんこ病菌で耐性菌が確認されている
(6)化学グループ名・有効成分名(農薬名):
[1]ベンゾイルピリジン・ピリオフェノン(クロスアウト,カッシーニ)
(7)グループの特性:
このグループは、ベンゾイルピリジン構造を持ち、各種うどんこ病に特異的な活性を示す。うどんこ病菌の細胞内部で繊維状構造をつくる骨格の1成分であるアクチンに作用することや、ATPを分解して細胞内エネルギーを生み出すタンパク質であるミオシンに作用することでうどんこ病菌の生命活動を阻害し、吸器や分生胞子の形成を阻害し、付着器や菌糸の形態異常を起こさせると考えられている。これによって、病斑の形成や分生胞子の飛散を防ぎ、うどんこ病の蔓延を防ぐことができる。浸達性を示すことから、内部寄生性のうどんこ病菌にも効果を発揮することもできる。また、天敵や訪花昆虫への影響が少ないことも特徴である。
(8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
ピリオフェノンのリスク換算係数は0.316であり、基準年の2019年の出荷量は約0.2トンである。使用量も少なく、重要病害であるうどんこ病に優れた効果を示す貴重な殺菌剤であるため、耐性菌対策を十分に講じながら大切に使用する方が得策と考える。従って、本剤のリスク換算量削減を意識する必要はないだろう。
![gakushu280 IPM防除実践考[41]_2025-1-10up-2.jpg](https://www.jacom.or.jp/nouyaku/images/757f0646052a1c70424481c1ab58257d.jpg)
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