農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(43)【防除学習帖】第282回2025年1月25日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っているが、そのことを実現するのに必要なツールなり技術を確立するには、やはりIPM防除の有効活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探っている。
みどり戦略対策に向けたIPM防除でも、必要な場面では化学的防除を使用し、化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせて防除効果の最大化を狙うのだが、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できるようにするためには、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理すると、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道が探れると考えている。そのため、有効成分の作用機構ごとに分類し、RACコードの順番に整理を試みている。
現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
12.ピラゾールカルボサキミド
(1)作用機構:[C]呼吸
(2)作用点: 複合体Ⅰ NADH酸化還元酵素
(3)グループ名: ピラゾールカルボキサミド[グループコード:39]
(4)殺菌剤の耐性リスク:
(5)耐性菌の発生状況:耐性菌未発生
(6)化学グループ名・有効成分名(農薬名):
[1]トルフェンピラド(ハチハチ)
(7)グループの特性:
前回のピリミジンアミンと同様に、病原菌が生命活動エネルギーを産生するために必須の呼吸に関わる反応を阻害する。現在のところこのグループ唯一の有効成分であるトルフェンピラドは、複雑な呼吸反応の中の複合体ⅠのNADH酸化還元酵素の働きを阻害し、その結果、正常な糸状菌の胞子発芽や菌糸伸長をできなくして効果を発揮する。糸状菌であるうどんこ病をはじめとした子のう菌類や白さび病をはじめとした担子菌類、べと病をはじめとした卵菌類など、幅広い病害に優れた防除を発揮する。
トルフェンピラドは、もともとチョウ目やアブラムシ類に優れた効果を示す殺虫剤として開発されたが、作用点が病原菌にも存在することから、病害にも活性を示す。
(8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
トルフェンピラドのリスク換算係数は1.000であり、基準年の2019年の出荷量は約21トンである。この出荷量は殺虫剤として出荷の方が多いと考えられ、殺菌剤としての使用量低減は考えにくい。敢えて殺菌剤として考えると、耐性菌の発生がなく、子のう菌類や卵菌類にも効果のある貴重な殺菌剤であるため、耐性菌対策に留意しながら使用し、使用量もそう多くないことから、低減は考えず、貴重な殺菌剤として使用する方が得策と考える。ただし、耐性菌対策として考える際は、殺虫剤としての使用状況を十分に考慮する必要がある。![]()
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