農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(74)【防除学習帖】第313回2025年8月30日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っており、そのことを実現するのにはIPM防除の活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探りたいと考えている。
IPM防除では、みどり戦略対策に限らず化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせ、必要な場面では化学的防除を使用して防除効果の最大化を狙うのが基本だ。その際、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できればみどり戦略対策にもなるので、本稿では現在、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理し、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道がないかを探っている。そのため、登録農薬の有効成分ごとに、その作用機構を分類し、RACコードの順番に整理を試みている。現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
35.チアジアゾールカルボキサミド・イソチアゾールカルボキサミド
(1)作用機構:[P]宿主植物の抵抗性誘導
(2)作用点: サリチル酸シグナル伝達
(3)グループ名:チアジアゾールカルボキサミド・イソチアゾールカルボキサミド/FRACコード[P3]
(4)殺菌剤の耐性リスク:低
(5)耐性菌の発生状況:無し
(6)化学グループ名/有効成分名(農薬名):
チアジアゾールカルボキサミドとイソチアゾールカルボキサミドは異なるグループ名が記載されているが、耐性菌マネジメントにおけるFRACコードは同じP3であるため、同一のグループとして扱う。
このグループには現在のところ2つの化学グループおよび有効成分名、農薬名がある。
[1]チアジアゾールカルボキサミド/チアジニル(ブイゲット)
[2]イソチアゾールカルボキサミド/イソチアニル(スタウト、ルーチン)
(7)グループの特性:
このグループに属する有効成分チアジニルとイソチアニルは、稲糸状菌病および細菌性病害に効果を示す。糸状菌に対し直接的な抗菌活性は無いが、チアジニルやイソチアニルが稲に処理されることによって、イネ病害感染時に抵抗性発現に関与する酵素"フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)"を活性化させることや、病原菌の感染に関係なく発動する特定の抵抗性遺伝子が活性化することで病原菌に対する全身抵抗性を発動させて長期間防除効果を発揮する。病害の感染前に病害抵抗性を誘導させることが必要なので、病害発生前に予防散布を確実に実施する必要がある。
(8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
この化学グループに属するチアジニル、イソチアニルの両成分のリスク換算係数は、いずれも0.316と中リスクの部類であるが、イネいもち病防除の基幹防除剤として全国各地で使用されていることと、基準年のリスク換算量はそれぞれ、23.6および21.3トンと基準年の農薬全体のリスク換算量総数からするとごく少なく、環境リスクは低い農薬であると考えられる。
このことに加え、耐性菌の発生リスクがほとんど無く、防除薬剤の少ない細菌病にも効果を示す貴重な薬剤であることから、削減を考えることなく使用を継続する方が得策である。
(9)チアジアゾールカルボキサミド・イソチアゾールカルボキサミドの農薬登録がある主要病原菌一覧
チアジアゾールカルボキサミド・イソチアゾールカルボキサミドの農薬登録がある主要作物・病害名・病原菌別有効成分の一覧を次表に示した。実際の使用前には必ず農薬ラベルにて登録内容(適用作物・使用方法等)を確認して正しく使用してほしい。
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