GMO食品を避けたい消費者に選択の機会を2018年4月3日
・生活クラブ生協連が意見書提出
2017年4月から開催されてきた消費者庁主催の「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」が、3月14日に最終回を迎え、報告書について合意されたが、これについて、生活クラブ生協連が「今回まとめられた報告書は、遺伝子組み換え食品を避けたいと考える消費者にとって選択の機会が奪われる結果を招きかねないと懸念」し、意見書を3月20日に消費者庁長官と内閣府・内閣府特命担当大臣あてに提出した。
意見書で生活クラブ生協連は、この報告書は「義務表示の対象を拡大しないまま、『遺伝子組み換えではない』と表示するための条件を遺伝子組み換え不検出とする内容で、消費者庁は、『遺伝子組み換えでないものを分別』という表示も言い換え」を求めているが、「『遺伝子組換えでない』表示の厳格化だけが変更点となれば、表示基準(内閣府令)の改正を必要としないことから、パブリックコメントが不要とされるのではないかという懸念」があると指摘。 そのうえで同生協連は「これまで、すべての遺伝子組み換え食品を義務表示の対象とすべきと主張」してきており、この「報告書は、消費者が食品を選択する上で重要な意味を持つため、消費者の声がきちんと反映されるべき」であり、パブリックコメントを求めるべきだとしている。
意見書の全文は以下の通り
【遺伝子組み換え食品表示制度に関する意見書】
◆はじめに
2017年4月から開催されてきた「遺伝子組み換え食品表示制度に関する検討会」は3月14日に最終回が開催され、報告書がまとめられました。報告書は、表示義務対象品目を拡大せずに「現行制度を維持することが適当」とする一方で、「『遺伝子組換えでない』表示が認められる条件を現行制度の『5%以下』から『不検出』に引き下げることが適当」としています。
生活クラブはこれまで、すべての遺伝子組み換え食品を義務表示の対象とすべきと主張してきました。また、遺伝子組み換えでないトウモロコシやナタネのIPハンドリングによって遺伝子組み換え作物を避ける活動を生産者と連携して続けてきました。
今回まとめられた報告書は、遺伝子組み換え食品を避けたいと考える消費者にとって選択の機会が奪われる結果を招きかねないと懸念し、今回の遺伝子組み換え表示制度見直しに対する意見を表明します。
◆すべての遺伝子組み換え食品を義務表示の対象にすべきです。
現行の遺伝子組み換え表示制度の最大の問題は、表示義務対象原材料の範囲が限られていることです。遺伝子組み換えされたDNAやそれによって発現したタンパク質が最終製品から科学的に検出できる食品のみを表示義務の対象としているため、食用油、果糖ブドウ糖液糖など遺伝子組み換え由来の原料が加工食品などに幅広く使用されているにもかかわらず、消費者の知る権利が阻害されています。
現在、ほとんどの食品に遺伝子組み換え表示が見られませんが、これには二つの相反する意味があります。
・遺伝子組み換え由来の原料が含まれない(義務表示の対象の場合。国産大豆を用いた豆腐や納豆など)。
・かなりの確率で遺伝子組み換え由来の原料が含まれる(義務表示の対象でない場合。輸入の不分別原料から搾油された食用油、輸入の不分別トウモロコシから作られた糖類を原料とした飲料を含む加工食品品など)。
このように表示がないことが全く逆の意味を持つことが、現行制度の最大の欠陥であり、消費者の誤認を招く最大の原因です。このような紛らわしさこそ第一に改善すべき点であり、表示義務対象を科学的検証が可能な場合のみではなく、トレーサビリティ(社会的検証)を根拠として全品目とすべきです。
◆すべての遺伝子組み換え食品が義務表示の対象となるまでは、任意表示は現行のあり方を維持すべきです。
上述のように義務表示対象の品目が限られることによって消費者に遺伝子組み換え原料についての正確な情報が伝えられないなか、「遺伝子組み換えでない」および「遺伝組み換えでないものを分別」の正確さだけを議論したのは、議論のすすめ方として適当でなかったと考えます。
「遺伝子組み換えでない」表示の条件の厳格化で「遺伝子組み換えでない(ものを分別)」表示が実態として減少する、あるいはなくなるとすれば、消費者にとって遺伝子組み換えでないものを選択する手段が実質的になくなります。「遺伝子組み換えでない(ものを分別)」表示を支えてきたIPハンドリングのしくみそのものに対しても大きなダメージとなります。
混入率5%以下の表示例が今後Q&A等で示されるとのことですが、検討会で示された文例を見ると、より分かりにくい表示になってしまうと言わざるを得ません。
任意表示のあり方については、すべての遺伝子組み換え食品が義務表示の対象となったうえで改めて検討すべきです。
◆パブリックコメントを実施し、幅広く意見を聞いてください。
「遺伝子組換えでない(ものを分別)」表示の要件を厳しくすることだけが、遺伝子組み換え表示制度の変更点となれば、消費者庁次長通知の改正ですむ問題であり、食品表示法に基づく表示基準(内閣府令)の改正を必要としないことから、パブリックコメントも不要とされるのではないかと懸念しています。3月14日の検討会では、報告書の公表と説明会の開催については消費者庁から予告されましたが、パブリックコメントについての言及はありませんでした。
今回の検討会の報告書は、消費者の食品選択の利益に関する重大問題にかかわるため、実際に食品を購入する消費者の声をきちんとふまえて実施されるべきであり、パブリックコメントで広く意見を聞くべきです。
(関連記事)
・スギ花粉アレルゲン遺伝子導入イネで説明会(18.02.28)
・稲の直播栽培促進で提携 IRRIとBASF(17.12.06)
・ペチュニア4品種を遺伝子組換え体のため回収 サカタのタネ(17.06.01)
・遺伝子組換え作物栽培面積20年で100倍に ―バイテク作物商業栽培20周年記念セミナー(上)(16.09.22)
・TPP11と成長ホルモン問題(17.09.21)
・遺伝子組み換えイネの開発・実験中止を 生活クラブ生協連(16.03.28)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日