国産ハーブ「クロモジ」エキス インフルエンザの吸着と侵入をブロック2020年10月30日
養命酒製造(株)と信州大学農学部の共同研究グループは、クロモジエキスが細胞に作用し、インフルエンザウイルスの吸着と侵入をブロックする可能性があることを示す研究成果を得た。
クロモジエキスはインフルエンザ感染の初期段階である「吸着・侵入」をブロック
研究成果は、論文「クロモジ熱水抽出物のインフルエンザウイルス感染抑制メカニズムの検討」として、「薬理と治療」(2020年48巻8号、8月28日発刊)に掲載された。今回の結果を受け、信州大学の河原岳志准教授は、「クロモジエキスは、食品として日常的に利用できる素材なので、感染リスクを身近に感じるときの予防策としての利用が期待できる。今後、クロモジエキスの抗ウイルス作用について、その有効成分や標的分子の解明研究が求められる」と述べている。
生薬として使われる国産ハーブ「クロモジ」インフルエンザウイルスは細胞表面に吸着し、内部へ侵入して遺伝情報を複製することで増殖し、それらが細胞表面から大量に放出されて、周囲の組織や、他の人に感染を広げていく。クロモジエキスは、感染ステップの初期段階である、ウイルスの細胞への吸着・侵入をブロックする。
上気道感染症のひとつであるインフルエンザでは、上気道の粘膜上皮細胞の表面にインフルエンザウイルスが吸着し、細胞内に侵入してウイルスが増殖。細胞へのウイルスの吸着から8時間後には数百から数千倍に増殖し、周囲の細胞や組織に感染を広げる。さらに、24時間後には約100万倍に増殖しながら、粘膜上皮を傷害。そのため、インフルエンザ感染予防のためには、そもそも細胞の中にインフルエンザウイルスが入ろうとする"初期段階"で対処をすることが重要となる。
今回、信州大学農学部の研究グループがクロモジエキスのインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス作用のメカニズムについて検討したところ、クロモジエキスが細胞へ働きかけることで、インフルエンザウイルスの細胞への「吸着・侵入」をブロックすることが分かった。また、同研究グループの過去の研究では、クロモジエキスの防御作用に持続性があることや、ウイルスの侵入後においてもクロモジエキスを添加すると増殖抑制効果が得られることを明らかにしている。
2017年から2018年にかけての3か月間(12月中旬〜3月中旬)、クロモジエキスを配合した飴の摂取がインフルエンザ罹患を抑制できるか実証研究を実施した。その結果、クロモジエキスが入っていない飴を摂取したグループの罹患率が13.4%だったのに対し、クロモジエキス配合飴を摂取したグループでは3.0%となり、有意に罹患率が減少することを確認。罹患者数では77.8%の減少が見られ、風邪症状の発生も抑えられていた。
クロモジは、日本の山地に自生するクスノキ科の落葉低木。リラックス作用が期待されるリナロールを主成分とするよい香りがあり、古くから楊枝や香木、生薬(烏樟:うしょう)として使われてきた国産ハーブだ。
同社は、全国のクロモジ事業に携わる自治体や団体らとともに、2018年9月に「クロモジ研究会」を発足。クロモジ資源の保護と産業の発展に寄与し、人々の健康増進に貢献することをめざし、クロモジの研究成果や事業活動を一般に向けて認知啓発する活動を行っている。
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