【クローズアップ】価格への影響は? サツマイモ基腐病が全国に拡大2022年5月31日
これまで日本では見られなかった病害・サツマイモ基腐病が、2018年11月に沖縄県で初確認されて以降、全国に広まり、サツマイモ生産農家の経営に大きな影響を与えている。その現状を取材した。
各都道府県の病害虫防除所が出しているサツマイモ基腐病に関する特殊報(その県域で初めて確認されたときに出される)を時系列順に並べると右の表のようになる。
感染広がりの原因は不明
海外のどこから、どのようにして沖縄に入ってきたのか。今年に入っても3県で確認されているが、国内でなぜ感染が拡がっているのかは、一切不明だ。生産者同士が種芋や苗をシェアしあったり、販売業者から購入したなかに感染した種芋や苗が混入していたかもしれないし、「水滴が飛んでも感染する」ので、雨が降った時にその雨水の流れが近隣ほ場に菌を運んだということもあるだろう。人や農機具に付着して運ばれるケースもあるかもしれないが、これだという決め手は不明なのが現状だ。
だが、上記の時系列表でも分かるように、「注意報」が出ているのは、鹿児島と宮崎だけで他の都道県では出ていない。
それは、農研機構をはじめとする研究機関が、サツマイモ基腐病について、早期に徹底して分析し、有効な対策技術を明確したからだと、取材した宮崎県北諸県農業改良普及センターの杉村幸代園芸担当主幹はいう。
下の図は、杉村主幹の改良普及センターやJA、行政、種苗販売業者などによる「サツマイモ基腐病対策連絡協議会」が作成したもの。「スピード感が大事なので、データをメール等で関係者に配布し、必要に応じて印刷するケースもある」という。
「育苗など本圃に移行する前の対策を徹底することが大事」だと強調したうえで、「本圃に移行しても、葉が繁茂する前に早期に発見して対策すれば、経済的損失もそれほど大きくはならない」と、早期発見、早期対策が大事だという。
侵入防止や早期発見のために
県段階でも茨城県病害虫防除所は「予察6月号」で、次のようなことを強調している。
●侵入防止のために
・来歴が不明な種イモや苗は絶対に持ち込まない。
・採苗に使うハサミはこまめに洗浄、消毒しながら、苗は地際から5センチ以上の位置で切り取り、採苗後は速やかに苗消毒を行う。
・切り苗を購入するときは、基腐病対策が徹底されていることを販売店に確認。
●侵入に備えた準備
・排水の悪いほ場は発病しやすいため、明きょ設置や耕盤破砕、枕畦の途中に排水溝を設置するなど、排水対策を徹底。
・他のほ場への拡散を防ぐため、作業するほ場ごとに農機具や長靴等についた土をよく落とし、きれいに洗浄する。
●植え付け後の早期発見のために
・万が一の発生に備え、作付ほ場ごとに植えた苗を追跡できるよう、苗の履歴(以下の1~3)を記録する。1苗床の番号、2採苗日、3植付日(切苗の場合は購入日、店舗名)
・発生を拡大させないためには早期発見が重要。茎葉が繁茂すると発病株の発見が難しくなるため、茎葉が地上部を覆うまでの期間は、特に以下の観察を徹底する。1葉の変色(赤変・黄変)2株元の茎の黒変。
こうした対策技術が生産者にも素早く伝えられ、的確に防除されることで、大きな被害が発生せずに済んできているといえる。今年もこれからがサツマイモ栽培の本格的な時期だといえるが、引き続き油断なく防除して、子どもたちも大好きな美味しいサツマイモを供給してほしいと思う。
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