温暖化対策で世界が注目の国際農研の「BNI強化コムギ」 インドでも成果 今春から北海道で試験作付けへ2023年4月11日
窒素肥料を大幅に減らしても生産性を保つ画期的な技術として世界から注目されている国際農研の「BNI強化コムギ」が、インドでの試験作付けでも成果を出し始め、この春から北海道でも試験作付けを始める。ウクライナ危機などで肥料原料の確保が世界的な課題となる中、日本の技術の国際的な貢献に加えて国産小麦の生産拡大にもつながる研究として期待が高まっている。
BNI強化コムギ(左)と通常のコムギ(国際農研提供)
BNI強化コムギは、通常の作物生産で窒素肥料の多くが温室効果ガスとして排出されてしまうのに対し、土壌窒素の溶脱を防いで効率よく窒素を活用できる技術によって世界で初めて国際農研で開発された。同研究所では約10年にわたって茨城県つくば市を拠点に研究を重ね、窒素肥料の6割を減らしても通常の小麦と同じ収量を維持できる成果が得られている。
昨年、米国科学アカデミー発刊の「米国アカデミー紀要(PNAS)」の2021年の最優秀論文賞を受賞し、気候変動やウクライナ危機で肥料原料の高騰が課題となる中、世界に貢献できる日本の農業技術として期待が高まっている。
こうした成果も踏まえ、国際農研は、昨年秋から、科学技術振興機構(JST)と進める地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)で、世界第2位の小麦産出国のインドの6カ所のほ場で、BNI強化コムギの試験的な作付けを進めている。インドの小麦の栽培期間は11月から4月で、先月、国際農研の研究員が現地を訪れて穂の状況を確認したところ、BNI強化小麦の穂の数が通常の小麦より多い順調な成果が確認され、今後、詳しく分析を進めることにしている。
今年春からは北海道などでもBNI強化小麦の交配に向けた試験作付けを始めることになり、現地の研究機関と連携して、日本に適したBNI強化小麦の品種開発に向けた研究が進められる。元々BNI強化コムギの開発は、窒素肥料を購入できない途上国などが少ない窒素でも収量を確保できるように支援する国際貢献の意味合いが強かったが、温暖化対策やウクライナ危機に伴う小麦価格の高騰で国産小麦の生産拡大が課題となる中、国内でも環境負荷軽減につながる技術として注目度が高まっている。
BNI強化コムギをめぐっては、海外からの関心が高く、今月宮崎県で開かれるG7農相会合でも成果が展示される。国際農研の吉橋忠プロジェクトリーダーは、「G7はいずれも小麦をつくり、食べている国であり、研究への関心も高い。また、そうした国は日本が小麦を輸入している国でもあり、日本で食べる小麦の技術につながる側面もある。国際的な貢献とともに、北海道内などでの試験作付けを通してさらに国内での小麦生産にも役立てていきたい」と話している。
重要な記事
最新の記事
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(1)養豚農家に寄り添い疾病を防ぐ クリニック北日本分室 菅沼彰大さん2025年9月16日
-
【石破首相退陣に思う】戦後80年の歴史認識 最後に示せ 社民党党首 福島みずほ参議院議員2025年9月16日
-
【今川直人・農協の核心】全中再興(6)2025年9月16日
-
国のプロパガンダで新米のスポット取引価格が反落?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年9月16日
-
准組合員問題にどう向き合うか 11月15日に農協研究会開催 参加者を募集2025年9月16日
-
ファミリーマートと共同開発「メイトー×ニッポンエール 大分産和梨」新発売 JA全農2025年9月16日
-
「JA共済アプリ」が国際的デザイン賞「Red Dot Design Award2025」受賞 国内の共済団体・保険会社として初 JA共済連2025年9月16日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」北海道訓子府町で じゃがいもの新品種「ゆめいころ」を収穫 JAタウン2025年9月16日
-
山形県産「シャインマスカット」品評会出品商品を数量限定で予約販売 JAタウン2025年9月16日
-
公式キャラ「トゥンクトゥンク」が大阪万博「ミャクミャク」と初コラボ商品 国際園芸博覧会協会2025年9月16日
-
世界初 土壌団粒単位の微生物シングルセルゲノム解析に成功 農研機構2025年9月16日
-
「令和7年8月6日からの低気圧と前線による大雨に伴う災害」農業経営収入保険の支払い期限を延長(適用地域追加)NOSAI全国連2025年9月16日
-
農薬出荷数量は1.3%増、農薬出荷金額は3.8%増 2025年農薬年度7月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年9月16日
-
林業の人手不足と腰痛課題解消へ 香川西部森林組合がアシストスーツを導入 イノフィス2025年9月16日
-
農業支援でネイチャーポジティブ サステナブルの成長領域を学ぶウェビナー開催2025年9月16日
-
生活協同組合ユーコープの宅配で無印良品の商品を供給開始 良品計画2025年9月16日
-
九州・沖縄の酪農の魅力を体感「らくのうマルシェ2025」博多で開催2025年9月16日
-
「アフガニスタン地震緊急支援募金」全店舗と宅配サービスで実施 コープデリ2025年9月16日
-
小学生がトラクタ遠隔操縦を体験 北大と共同でスマート農業体験イベント開催へ クボタ2025年9月16日
-
不在時のオートロックも玄関前まで配達「スマート置き配」開始 パルシステム千葉2025年9月16日