日本新産の植物「ナントウウリクサ」石垣島で発見 東京農大、鹿児島大2025年12月5日
鹿児島大学大学院理工学研究科の山崎海都博士課程学生、自然環境研究センターの森脇大樹主任研究員、中央大学理工学研究所の中島一豪客員研究員、広島大学大学院先進理工系科学研究科の駒田夏生助教、東京農業大学地域環境科学部の武生雅明教授らの研究グループは、沖縄県石垣島の草地で発見した植物が、これまで台湾・中国南部・ベトナム・ラオスにだけ知られていたアゼナ科ハナウリクサ属のナントウウリクサ(Torenia benthamiana Hance) であることを明らかにし、日本新産植物として報告した。
発見されたナントウウリクサ
同研究グループは、沖縄県石垣島の放牧地や水田畦畔といった人間の営みによって維持、利用されている草原(二次草地)を対象とした網羅的な植物相調査を実施。その過程で採取した植物のひとつがナントウウリクサ(Torenia benthamiana Hance, アゼナ科ハナウリクサ属)であることを明らかにした。同種の日本からの記録はこれが初めて。
アゼナ科ハナウリクサ属のナントウウリクサは、茎・葉・萼に密生する毛が特徴。この形態的特徴により、日本の既知のハナウリクサ属3種(ウリクサ、ツルウリクサ、ゲンジバナ)と明確に区別される。これまで知られているナントウウリクサの分布域は台湾北部、中国南部、ベトナム、ラオスに限られていた。
台湾では「絶滅危惧Ⅱ類」に指定されており、主に山地の河川沿いや明るい草地などに生育するとされる。今回ナントウウリクサが発見された場所は石垣島の草地で、既知分布域である台湾に地理的に近く、生育環境も類似。このことから、同種が在来植物である可能性を報告した。採集した証拠標本は鹿児島大学総合研究博物館に収蔵された。
今回、ナントウウリクサが確認された草地は、石垣牛の放牧地として利用されており、数年前に管理が放棄された場所。石垣島では中世から牛馬の放牧が盛んに行われ、以前は草地が広がっていたと推測されるが、現在は開発によりその多くが失われている。放牧地は家畜伝染病対策のため立ち入りが制限されていることもあり、草原の現況調査はこの半世紀ほとんど行われていない。
今回の発見は、今も残る放牧地が草原生植物のレフュージアとして機能しており、生物多様性保全上重要であることを示している。
ナントウウリクサは発見されたばかりだが、すでに絶滅の危機に瀕しており、近年石垣島では、後継者の不足による離農や、生産拡大のための土地整備によって、放牧地や水田畦畔といった草地が急速に失われている。このままでは、ナントウウリクサだけでなく、多くの草原生植物が石垣島から姿を消してしまう可能性があり、生産活動と生物多様性保全を両立させるような戦略の策定が急務であると言える。
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