「暑さ対策」品種 黄変果が少ないトマト「桃太郎ブライト」開発 タキイ種苗2025年3月18日
タキイ種苗は、猛暑によって引き起こされるさまざまな農作物への影響に対応するため、"暑さ対策"品種として、黄変果の発生が少ないトマト「桃太郎ブライト」を開発し展開している
トマト「桃太郎ブライト」
トマトの原産地は、南アメリカのアンデス山脈と標高が高く、日照量は豊富で、比較的冷涼でかつ湿度の低い地域。そのため、果菜類の中でも高温は苦手で、生育適温は15~25℃となり高温下ではさまざまな生理障害や病害が発生しやすくなる。農林水産省の2023年の調査によると、高温により発生した「着花・着果不良」の影響は全国で4割程度みられた。また、同調査では「不良果」や「日焼け果」も全国で2割程度発生しており、トマト生産現場において近年の高温化は大きな問題となっている。
ヘタ周りが黄色くなっているトマトは、気温が高い時期に発生する生理障害の一つで「黄変果」と呼ばれる。黄変果発生のメカニズムは、高温条件下ではトマトの赤色の元になるリコピンが生成されにくくなるか、緑の色素であるクロロフィル分解が遅くなるという二つの現象によるもので、直射日光が当たり果実温度が上がりやすい肩部分(果底部)が着色不良を起こして黄色くなる。遮光や換気によりハウス内環境を改善・適正化するなど、栽培管理によって発生をある程度は抑えられるが、資材費用や労力の増加を伴うため、トマトの性質上、根本的な解決にはならない。
タキイ種苗が開発した黄変果の発生が少ない冬春栽培向けトマト「桃太郎ブライト」は、栽培が長期化する傾向にある冬春栽培において重要な形質となるスタミナと着果性をコンセプトに育成された品種。この品種は、ショルダーグリーン (肩部の濃緑部分)のない均一な着色性を備え、着色にムラがでにくく、ヘタの周りまで赤く色づくため、春先に問題となる黄変果の発生が少ないという特長がある。
「桃太郎ブライト」で出荷の手間とコスト削減
ヘタ周りが黄色くなる「黄変果」したトマト
黄変したトマトは規格外となり、商品化率を低下させる要因。また、出荷できても外観が悪い印象を消費者に与えて産地のイメージ悪化を招く要因になる。一方、ある青果会社は、黄変果の発生する時期には1玉ずつ確認してから流通販売されるため、作業には手間とコストがかかっていたが、「桃太郎ブライト」を導入してからは確認作業など労働時間と人件費の削減につながったという。
タキイ種苗は、「桃太郎ブライト」のように黄変果の発生が少なく、ヘタの周りまで赤く色づく特長をトマトの果実品質を維持する一つとするため「スムカラ」としてシリーズ化。「スムカラ」は、「スムーズカラー」の略称で、温暖化が進む条件下でも生産現場から流通、販売に至るまで、安定出荷につながる。同社は今後、「スムカラ」シリーズのトマト品種拡充に取り組んでいく。
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