【近藤康男・TPPから見える風景】外国人による農地取得について再度考える2018年4月12日
3月23日の参院農水委で民進党の徳永議員が、「外国法人による農地取得の動きを農水省としても把握しておくべきだ」と質問し、斎藤農水相が「日本では農業者による過半の出資が必要なため、基本的には外国法人の流入は無い」としつつも、毎年調査をしている森林の事例と合わせ、「農地に付ついても全国調査をする」と答弁している。
また、TPP11(CPTPP)の交渉において、NZの新政権は、最終的には協定発効前に国内法で制約することとしたものの、急増する外国人による中古住宅投資を協定において留保(NZを例外扱いに)する立場を主張していたことも、この農地の外国企業による所有の問題を改めて思い起こすきっかけにもなった。
16年10月20日掲載のこのコラムで、TPPでの投資章で農地への投資はどんな扱いになるのか、国家戦略特区での企業による農地取得との関連は?などの問題意識で書いたことがある。重複をお許しいただいて、再度この問題に触れてみたい。
◆農地は地域・地域経済にとって基礎的な社会的資産だ
外国からの投資や、企業の農業参入一般を徒に拒む立場をとるものではないが、農地は地域農業の欠かせない基盤として、地域経済・環境の維持に不可欠な資産である。その意味で農地は、地域住民の関与と意志の反映が担保される枠組みで管理される必要がある。
国籍を問わないまでも、おのずと非居住者たる遠隔地の企業や非居住者たる外国人・法人による所有は制限されるべきと考える。
土地所有によるものではないが、14年に宮崎県都農町に進出した世界最大のキウイ生産法人(NZ)の日本法人マイキウイは直営農園・委託生産を含め現在15haの土地で栽培しているが、販売会社であるゼスプリインタ-ナショナルジャパンは、当初の計画を大幅に変更して、大規模の農園を中心に、将来は全国で年間1万8000トンを生産・出荷する目標に変更するという。現在の国産のキウイ全体の2万2千トンに対しても8割に匹敵する数字だ。(18年4月3日、農業新聞から)
地域=町と非居住者=法人とのズレを意味する事例だと思う。
◆あまりにも長い、外国人土地法を始めとする政府の不作為
外国人土地法は1925年に制定され、第1条で、日本人・日本法人による土地の権利享有を制限している国の国民・法人に対しては、彼らが属する国が制限している内容と同様の制限を勅令(政令)によって定めることがとができると定めている。また、第4条では、国防上必要な地区においては、勅令(政令)によって外国人・外国法人の土地に関する権利の取得を禁止、または条件もしくは制限をつけることができると定めている。しかし、ほぼ100年たった今もその政令は定められることの無いままになっている。※外国人土地法(外部リンク)
国会においても、前回調べただけでも2010年の菅首相から現在の安倍首相に至るまでほぼ毎年、GATS14条の"資源安保上の理由"での例外規定なども引き合いに、検討の必要性や法整備の必要性が繰り返され、今国会でも取り上げられている。しかし、やっと"調査する"という答弁だけに止まっている。具体化されているのは国会答弁とは真逆の政策だけだ
不作為の結果、日本の農地所有は国籍での制約ではなく、農地法による制約でかろうじて企業による農地との関わりが50%未満の支配に止まっているだけとなっている。
しかし、それも国家戦略特区では、5年間の時限立法とはいえ、企業による支配的な農地所有が認められ、そこには当然条件を備えた外国法人であれば農地所有は可能である。そして特区は、あくまで、より拡大するところに本旨があり、この小さな穴は広がる可能性も否定できない筈だ。
TPPでは「投資・サ-ビスの留保(例外措置)」として、附属書Ⅱ(日本国の留保)の表の10番で「政令により日本国における外国人又は外国の法人による土地の取得又は貸借を禁止し、又は制限することが出来る。但し、日本国の国民又は法人が、その国において、同一又は類似の禁止又は制限を課されている場合に限る。」としている。※附属書Ⅱ(外部リンク)
これは、ほとんど100年前の外国人土地法をなぞっているとしか思えない内容で、残念ながらこれまでの不作為の結果(NZのように発効までに国内法を整備すると明言するのでもなく)を延長しただけと言わざるを得ない。
地域の疲弊が益々進む今、地域農業を支え持続させ、地域内での経済の循環を促す、総合的な農地政策と地域政策こそが待ったなしになっている。
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