JA社会福祉法人の連携を 高山 拓郎 社会福祉法人松本ハイランド理事長【リレー談話室・JAの現場から】2020年7月3日
◆コロナ禍と福祉
この時期の松本(長野県)は、仰ぎ見る北アルプスの残雪もわずかとなり、梅雨の晴れ間に濃さを増す緑が鮮やかさを増し、自然の恵みの尊さを日々感ずることができる最高の場所。コロナ禍で、ここしばらく巣ごもりの続く日々ではあるが、豊かな自然の中で生きている実感をこれまで以上に味わっている。特にこの4月から地区の町会長(自治会長)を仰せつかり、540戸に暮らす一人ひとりの安全安心対策にも思いを致さねばならない日々が続き、コロナ禍がより一層身近になっている。
その新型コロナウイルスの世界的大流行による経済活動の停滞で、温室効果ガスの排出量が急減しているという。なんと中国だけでも国内のCO2排出量が25%も減少した計算になるという記事を読んだ。都市から喧騒が消え、小鳥のさえずりも聞こえるようになったという。もちろんこれは一時時的なものにすぎないだろうことは容易に理解できるが、この機会にわがままを捨てて温室効果ガスの削減をはじめとするプロジェクトに対し、心を一つに連携しあうことが大切と思う。分別のつかない子どもが駄々をこねているようにしか見えないリーダーたちにがっかりしている。
片やコロナ騒動が一段落したと自認する、かの国は猛烈な勢いで経済活動を復活させている。失ったもの以上を取り戻すためになりふり構わずでは、コロナ以前よりも地球環境は劣化していくのではとの危惧を抱かざるを得ない。
新型コロナウイルスの緊急事態宣言が解除されたとはいえ、新たなクラスターの発生や再流行の兆しも見え、特別養護老人ホームなど高齢者を預かる施設を運営する身としては気を緩めることができない日々が続いている。県外の一部高齢者福祉施設ではクラスターの発生等が報じられたが、わが国における新型コロナウイルス感染症の発生がある程度抑えられているのは、介護崩壊を自らの施設からは絶対引き起こさないとの決意のもと、全国各施設の介護職員の懸命な取り組みがあるからこそと思う。
残念なことに、医療現場の危機は連日報じられても訪問サービスも含めた介護現場に関する話題はいま一つの感があると思っている。新型コロナウイルスから高齢者を守るため、職員の安全を確保しつつ経営の枠を超えた連携が求められるようにもなってきたが、もっと光が当たるべきである。
ふり返ればこの間、マスクや消毒液、万が一のための防護服の確保に薄氷を踏む思いの日々でもあった。マスクについては各方面から支援をいただいて何とか乗り切ってきたが、第2波、第3波のことを思うと安閑としてはいられない。
当社会福祉法人は、JA松本ハイランド組合員の願いを実現した法人であり、昭和40年代から取り組まれた生活文化活動、とりわけ健康管理活動、福祉活動で培ってきた協同活動の土壌、協同組合としての原点である「助けて」といえる組織運動をかたちにしたものである。特別養護老人ホーム,グループホーム、通所施設、訪問サービスなど13の施設・事業所を擁する。職員は290名ほどだ。
近ごろ当たり前のように語られるようになったSDGsの第3の目標「すべての人に健康と福祉を」が私たちにとっては身近な目標。支える側、支えられる側という従来の関係を超えて、人と人、人と社会がつながり、一人ひとりが生きがいや役割を持ち、助け合いながら暮らしていくことのできる包容力豊かな社会を目指そうと日々頑張っている。
サービスの良否を決めるのは利用者とその家族、そして地域。私たちが関わるすべてから「いいね!」といわれるために、私たち一人ひとりが人々の夢をかなえる仕事をするためには何が大切か、あらゆる機会を通じて語り合い、共有化を図ることがSDGsの掲げる目標を自分たちのものにする近道だと、職員には伝えている。
社会福祉の仕事はクリエイティブな仕事。 それはすべての人々の「生きる」を考えることを通じて、人の一生に寄り添うことができるからである。すべての人が「ことば」を大切にしながら情報発信を続ける、伝えられる側の心を動かす組織でありたい。このことを通じて社会を変える役割を私たち全員が持っていると認識することが大切である。
私たちの役割は「知ること、気づくこと、広めること」であり、協同組合として最も大切な原点を高齢者福祉という仕事を通じて実践しているのだと自らに言い聞かせる日々でもある。SDGsは遠い世界の話ではなく私たちにとって身近なこととなると確信している。願わくば、JAに関わる社会福祉法人が連携できる仕組みがあればいいなと思っている今日このごろである。
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