(193)暑い...【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2020年8月14日
地球温暖化や気候変動が話題になってから、かなりの時間が経っています。それにしても、梅雨が明けた途端に急激に暑くなりました。新型コロナウイルス感染症の影響で行動にさまざまな配慮が求められていますが、この暑さはたまりません。日本はいつ頃から暑くなったのか、少し調べてみました。
参照データは気象庁HPの各種データ資料の中にある「東京 日平均気温の月平均値(℃)」というデータである。これは気象庁のサイトで公表されており、誰でも確認できる(http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/monthly_s3.php?%20prec_no=44&block_no=47662)。
筆者は気象の専門家ではないため、単純に数字を羅列した時系列データとして見る事にした。一番古いものは1875年6月だが全てを1~12月にそろえるため、1876~2019年までの記録のうち、2月平均、年平均、8月平均の値を素直にExcelに入力した。
それをそのまま散布図と近似直線で示したものが下記の図である。上が8月、中央が年平均、そして下が2月の平均気温である。複雑な操作は一切行わず単純にExcelの機能(散布図と単回帰)だけで示している。
これを見ると、いろいろな事がわかる。
第1に、見るだけで暑くなる。ざっとした感覚だが、平均気温ベースで東京では過去140年の間に3~3.5℃くらい平均気温が上昇している。ラフに言えば、13℃くらいだったものが16℃になったようなものである。実際にはヒートアイランド現象でもっと暑くなっているのだろうし、体感温度はさらに暑いであろう。
第2に、冬2月と夏8月、ともに平均気温が上昇しているが、その度合いはどうも冬の方が高そうだ。感覚的には夏が暑くなったこと以上に冬が暖かくなったと言った方が良いのかもしれない。もともと人類の進歩は冬の寒さの克服と密接な関係がある以上、温暖化という地球規模の問題を別にすれば、冬が「寒くなくなる」ことは活動しやすくなるという意味では良いのかもしれないが、それでも暑い...。
第3に、平均気温の上昇を少し真面目に考えると、植物や動物の生存領域が大きく変わる可能性がある。
国立環境研究所のサイト「自然生態系への影響」(https://www.nies.go.jp/escience/ondanka/ondanka02/lib/f_02.html)には、温暖化の影響がコンパクトにまとめられている。
例えば、最近、野生動物の被害が各地で伝えられているが、平均気温の上昇は野生動物、とくにサルやイノシシなどの大型哺乳動物の生息域および生存期間の延長に影響しているようだ。開発で山中にエサが少なくなっただけでなく、気候変化によりそもそも生息域と生存期間が長くなり、活動が活発になっていることを忘れてはならない。これは結構重要なポイントであり、人間とて同様である。
植物も変わる。伝統的な日本の森林を形成していた落葉広葉樹林(ブナ林)は、仮に気温が4℃上昇すると約90%が消滅するという。「ブナ帯」から「シイ・カシ帯」(常緑広葉樹林)に変わることが予測されている。
さらに、水生生態系への影響や、降水量の変化による河川流量や湖沼水位の変動などがあり、生息域と生存期間が伸びるものもあれば、短くなるものもある。
こうした状況の中で、これまで異常気象と呼ばれてきたものが常態化する可能性もあるであろう。あるいは、日本農業でもこれまで思いもつかなかったような農作物生産が始まるかもしれない。その前に「熱中症」と「新型コロナウイルス感染症」を乗り越えることが必要ではあろうが...。
それにしても、19世紀の終わりから20世紀始めの頃、東京の夏の平均気温は25℃くらいであったようです。終戦の夏、1945(昭和20)年の8月15日は暑かったと言われています。気象庁の記録では、この年、8月の平均気温は26.7℃でしたが、8月15日は最高気温32.3℃、最低気温23.6度、平均26.2℃でした。1945年8月は2~13日まで連続して最高気温が30℃を超え、14日に28.4℃と少し暑さが和らぎ、15~21日まで再び30℃超えが続いています。8月の31日間のうち最高気温が30℃を超えた日が23日、この月の最高気温は21日に記録した34℃でした。多くの人は実際の暑さ以上に象徴的な暑さを感じたのかもしれません。
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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】
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