鈴木農政の大局観【森島 賢・正義派の農政論】2025年11月4日
●「おこめ券」は食糧安保の危機を救うか
 鈴木憲和氏が新しい農相になった。就任早々に、「おこめ券」を配布する、と言った。看板政策なのだろう。物価高騰対策の一部になるというのなら、分かぬでもない。だが、新農相が、新農政として大々的に発表する、という程のものだろうか。それが分からない。
 新農政の大局観が見えないのである。いま、農政が直面している大問題の解決のために、「おこめ券」をどのように位置づけるのか。それが分からない。
 いま、農政の大問題は、米価の高騰問題である。農政の無策がこのまま続けば、消費者のコメ離れが続く。だからといって、米価を下げれば離農が続く。それらの結果、主食のコメさえも外国に依存することになる。食糧安保の危機を、より深刻な状態に陥れることになる。
 新農相は、「おこめ券」がこの大問題を解決する救世主、とでも考えているのだろうか。
●言行不一致は政治不信の根源
 新農相は、「米価は市場に任せる」というし、「需要に応じた生産」ともいう。これは、国民の大多数である農業者や労働者の、政治に対する要求を無視して、政治は市場に介入しない、という宣言である。そして、これは市場原理主義のお題目を唱えることで、財界に忠誠を誓ったものではないか。
 政府が「おこめ券」を配れば、僅かばかりではあるが需要量が増える。これは、まぎれもなく政治の介入ではないのか。
 政治は市場に介入しない、と言いながら、実際には介入しているのである。言うことと行っていることが違う。つまり、言行不一致ではないのか。これは、政治家が最も戒むべきことで、政治不信の根源である。
●「おこめ券」は救恤策なのか
 新農相の「おこめ券」は、大局的にみて、何を目指しているのか。それを明確に示さねばならない。そうしないと、ただの「ばら撒き」になってしまう。せいぜい低所得者に対する救恤策になってしまう。
 救恤策を否定するわけでは決してない。だが、新農政の看板政策のように言うのは、新農政の貧困さを示すものである。
 そればかりではない。ここには、低所得者を見下した「上から目線」がある。新農相が大局を示さないのは、「由らしむべし、知らしむべからず」という、大昔の領主の気分でいるのではないか。
 それは、コメは輸入すればいい、という食糧安保を軽視する売国的な新農政の核心を隠蔽しているのではないか。そういう疑いがある。
●農政の大局は食糧安保なのだ
 ここで、改めて農政の大局を考えよう。
 いまの農政の大局は、食糧自給の回復にある。せめて主食であるコメの自給の回復にある。それがいま危機に直面している。このことが、米価高騰によって誰の目にも明らかになっている。
 これを打開するには、米価に政治が介入して、消費者に対しては、コメ離れを防げる程に安く、生産者に対しては、離農を防げる程にしなければならない。
 そのためには、政治が介入するしかないのだ。このことを、新農相は銘記し、全力を投入しなければならない。
 最後に、2つ言っておこう。
 1つは、コメの輸出は、これまでの失敗の事実を無視した幻想である。
 もう1つは、酪農のばあいである。大規模機械化農政によって多くの酪農家が離農を余儀なくされ、村を追われた。その結果、牛乳・乳製品の自給率は27%にまで下がってしまった。新農相は、この歴史の事実を知らぬのだろうか。コメも同じ道を進もうとしている。
(2025.11.04)
重要な記事
最新の記事
- 
            
              
      
    【特別座談会】米は食の源 基本は国消国産(2)2025年11月4日 - 
            
              
      
    【特別座談会】人を育てる食と農の力に自信を持とう(3)2025年11月4日 - 
            
              
      
    なぜ先物市場の価格は市中価格とリンクしないのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年11月4日 - 
            
              
      
    鳥インフルエンザ 国内2例目を北海道で確認2025年11月4日 - 
            
              
      
    鳥インフルエンザ 新潟で国内3例目2025年11月4日 - 
            
              
      
    規格外野菜で農家レストラン 高崎市の柴崎農園が最高賞 食品産業もったない大賞2025年11月4日 - 
            
              
      
    GREEN×EXPO2027 日本政府出展起工式を開催2025年11月4日 - 
            
              
      
    第1回「食と農をつなぐアワード」受賞者決定 農水省2025年11月4日 - 
            
              
      
    「ジャンボタニシ」の食害被害を防ぐ新技術開発 ドローンで被害を事前予測・スポット散布 農研機構2025年11月4日 - 
            
              
      
    11月の野菜生育状況と価格見通し ばれいしょ、たまねぎなど平年を上回る見込み 農水省2025年11月4日 - 
            
              
      
    11月11日は長野県きのこの日「秋の味覚。信州きのこフェア」4日から開催 JA全農2025年11月4日 - 
            
              
      
    「鹿児島黒牛」使用メニュー「牛かつふたば亭」で提供 JA全農2025年11月4日 - 
            
              
      
    自動車共済の仕組改訂など2026年1月実施 「日常生活事故弁護士費用保障特約」新設 JA共済連2025年11月4日 - 
            
              
      
    交通安全イベントで「見えチェック」体験ブース 反射材着用を呼びかけ JA共済連2025年11月4日 - 
            
              
      
    長野県「僕らはおいしい応援団」りんご「サンふじ」など送料負担なし JAタウン2025年11月4日 - 
            
              
      
    奈良県「JAならけん」約10点を送料負担なしで販売中 JAタウン2025年11月4日 - 
            
              
      
    藤原紀香「ゆるふわちゃんねる」淡路島で「灘の赤菊」生産者とゆる飲み JAタウン2025年11月4日 - 
            
              
      
    「ココ・カラ。和歌山マルシェ」約80点を送料負担なしで販売中 JAタウン2025年11月4日 - 
            
              
      
    第30回さなえ図画コン 最優秀賞は「田うえで出会えるお友だち」 井関農機2025年11月4日 - 
            
              
      
    秋篠宮皇嗣殿下がGREEN×EXPO 2027名誉総裁に就任 2027年国際園芸博覧会協会2025年11月4日 






















      
    
      
    
      
    

      
    
      
    
      
    
      
    
                                  
      
    
      
    
      
    
      
    
      
    
      
    
      
    
      
    
      
    
      
    
      
    
      
    
      
    
      
    
      
    
      
    
      
    
      
    





      
    
      
    
      
    
      
    
      
    
      
    
