内部統制システム 真に必要なJAにするには 前田憲成 JA兵庫六甲常勤監事【リレー談話室・JAの現場から】2021年7月15日
「内部統制システム基本方針」は、平成31(2019)年3月、全中が制定する模範定款例の一部変更により、順次、単位JAで定款上の理事会決議事項とされた。この主旨は、平成27年農協法改正によるJAへの会計監査人監査適用に伴い、当該監査が内部統制の有効性を判断して監査工数を決定することから、理事および理事会がJAの重要なリスクを早期に把握し対処すること、いわば「内部統制システムの見える化」が、これまでにも増して強く求められるようになったことによる。
単位JAには未だ馴染みの薄い「内部統制システム基本方針」だが、なぜ馴染みが薄いのか。なるほど、当該基本方針の構成要素を吟味すると、パーツ・パーツでは、JAの中に「仕組み」があり、運用され、それなりに堅確性をもって動いていることがわかる。
しかしながら、理事会で方針を決議し、その運用状況は毎年度理事会に報告されるとして、執行理事は、おおよそ理解はしていても、監督理事となると「これは何ぞや?」的な状況になることは否めない。
それはなぜか。従来から、単位JAは複雑極まりないリスクを取りながら利益を確保するための意思決定は必要ではなかった。中央会・連合会の指導のもと、経営管理と各種事業が展開され、一定の保護のもと意思決定をしてきたことは現実である。
厳しく言えば、集めた資金は自ら運用し自ら商品開発する必要もなく、さらには、自ら販路拡大も、仕入れ交渉をする必要もない。事業を運営する道具としての情報システムを自ら構築する必要はなく、職員教育すら必要はなかった。これが、JAグループの役割分担と一体運営の「強み」であったが、これからはどうであろうか。
近い将来を見据えると、地域のそして現場の課題をさまざまな担い手による小さなビジネスやJA事業によって解決していくことが求められ、これをJAの成長エンジンとすることができるかがカギとなる。
このような場合、「企画する、開発する、やり方を教える人材」と「実際にやってみる人材」は、より近くにある関係がよく、できれば「同一人材、もしくは一つのチーム」でこなせることが望ましい。地域の現場に人材が手厚いことが必須となるが、JAグループ人材の偏在状況をみると、現実の在りようは、適しているとは言い難い。
いまJAに求められていることは、人口減少社会の中で地域と地域農業(地域の産業)、さらには地域の活力を創り出すパワーに種を播き、育て実を結ぶ起点となるコンソーシアム(同じ目標に向かって組織された共同体のことであるが、地域JAが自ら企業を設立・分社化したりNPО法人などを設立、運営参加や融資によりグループ化する方法も考えられる)の中核となることであり、地域の活力資源としての農協である。
地域の活力資源としての農協となるためには、自立運営できる財務基盤が必要であり、既存事業(信用・共済・営農経済事業など)の事業競争力と収益力は一層高める必要がある。そして、これら活力を維持した上で、さらなるパフォーマンスを獲得することが望まれる。
さらなるパフォーマンスが何かは、それぞれ単位JAの戦略的意思決定の先にあり、リスクと自己責任を伴う。ここに、理事会(当然に業務執行理事や幹部職員の戦略的意思決定が含まれる。)の役割があるといえる。
これまで当たり前とされた、中央会・連合会やJA内の下位機関が作成した案を承認するスタイルから、自立的な戦略的意思決定が必要となった今、真の内部統制システムと精緻な運用、さらにはセルフチェックができ、自ら改善する力を備えることが必要条件となる。
リスクを取りながら将来の利益を獲得すること、さらにはリスクを最小化し、よい意味で利益を最大化すること、策定したロードマップのもと、監督理事と執行理事が役割を分担して、めざすべき高みに昇り続けるPDCAサイクルを回していく能動的役割を果たすこと。このステージに立った時、真の「内部統制システム基本方針」と、その運用が必要となるのではないか。
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