【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】経済制裁強化で日本自身が経済封鎖されるリスク2022年3月31日
ウクライナ紛争で、経済制裁強化の議論があるが、それが自身に対する実質的「経済封鎖」につながり、食料自給率、資源自給率、エネルギー自給率が極端に低い我が国の国民を窮地に追い込む危険も考慮する必要がある。
ウクライナ紛争は、食料、その生産資材、エネルギーを極度に海外依存している日本の危うさを改めて浮き彫りにしている。
しかし、現実には、その危機認識があるのかが問われることが2つある。
一つは、前から述べている、有事に国民に食料を供給できる国内農業生産力、生産資源の増強という根本的議論が国会などでも、ほとんど真剣に議論されていないことである。
むしろ、コメを作るな、牛乳を搾るな、さらには、飼料米も麦も大豆も野菜もそばも牧草も作るな、という方向性の政策が今出されている異常さである。
添付の「乳牛を殺せば5万円支給」というチラシは象徴的である。生産資源を増強して食料危機に備えるべき大局的見地を欠いて、生産基盤を弱体化する方向にお金を出すというのは理解できない。しかも、乳牛が減れば、もう一度生乳が搾れるようになるまでには種付けから出産まで2年以上かかる。こんどは足りなくなるのは目に見えている。本来、政府が牛乳・乳製品を調達して人道支援物資として活用するなどの需給の調整弁を果たすべきである。
もう一つは、経済制裁の強化や対象国の拡大の議論である。
食料自給率、エネルギー自給率の向上のための抜本的な議論が必要なのに、それが行われていない問題とともに、それが一夜ではできない中で、経済制裁の強化の議論が行われている危険性である。
食料自給率、資源自給率、エネルギー自給率が極端に低い中で、それを大きく依存している国々に経済制裁を強化したら、日本に食料や資源が入ってこなくなる。食料・資源・エネルギー自給率が相当に高い欧米諸国に追随した場合、それらの国と違って、日本は自身が経済封鎖されてしまうリスクが高い。日本自身がABCD包囲網で窮地に追い込まれたような事態を自ら作りだしてしまいかねない。
さらに、かりにも、紛争が拡大してしまうようなことにでもなれば、日本が戦場になる危険も考えなくてはならない。米国と日本の関係についても冷静に見ておく必要がある。以前、米国のCNNニュースでは北朝鮮の核ミサイルが米国西海岸のシアトルやサンフランシスコに届く水準になってきたことを報道し、だから韓国や日本に犠牲が出ても、今の段階で北朝鮮を叩くべきという議論が出ていた。つまり、米国は日本を守るために米軍基地を日本に置いているのではなく、米国本土を守るために置いているとさえ言えるかもしれない。
そうしたことも全て視野に入れて、日本が独立国として、自身の力で国と国民を守るための国家戦略を大局的・総合的に見極めて、対策を急ぐ必要があろう。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
米の価格 過去最高更新 60kg2万6485円 茨城産あきたこまち4万円超2025年3月19日
-
政府備蓄米 第2回入札3月26日から実施 農水省2025年3月19日
-
「国賊」と「下剋上」【小松泰信・地方の眼力】2025年3月19日
-
神奈川県横浜市の歴史的風致維持向上計画を認定 農水省など2025年3月19日
-
高山市、国見町、奈良市の歴史的風致維持向上計画(第2期、第3期)を認定 農水省など2025年3月19日
-
GI取得「高山きゅうり」など農畜産物・加工品7産品 農水省2025年3月19日
-
JAグループ宮城ICT搭載農機実演研修会を開催 JA全農みやぎ2025年3月19日
-
有機質肥料「エコべジP721」発売 JA全農岐阜がJAぎふ・片倉コープアグリと共同で商品化2025年3月19日
-
サキホコレで咲き誇れ!~「ハレの日」企画 イラストレーター「凪」さんデザイン「サキホコレ」米袋数量限定販売 JA全農あきた2025年3月19日
-
「新潟ハーフマラソン2025」開催!参加賞としてニッポンエールグミを提供 JA全農にいがた2025年3月19日
-
「にいがた酒の陣2025」で新潟米をPR JA全農にいがた2025年3月19日
-
栃木県産「とちあいか」果汁使用「ストロベリーホワイトモカ」新発売 JA全農2025年3月19日
-
廃棄野菜を動物園の餌に 農林中金の紹介で九州西濃運輸が参画 長崎バイオパークとJA島原雲仙2025年3月19日
-
農福連携がテーマの直売所「ベジポケット」4月1日にオープン JA横浜2025年3月19日
-
SEADS(シーズ)令和6年度修了式 JA鶴岡2025年3月19日
-
地元の麦でまえばしうどん 麦豚カレーはスパイシーで味わい深く JA前橋市2025年3月19日
-
管内の恵みをジャムに いちごとうめ JA水戸2025年3月19日
-
コシヒカリの魅力、磨き上げ 7つの基準に生産者の誇り JA福島さくら2025年3月19日
-
【次期酪肉近本文案】酪農拡大路線を転換 生乳目標732万トン据え置き2025年3月19日
-
【JA全農の若い力】飼料畜産中央研究所(2)飼料品質で経営支援 山口真弥さん2025年3月19日