農政のコペルニクス的転回を【森島 賢・正義派の農政論】2022年5月31日
表題は、やや大げさかもしれない。だが、いま必要なことは、コペルニクスが天動説から地動説へ転回したような、農政の大転回である。
天動説に固執していても、星の動きは追えるかもしれない。しかし、それには複雑な方程式を使った複雑な思考が必要になる。それは、星の動きの根本原理が分かっていないからである。
だが、地動説に転回すれば、星の動きの根本原理が分かって、それは、単純な方程式で表せる。それだけではない。万物の動きが、同じ単純な原理に従っていることが分かる。
農政も同じである。では、農政の根本原理は何か。それが分り、それに従えば、ごちゃごちゃした複雑な政策は不必要になる。
いま農政にとって必要なことは、そうしたコペルニクス的転回である。
上に示したものは、農政の憲法といわれる農基法の一部である。
ここには、農政の最重要課題である食糧安保についての、犯しがたい憲法的規定がある。
驚くべきことに、ここに「輸入」が入っている。これが、日本の食糧安保政策の混乱の根本原因である。
日本の農政を、コペルニクス的に回転すべき点は、ここにある。
◇
食糧安保とは、いうまでもなく国民への食糧供給が侵されようとする事態を想定し、平時からそれに備えておく、という政策である。
ここで想定している事態は、凶作などの自然災害ではない。それらの事態なら、安保などという大げさな概念は使わない。
食糧安保とは、食糧の安全保障というキナ臭い概念なのである。相手は自然ではなく外敵、つまり侵略軍を想定している。つまり、相手国が採る食糧の輸出禁止、という戦術に対する政策なのである。
それがなければ、国民が飢えに苦しむ、という一大事である。だから、政治の最重要課題である。
◇
上で示したように、農基法では、一応、「世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有している」ことは認めている。だが、その原因としての国際紛争は、想定していないのだろう。だから、紛争相手国の輸出禁止は、想定外なのだろう。
そんなことで、日本は国際社会で独立は保てないだろう、というのが米国の元大統領の感想であり、忠告であり、揶揄である。
その通りで、恥ずべきことある。いま世界は、ウクライナを舞台にして、第2次大戦以来の最大の危機にある。
日本は、いまこそ食糧安保政策を確立すべきである。そのために、農基法を根本からコペルニクス的に転回して、国内の食糧生産量を飛躍的に拡大すべきである。
(2022.05.31)
(前回 中露は旗幟を鮮明にせよ)
(前々回 「れいわ」の見識をロシア非難に見る)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日