ウクライナ紛争の即時終結を【森島 賢・正義派の農政論】2023年2月27日
ウクライナ紛争が始まってから1年を過ぎた。この1年間を振り返ってみよう。
各報道機関も同じような企画で報道したが、その大部分は、米欧側に立ったものである。これでは客観的な報道にならない。しかも、1年間に限定したものが多い。これでは紛争の深層は分からない。
ここでは、ロシア側の言い分を聞くことにしよう。そして、1年前よりも以前に溯って考えよう。ウクライナ紛争は、それよりも遥か以前から始まっていたのである。
以下では、ウクライナ紛争を東西冷戦の雪解け期の前まで遡り、NATO軍の創設期から考える。NATOは当初からロシアの加盟を拒否してきた。そして、東方への拡大を続け、ロシアに迫ってきた。
ウクライナ紛争の原因は、このNATOの東方拡大にある。世界規模での東西対立の雪は解けたが、欧州内部での東西対立の雪は解けなかった。
ロシアは東欧と西欧を一体化したい、と考えていた。だが、米国がしゃしゃり出て西欧側に立ち、ロシアと敵対し、いまや、その盟主になっている。
近年では、ロシアは、せめてNATOと非NATOの間に非武装地帯を作り、軍事対立を回避することを提案してきた。だが、米国を盟主とするNATOは拒否してきた。
以下では年表風にして、その経過を考える。そして、多くの報道が、無視しているロシアの主張を聞こう。
◇
1449.04 NATO創設(イギリス、フランス、アメリカなど12国)
1952―1990 NATOの東方拡大(ドイツ、スペインなど4国)
1989.11 ベルリンの壁 崩壊
1990.02 米国国務長官がソ連大統領に「NATOは1インチたりとも東方に拡大しない」と約束
1991.03 ワルシャワ条約機構 解散
1991.12 ソ連 崩壊
1999―2004 NATOの東方拡大(チェコ、ハンガリー、ポーランドなど10国)
2009―2020 NATOの東方拡大(アルバニア、クロアチアなど4国)
2022.09 ウクライナ東南部のルハンスク、ドネツク、ザポリッジャ、ヘルソンの4州がロシア領に編入
◇
以上で見てきたように、ウクライナ紛争の原因はNATOの東方拡大にある。
東方に拡大して、ロシアとの国境沿いに軍事施設を張り巡らし、銃口をロシアに向けている。
それは、米欧側からいうと、普遍的な価値である自由と民主主義の拡大だという。
だが、ロシア側からみると、そんな観念の問題ではない。それぞれの国には、それぞれの国の歴史に培われた自由と民主主義がある。自国の自由と民主主義だけが普遍的だ、というのは笑止千万である。
また、専制主義と民主主義との抗争だという。だが、そんな個人的な性質の問題ではない。
◇
そうではなくて、市場原理主義を世界に流布し、搾取を広めるか、それとも搾取を否定するか、という問題である。そして、格差社会の拡大を肯定するか、否定するか、という問題である。
この問題について、世界の人口の85%を占めていて、米欧から過酷な植民地的搾取を、長いあいだ受けてきた中国、印度をはじめ、アセアン諸国や中東、アフリカ、中南米の諸国は、肯定しない。そして、これまで長い間、過酷な搾取を続けてきて、しかし、世界人口の15%しか占めていない米欧側が唱える自由と民主主義の布教を、白い目で見ている。まして、武力による布教を支持していない。
◇
最後に強調しておこう。
ロシアは、米欧を西方へ押し返そうとは考えていない。せめて、NATOと非NATOとの間に、安全保障のための中立地帯を作りたい、と考えている。
米欧は、ロシアがウクライナの領土に侵攻しているという。だが、昨年ロシアの領土に編入された東南部の4州に侵攻しているのは、誰なのか。
世界の大多数の人たちが切望していることは、ウクライナ紛争の、正義に基づく一刻も早い和解である。そして、NATOと非NATOの、武力なしの切磋琢磨である。
いまの武力闘争を、ロシアが降伏するまで続けるといい、ウクライナの中立地帯化を拒否し、憎悪を煽り立てて、紛争の解決を遅らせているのは、いったい誰なのか。
(2023.02.27)
(前回 翼賛化する報道)
(前々回 中米逆転のXデーは2030年1月2日)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
https://www.jacom.or.jp/contact/
重要な記事
最新の記事
-
(394)Climate stripes(気候ストライプ)【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年7月26日
-
地域医療の実態 診療報酬に反映を JA全厚連が決議2024年7月26日
-
取扱高 過去最高の930億円 日本文化厚生連決算2024年7月26日
-
【人事異動】JA全厚生連 新理事長に歸山好尚氏(7月25日)2024年7月26日
-
【警報】果樹全般に果樹カメムシ類 県下全域で最大限の警戒を 鳥取県2024年7月26日
-
【注意報】イネに斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 山形県2024年7月26日
-
今が旬の「夏酒」日本の酒情報館で提案 日本酒造組合中央会2024年7月26日
-
ヤンマーマルシェ、タキイ種苗と食育企画「とりたて野菜の料理教室」開催 カゴメ2024年7月26日
-
「ごろん丸ごと国産みかんヨーグルト」再登場 全国のローソンで発売 北海道乳業2024年7月26日
-
物価高騰が実質消費を抑制 外食産業市場動向調査6月度2024年7月26日
-
農機具王「サマーセール」開催 8月1日から リンク2024年7月26日
-
能登工場で育った「奇跡のぶなしめじ」商品化 25日から数量限定で受注開始 ミスズライフ2024年7月26日
-
東京・茅場町の屋上菜園で「ハーブの日」を楽しむイベント開催 エスビー食品2024年7月26日
-
鳥インフル 米国オハイオ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2024年7月26日
-
大玉すいか販売大幅減 小玉「ピノ・ガール」は前年比146.8% 農業総研2024年7月26日
-
千葉県市原市 特産の梨 担い手確保・育成へ 全国から研修生募集2024年7月26日
-
水産・農畜産振興 自治体との共創事例紹介でウェビナー開催 フーディソン2024年7月26日
-
新規除草剤「ラピディシル」アルゼンチンで農薬登録を取得 住友化学2024年7月26日
-
自由研究に「物流・ITおしごと体験」8月は14回開催 パルシステム連合会2024年7月26日
-
高槻市特産「服部越瓜」の漬け込み作業が最盛期2024年7月26日