【浜矩子が斬る! 日本経済】オーバーツーリズム難民問題に日本はどう対応するのか2025年3月5日
気になる報道を目にした。都市部の宿泊施設で、外国人宿泊者数が5割前後を占めるようになっているのだという。観光庁の宿泊旅行統計によれば、2024年の延べ宿泊者数に占める外国人の比率が、東京都で51.5%、京都府で50.1%、大阪府で44.9%だった。都会のホテルや旅館に泊まるお客さんたちの2人に1人が、外国人なのである。全てのお客さんが外人さんの日がある。そんなホテルもある。
エコノミスト 浜矩子氏
外国人宿泊比率の上昇に大貢献を果たしているのが、いうまでもなく、観光客だ。観光目的で訪日するいわゆるインバウンドの人々だ。コロナ感染が一巡し始めるとともに、急増に向かった。円安で「安いニッポン」化が進行した。この機をつかんで来日したインバウンダーたちが、その体験や穴場情報をSNSで拡散する。かくして、日本に大インバウンド・ブームが押し寄せている。
結構なことだ。世界の多くの人々が日本を気に入り、好きになり、日本に訪れてくれるのは、嬉しいことだ。だが、つとに言われている通り、副作用というか、難題もある。近頃、すっかり馴染み深い言葉となった「オーバーツーリズム(過剰観光)」問題だ。観光客の殺到による社会秩序の崩落問題である。この悩みは、世界中の突出した観光大国が長らく抱え込み、対応に苦戦し、必死で知恵を絞って来たテーマだ。SNS時代となって、苦悩は一段と深まっている。来てほしい。でも、来て欲しくはない。贅沢な悩みだといえばいえるが、大いなる苦慮であることは間違いない。
日本の場合、さしあたり大きな問題となっているのが、出張難民問題だと報道されていた。筆者の目に止まった記事によれば、50%にいたる都会宿泊施設における外国人客占有率のおかげで、日本人ビジネスマンたちの宿泊難が発生しているのだという。出張目的にマッチしたロケーションにホテルを見つけることが出来ない。見つかっても、自社の出張規程に見合う料金では、とうてい、泊まることが出来ない。しょうがないから、カプセルホテルに泊まる。あるいは、訪問先からとてつもなく遠いところに泊まるしかない。なかなか悲惨な状況だ。
こうなってくると、「受験難民」問題も発生していそうな気がする。折しも、受験シーズンたけなわだったこの間、泊まるところを見つけられなかった受験生はいなかっただろうか。とても不便な宿泊先を我慢しなければいけない受験生たちはいなかっただろうか。法外な料金に甘んじるほかはなかった受験生とその保護者たちはいなかっただろうか。とても気になる。
筆者の目に止まった報道は、とても奇妙な締め括られ方をしていた。上記のような状況への対応策の決め手は、訪日外国人の「地方分散」なのだという。都会集中から地方分散へ。これを進めることで、オーバーツーリズムによる難民問題を解消しなければならない。そのように指摘されている。こういうことでいいのか? 政府の方針は、今後さらにインバウンド需要をどんどん増やして行くということだ。その中で、「難民問題」を地方に拡散して行く。これは、いかにも安直過ぎる発想ではないのか。
「地方創生2.0」を掲げる石破政権は、この辺のことをどう考えているのだろうか。オーバーツーリズムとそれがもたらす「難民問題」を地方にばらまいていくことが、本質的な問題解決になるのか。オーバーツーリズムの原因増殖を自らプロモーションしながら、そのつけを地方に押しつける。それが「地方創生2.0」の本質なのか。
ことほどさように、今の日本の政府あるいは政治の視野は、単眼的に過ぎる。「増やせインバウンド!」に単眼フォーカスしてしまうと、そのことがもたらすかもしれない問題には視線が及ばない。もう少し複眼・多眼的な広角レンズを身に着けることは出来ないものか。
重要な記事
最新の記事
-
【特殊報】チュウゴクアミガサハゴロモ 県内で初めて確認 栃木県2025年8月20日
-
【特殊報】チュウゴクアミガサハゴロモ 県内で初めて確認 香川県2025年8月20日
-
【浜矩子が斬る! 日本経済】暗号資産危機に日本はどう対応するつもりなのか 怪しげな仮想空間憂う2025年8月20日
-
サザエさん一家の「もりのわ」話 吹き出しコンテスト 受賞作品決定 農水省2025年8月20日
-
「8月29日は焼き肉の日」キャンペーン 50人に飛騨牛1万円相当が当たる 飛騨牛銘柄推進協議会2025年8月20日
-
水稲栽培のメタンガス排出量・生育状況を調査 JA全農ひろしまと広島大学の共同研究2025年8月20日
-
酪農感謝祭2025開催 JA北宗谷青年部が豊富町で酪農PRイベントを実施2025年8月20日
-
「生産者応援キャンペーン」第4弾は「和牛」がお得 JAタウン2025年8月20日
-
「令和7年8月6日からの低気圧と前線による大雨に伴う災害」農業経営収入保険の支払い期限を延長(続報)NOSAI全国連2025年8月20日
-
季刊『うかたま』創刊20周年記念キャンペーン開催 農分協2025年8月20日
-
サブサハラアフリカのリン欠乏水田でコメ増収を実現 国際農研2025年8月20日
-
TICAD9 農林水産省セミナー「国際共同研究が育む未来」開催 国際農研2025年8月20日
-
賃貸経営の悩みに応える「空室対策セミナー」初開催 ジェイエーアメニティーハウス2025年8月20日
-
鳥インフル ブラジルからの生きた家きん 輸入停止措置を解除 農水省2025年8月20日
-
持続可能な未来へ植物工場の可能性「第2回JPFA植物工場国際シンポジウム」開催2025年8月20日
-
KSAS利用者なら誰でも出品申請可能に クボタ産直サイト「クボタべっぴんふぁーむ」が販路拡大を支援2025年8月20日
-
暮らしに身近な商品を特別価格で「くらし応援」実施 コープデリ2025年8月20日
-
福島県産南郷トマト使用「モスの産直野菜フェスタ」福島県で開催 モスバーガー2025年8月20日
-
中高生向け「物流×IT」東京都の職業体験を開催 パルシステム2025年8月20日
-
秋季商品「とびきり大粒ヨーグルト ぶどう&アロエ」新発売 北海道乳業2025年8月20日