能登に一度は行きまっし 【小松泰信・地方の眼力】2025年9月17日
9月12日、金沢市と小松市に行く。タクシー乗務員や関係者の話によれば、「能登はほっとかれとるげんて」。
明るい話題もあるわいね
2024年の能登半島地震と奥能登豪雨で被災した石川県輪島市の「白米千枚田」で、15日にボランティアらが黄金色の稲穂を刈り取ったことを共同通信(9月15日配信)が伝えている。
全1004枚の田んぼのうち、今年、苗を植えることができたのは約250枚。それでも昨年の倍以上。
「少しずつ田んぼが復活していて、復興の励みになる」と笑顔で話したのは、維持管理する「白米千枚田愛耕会」のメンバー。
日本経済新聞(9月17日付・北陸版)は、のと鉄道(石川県穴水町)が、鉄道の優れた取り組みを表彰する国土交通省の「日本鉄道賞」の特別賞に選ばれたことを伝えている。能登半島地震の記憶をつなぐ観光列車の運行など、復興への取り組みが評価されてのもの。
同社は地域住民の移動手段を確保すべく震災後約3カ月で全線の運行を再開したほか、社員が語り部となり災害の記憶を語り継ぐ「震災語り部観光列車」を走らせ、能登観光の活性化に寄与してきた。また住民と協力し沿線の花植えを実施するなど、地域が一体となった取り組みも選定理由の一つになったとのこと。
「運行再開時に寄せられた『列車が走る光景がまた見られてよかった』という言葉を今も忘れることはない。これからも震災の記憶を伝え地域の暮らしを支える鉄道であり続けられるよう、精いっぱい努力していく」と語るのは、中田哲也のと鉄道社長。
心の「傷」もまだ癒えんげん
「災害対応に追われて無我夢中で過ごした日々が落ち着くと、心身に異状を感じ始める被災者が少なくないという」で始まるのは、金沢市に本社を置く北國新聞(9月9日付)の社説。
昨年の2度にわたる未曾有の災害から受けたストレスで、生活に支障を来している人たちも少なくない。
金沢大医薬保健研究域医学系の小野賢二郎教授が七尾市中島地区で実施した調査で、被災高齢者の3人に1人が震災前より物忘れが増え、自宅の被害が大きい人ほど、その割合が高い結果が出たことを紹介している。
このような状況下で、「能登の病院などで、心身の不調を訴える人たちの治療や相談に応じる窓口が相次いで開設されていることは、住民らにとって心強い支えになるだろう」と記している。
具体例のひとつが、今月に業務を開始した公立能登総合病院(七尾市)の「メンタルサポートセンター」。精神科医をはじめとする約20人体制で、震災からの再建過程で生じるうつや統合失調症、認知症などのほか、心に不安を持つ児童や、その保護者らもサポートするとのこと。
社説子は、「住民の心の回復が復興を加速させる力にもなるはずだ」として、「被災者が負った『傷』が癒えるのにも時間の経過が必要である。地元自治体や関係機関、NPOなどとも連携しながら息の長いサポートを続けてほしい」と訴える。
弁護士さんが常駐することになったがや
11月、輪島市に弁護士が常駐する公設の法律事務所「輪島ひまわり基金法律事務所」が開設されることになった。ちなみに、ひまわり基金法律事務所とは、弁護士過疎の問題を解消するために、日弁連・弁護士会・弁護士会連合会の三者の支援を受けて開設される法律事務所。
北國新聞(9月10日付)の社説は、「災害が起きれば普段は意識しない法律に直面し、それに救われることがあれば、法の壁に阻まれることもある。能登半島地震の被災地をみれば、災害時に最も必要になるのは法律の助けであることが分かる」とする。
「被災者支援」は、公費支出の融通がきかず、福祉分野まで手が回らないケースも。「公費解体」では相続未登記や所有者不明問題。「液状化被害」では動いた土地の境界をめぐって現実と法の隔たりが浮き彫りに。そして「なりわい再建」では、不動産や債務整理、資金調達等々。
災害に遭ってはじめて、さまざまな分野で法制度の課題に直面することを伝え、「常設型の身近な拠点は安心のよりどころになるだろう」として、当該事務所に「被災地の法的支援を息長く継続する足場としての役割を期待したい」とエールを送る。
『紡ぐ』にはびっくらしたわいね
ドキュメンタリー映画『能登デモクラシー』(五百旗頭幸男(いおきべゆきお)監督)の主人公とも言うべき滝井元之氏を、しんぶん赤旗日曜版(9月7日付)が取り上げた。
氏は、奥能登の玄関口と呼ばれる鳳珠(ほうす)郡穴水町で、手書きの新聞『紡ぐ』(A4版両面1枚)を20年4月より原則月2回のペースで発行している。地震発生で一時休止の後、昨年4月より再開。約500戸の仮設住宅一軒一軒を訪ね、『紡ぐ』を配り、被災者の声に耳を傾けているとのこと。
早速書状を送り、定期購読することに。
8月15日付には、参議院選挙の応援演説で「運のいいことに能登で地震があった」などとした鶴保庸介参院議員の問題発言を俎上にあげ、「自分が経験していなくても、今の世の中、情報はいっぱい手にすることができます。それに『想像力』を働かせればいいのです。そうすれば、被災者、被害者に近づくことができます。(中略)政治に関わる人ほど想像力を持つべきです」と頂門の一針。
7月1日付では、吉村光輝穴水町長が5月から6月にかけて、町内にあるすべての仮設住宅を回り、入居者の声を聴いていることを取り上げ、「町民・入居者に寄り添う姿勢はつらぬいてほしいですね」と記す。
9月1日付では、吉村氏が町長コラム(広報あなみず6月号)において、仮設居住者の「たまに子どもや孫が帰省しても、仮設住宅では一緒に泊まることすらできないのが非常に寂しい」「せめてもう一部屋あれば助かるのに」という切実な声を受け、「震災で家を失うだけでなく、親族と過ごす時間まで奪われ、ひいては故郷への愛着までもが失われるのであれば、一体何のための復興なのでしょうか。これからの復興においては、こうした被災者の声を国や県に伝え、住まいが単なる箱ではなく、家族の絆を育む場であり続けられるよう働きかけていく...」と記していることを紹介している。
滝井氏の『紡ぐ』によって、人々の関係がつなげられ、小さな声が集まり、行政そして地域が明らかに変わろうとしている。
「地方の眼力」なめんなよ
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