【今川直人・農協の核心】農協による日本型スマート農業の普及(2)2025年11月10日
長期にわたった農地集積
1970年の農地法改正による「借地を含む農地の流動化」への政策転換以来50年以上が経過した。これまで、農振法改正による農用地利用増進事業の創設(1975年)、この事業の拡充のための農用地利用増進法の制定(1980年)、同法の改正改題(認定農業者制度等を追加、基盤強化法1993年)、農地バンクの創設(2014年)と予算と労力を注ぎ経営の効率化と農地利用の維持に取り組み、一戸当たり経営面積は3倍超となった。
しかし、この農政の基本方向は転換を迫られている。受け手のない条件不利地域の荒廃が進み、食料の国内供給のもう一段の縮小が迫っている。
農水省の「基本計画のポイント」(2025年6月)は、「食料自給力の確保」の項で、農地と担い手対策として、①規模の大小や個人・法人などの形態にかかわらず担い手を育成・確保②農地・水を確保③担い手への農地集積・集約化を推進――を挙げている。農地集積率については、農地バンクが目標とした2023年度末8割を、基本計画の目標・KPI(2030年度)では現実味のある7割に引き下げている。
農地から技術へ
農政の基本課題が、選択的拡大、農地集積、経営所得安定対策を経て、スマート農業に至った。スマート農業推進への政府の強い意気込みが感じられる。改正基本法の施行(2024.6.5)の直後の6月14日にスマート農業技術活用促進法が成立している。また、耕種から畜産に至る広範な部門、ソフト(AI)・ハード(ロボット)両面の高度な技術を要する長期的な課題である。農水省が野口伸北大教授(ロボット農業工学)に委託し2024年9月に作成したスマート農業の展望に係る資料名は『2050年のスマート農業』(後述)である。
世界標準の日本型スマート操業
日本のこの農政の転換は、自体の変化(不十分さを含め)への現実的対応であると同時に世界の食料需給構造の変化への対応でもある。世界の人口が増加するに伴い食料の自立を求められているアジア、アフリカ、インド、中東諸国にとって、経営規模が近似する日本の農業技術は格好のモデルであする。
上記「2050年のスマート農業」に興味深い未来図がある。すなわち、最初の主題「リモート農業」(遠隔操作)の現場に7つの作業が描かれているが、山裾に「中山間農業のロボット化」、別の山に「傾斜地における果樹栽培」、手前の畑に「複数の小型電動ロボット協調作業」が例示されている。小型電動ロボットは異種作業協調でなく5台の同じ無人トラクターが同じ方向に進んでいる。面積は台数で調整できそうである。ドローンも山間を飛んでいる。『日本型スマート農業』は世界の多くの地域から、熱い視線が注がれている。
スマート農業は農地集積より農協事業との相性はよく、その推進・普及において農協の役割・農協への期待は大きい。農協による日本型スマート農業の普及が日本農業の課題-そのような時代にすでに突入している。農政局を中心とする地方行政もスマート農業の普及に全力を挙げている。
令和6年度白書は特集「スマート農業技術の課題と今後の展望」において「...人材の育成、サイバーセキュリティ対策を図る」としている。この分野でも、国の努力に期待したい。
重要な記事
最新の記事
-
【浜矩子が斬る! 日本経済】タコ市首相初の所信表明に慄く 国民より国家優先鮮明2025年11月10日 -
【Jミルク脱粉在庫対策】12月に「全国参加型基金」発動決定、国の支援も不可欠に2025年11月10日 -
米価水準 「下がる」見通し判断が大幅増2025年11月10日 -
既存農機に後付けで自動操舵 韓国GINTの次世代モデル「Next-G」日本投入へ2025年11月10日 -
鳥インフルエンザ 新潟県で国内4例目2025年11月10日 -
国産農畜産物で料理づくりに挑戦「全農親子料理教室」厚木市で開催 JA全農2025年11月10日 -
JA全農あおもり、外川農機と三者連携 AI自走ロボットの実証・販売強化へ 輝翠2025年11月10日 -
【今川直人・農協の核心】農協による日本型スマート農業の普及(2)2025年11月10日 -
本日10日は魚の日 鹿児島県産「うなぎ蒲焼」など130商品を特別価格で販売 JAタウン2025年11月10日 -
令和7年産新米PRを支援 販促用ポスターを無償提供 アサヒパック2025年11月10日 -
NICTと連携 農業特化型生成AIモデルの構築へ 農研機構2025年11月10日 -
JAアクセラレーター第7期採択企業9社が成果を発表 あぐラボ2025年11月10日 -
"食のチカラ"を体験するイベントに出展 農機体験に人気、女性農業者支援をアピール 井関農機2025年11月10日 -
「製麺所(製麺業)」倒産減少 コメ高騰で麺が人気 帝国データバンク2025年11月10日 -
米粉の消費拡大へ「地域の取り組みを知るゼミ」開設 米コ塾2025年11月10日 -
高輪ゲートウェイで初の3万人規模イベント「農業」をテーマに開催2025年11月10日 -
ALLYNAV自動操舵システム最新モデル「AF718」発表 マゼックス2025年11月10日 -
「豊橋アグリミートアップ」豊橋農家と首都圏スタートアップの交流イベント 東京で初開催2025年11月10日 -
北海道のジャガイモ産地を応援 JAいわみざわ、JAとうや湖の新じゃがポテトチップス発売 カルビー2025年11月10日 -
能登半島地震復興支援 珠洲市の焼酎メーカーの本格焼酎を限定販売 グリーンコープ共同体2025年11月10日


































