3月彼岸相場の本当のリスク ― 輸入動向よりも深刻な「需要の地殻変動」【花づくりの現場から 宇田明】第80回2026年3月5日
切り花が特異的によく売れる期間を「物日(ものび)」と呼ぶことは、本コラムでもたびたび紹介してきました。
物日は年に四回。3月の春彼岸、8月のお盆、9月の秋彼岸、そして12月の年末です。
これらの時期には市場入荷量が増え、単価も上昇します。
切り花農家の経営は、物日にいかに多くの花を咲かせ、出荷できるかにかかっているといえます。
ところが昨年3月の春彼岸は、相場が大きく崩れました。

東京都中央卸売市場の2025年3月の市況データでは、物日の相場をけん引する輪ギクの入荷量(国産+輸入)は前年比5%減少しました。
本来であれば品薄局面です。
それにもかかわらず、単価は76円から68円へと10%も下落しました。
市場経済では、価格は需要と供給で決まります。
彼岸のように需要が集中する時期であれば、なおさら価格は上昇するはずです。
供給が減っているのに価格が下がるという事態は、生産者や市場関係者に大きな衝撃を与えました。
背景にあったのは、輸入の想定外の増加です。
国産の入荷量が9%減少する一方で、輸入は26%も増加しました。
その結果、輸入単価は45円から36円へと21%下落。
輸入の大幅な下落により、国産単価も81円から75円へと押し下げられ、7%下落しました。
2000年以降、切り花の消費は減少が続いています。
そのなかで生産者は供給を抑制し、需給バランスを保つことで単価下落を食い止めてきました。
しかし、国内生産を減らしても輸入が増えれば需給は緩みます。
昨年の彼岸相場は、切り花市場において輸入が価格形成に強い影響力を持っていることを、改めて示しました。
では、今年の3月彼岸相場はどうなるでしょうか。
相場を左右する要因は三つあります。
第一に国内生産の動向。
第二に輸入をめぐる地政学的リスク。
そして第三に、より本質的な問題である需要構造の変化です。
国内生産の減少は続いています。
高齢者のリタイアだけでなく、現役世代の規模縮小や品目転換も進んでいます。
かつてのように国内供給だけで価格が決まる時代であれば、品薄・単価高の局面といえるでしょう。
しかし、すでに国産の価格形成力は低下し、輸入数量に左右される構造になっています。
これは昨年の相場が証明しています。
地政学的リスクも無視できません。
米国・イスラエルによるイラン攻撃は、原油価格や国際物流に影響を与えます。
空輸に依存するケニアやエチオピアなどアフリカからの輸入にはすでに影響がでているようです。
ただし、これらのアフリカからの輸入品は、主にバラなどの洋花であり、彼岸需要の中心であるキクへの直接的な影響は限定的とみられます。
また、今年は昨年のような需要を無視した中国からの過剰な輸入も考えにくいでしょう。
それ以上に深刻なのが、需要の地殻変動です。
「花より団子」で「花は買いたくても買えない」から、「花(正確には生花)はなくてもかまわない」へと消費者の意識が変わりつつあります。
正月にしめ縄や門松、花がなくてもかまわない。
彼岸に花がなくてもかまわない。
墓参りに行かなくてもかまわない。
さらには、墓そのものがなくてもかまわない。
こうした価値観が、静かに広がっています。
花は生活に潤いを与えるという花業界の思いが、消費者に通じなくなってきたことこそが最大のリスクです。
3月彼岸の相場を左右する本当の要因は、供給の多少ではありません。
花が必要とされる存在であり続けられるかどうかにあります。
相場の乱高下に一喜一憂するだけでなく、「花がなくてもかまわない社会」に進みつつある現状に冷静に向き合い、需要の地殻変動に直面している花屋への具体的な支援を検討すべきです。
生産振興より、花屋支援が必要です。
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