古米在庫 40万~50万tのおそれ-JAグループ見込み2021年7月2日
新型コロナ感染症拡大の影響で業務用需要が落ち込み、米の販売が厳しい。JA全農の見込みでは11月以降の古米在庫は40万tから50万tになる怖れも出てきた。販売に1年かかる量を抱えることになりかねない。

5月末現在、JA全農の契約実績は前年比97%。卸など取引先は先安観が払しょくできないなかで、必要量しか手当てしない、との意識がある。
販売実績は同92%。取引先は元年産米を優先消化したために2年産米の購入に消極的だ。ただ、元年産は5月に消化されたと見られ、5月の単月販売動向は前年比127%と復調の兆しもある。また、家庭用の高価格帯銘柄の一部には品薄感も出ている。
それでも全農が今後、販売しなければならない量は前年比122%で20万t多い112万tの見込みだ。
昨年11月から持ち越した元年産は22万tでそれを消化するのに6か月を要した。今後、販売不振で推移すれば2年産米の古米在庫は40万t~50万tと想定されるという。その量は「1年間かかっての販売は必至」(JA全農)の情勢だ。
産地は2年産米の契約と販売の目途が立たないまま、3年産米の収穫期に突入することに強い不安を感じている。
3年産米についてもこれまでと同じように事前契約に取り組んでいるが、契約数量は前年の45%と低調。事前契約が低調のまま出来秋を迎えることになれば販売環境は2年産以上に厳しくなる。
JA全中の試算ではコロナ禍の影響で需要が減少していることから、6月末の民間在庫量は228万tと見込んでいる。国は212万tとの推計でそれよりも厳しく見込む。
需要減による過剰を受けて米価は下落傾向が続いている。出来秋は60kg1万3867円だったが、5月の相対取引価格は1万3375円とじわじわ下がってきた。25年産と似た価格推移を示している。25年産は下落を続け、26年産の出来秋は▲19%、60kg2607円も暴落した。
JAグループは3年産で主食用米以外への作付け転換を進める取り組みを進め、各地で作付けが終わってからも追加的な深堀にも取り組んできた。
作付け転換は4月末で3.7万haまで積み上がっていると農水省は試算したが、必要とされる6.7万haにどこまで積みあがったかは、6月30日に締め切られた各産地から提出された営農計画書の集約で明らかになる。
ただ、3年産の取り組みと同時に、2年産米の過剰解消に国の緊急対策が必要だというのがJAグループの考え。理由は今回の需要減退が新型コロナ感染症の拡大が原因の「予期せぬ需要減」だからだ。
産地の倉庫には米が保管され、このままでは3年産米を入れる倉庫がないなど厳しい状況もある。
予期せぬ事態には政府が緊急対策を講じるべきだとして、与党からは政府による2年産米の買い上げをすべきだとの意見も強まっている。ただ、自民党の農林幹部は、当面は提出された営農計画書を集約し、3年産米の生産量見込みが示されてから対策を判断するとの意向だ。
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