米価「もう少し上げるべき」全米販 山﨑理事長2024年6月13日
全米販(全国米穀販売事業共済協同組合)の山﨑元裕理事長(ヤマタネ代表取締役社長)は6月12日に記者会見し、20年後を見据えた「米穀流通ビジョン2040」を発表するとともに、最近の米の需給状況などについて話した。そのなかで米の業者間取引価格(スポット価格)が上がっていることについて「今の米価は産地の方々に一切返っていない」と指摘する一方、生産資材費の高騰などを踏まえて「もう少し産地の米価は上げるべきだ」などと述べた。
全米販 山﨑元裕理事長
山﨑理事長は足元の米価高騰について「あくまで業者同士の取引のスポット価格の高騰。相対取引価格は変わっていない」と指摘し、農水省がコロナ前の在庫率とほぼ同水準で食料としての米は不足していないとの認識を示した。
ただ、卸業者が扱う「食品」としての米はタイトになっていると話す。その要因について23年産は昨夏の高温の影響で1等比率が少なかったことに加え、ふるい下米が少なかったことで「低価格帯の米が不足し価格が上がっていった」という。
農水省のまとめによると、22年産で51万tあったふるい下米(1.85mm以下)は23年産では32万tと07年産以降で最低水準となっている。
そのため一部の卸業者は飲食店などへの供給ができない状況もあり、山﨑理事長によると「町の食堂やラーメン屋さんは、スーパーに米を買いに行くようになった」ことで、店頭の家庭用精米商品にも一部で影響が出たと解説する。
こうした状況のなかでスポット価格が上がっているが、「相場そのものが気配に支配されている。自ら踊りタイトに拍車をかけている」と業界の近視眼的な対応を問題視する。
その一方でこうした米価の上昇は「産地の方々に一切返っていない」として「もう少し産地の米価は上げるべきだ」との考えを示した。現在は生産資材費などが高騰しているが「産地がそれを吸収している。だから稲作に魅力を感じなくなっている」と米価の引き上げが必要で「ごはん1杯30円、40円ではなく100円ぐらいにしたい」と話す。それによって物流コストもまかなえる好循環をめざすべきだと強調した。
同日公表した「米穀流通2040ビジョン」では、2040年には国内需要量375万tの見込みで、それに対する生産量は農業者の減少で363万tと国内需要量を国産だけで賄い切れない可能性があり、米穀流通は営業赤字に転落するとのシナリオを示す。一方で、多角的な米の需要創出や輸出、担い手の確保と生産効率化の支援、産地とユーザーを結ぶ卸業者の役割再定義と、卸業者間の協業の取り組みなどで2040年も722万tの需要と米穀市場規模5.97兆円となる「野心的なシナリオ」も掲げた。
山﨑理事長はこれまでの近視眼的な思考を問い直し、ビジョンに基づきより野心的なシナリオに近づけるよう、組合員が一丸となる必要性を強調した。
全米販は17年ぶりに理事長が交代し、山﨑氏は11日の総会で理事長に選任された。
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