24年産米の集荷 前年下回る見込み 関係者は調達に危機感 農水省意見交換2024年12月4日
生産者、集荷団体、卸売業者と実需者などが委員となっている農林水産省の米産業活性化のための意見交換会が12月3日に開かれ、24年産米をめぐる生産から流通までの情勢が議論された。
農水省で開かれた米産業活性化のための意見交換会(第4回)
24年産米の全国作況は101(10月25日現在)で前年産にくらべて18万tの増加が見込まれている。10月末の1等比率は77.1%で過去5年平均の75.1%を上回っている。ただ、各地で豪雨による倒伏などで減収となっていることや、西日本では高温被害なども出ている。全中の杉山隆之農政部長は「作況より実際は少ないのではないかという声が産地から出ている」と報告した。
生産者委員のうち北海道の藤城正興委員(輝楽里常務)は「昨年より穫れているのが肌感覚。酷暑でなかったことが影響したのでは」と話したが、宮城県の高橋文彦委員(ライスサービスたかはし代表取締役)は「宮城は107となっているが、100前後が現場感覚」と話したほか、新潟県の山嵜哲志委員(ファームフレッシュヤマザキ取締役)は「今年は全量1等だが、倒伏がひどく収量が減少。10a30kgから120kg減」と収穫減が現状だと話した。
また、滋賀県の福原悠平委員(フクハラファーム代表取締役)は「イネカメムシがかなり多く2等に格下げも。大豆でも猛威を振るっている」という。
一方、集荷団体からは競争激化で集荷に苦戦している実態が報告された。JA全農米穀部の藤田修一次長は「前年を下回る見通し」と述べ、JAと連携した追加の集荷積上げを行っていると話した。全集連(全国主食集荷協同組合連合会)の山口賢二米穀販売部長は「集荷量は10月末で(前年同期比)94%、11月末は90%まで落ちるのでは」との見方を示した。
生産者委員からは「米がない、と直接買いに来る人が増え電話もかなりある」(藤城委員)との声もあり「系統に集まらない要因を分析すべき」との指摘もあった。ホクレンの駒形剛米穀部長は、生産者に支払う概算金は「価格の一部であり、販売額が見通せるようになったら精算する仕組み。流通価格と異なり魅力が感じられないのではないか」として今後、検証するとともに、JAグループの共同計算方式が理解されるような取り組みも必要だと話した。
卸売業者からは系統集荷の減少が事業に影響を与えている実態が報告された。木徳神糧の今野稔米穀事業本部副本部長は「主要産地からの(販売数量)提示がいまだになく実需者への提示ができていない」と取引先に対して要望どおり販売することが難しくなっているという。
輸入米のSBS(売買同時入札)にも参加しているが「マークアップ上限に張り付くなど、外国産も厳しい」として、国産米は「圧倒的に量が不足している」と話した。
伊藤忠商事の佐藤博崇執行役員は「系統集荷の減少で当初の調達数量の見込みが立っていない」と話し、千田みずほの妹尾次郎開発専任部長は「どれだけ調達できるか、この先落ち着く気配も感じられない」という。
卸売業者からは販売できる米が手元で不足しているため「先々まで販売していくためセールを控える」との話もあった。
原料米不足の深刻な実態を訴えたのはコンビニエンスストアへおにぎりなどを納入しているわらべや日洋食品の吉田宏執行役員購買部長。「業務用米がまったくない異常事態。計画より27%も不足。事業開始から60年経つが初めての経験」と危機感を募らせた。
吉田氏は今年8月に米不足が明らかになった時点で備蓄米を放出すべきだったと指摘し「それをやらなかったことで今の価格と品薄感につながった」として備蓄米の活用を求めるとともに、25年産米の作付け増を求めた。
25年産への対応について主食用米の生産を増やすという生産者委員がいる一方、「本当に作っていいのかと(価格下落を)危惧している農家もいる」との声もあった。全農の藤田次長は主食用米だけでなく主食用以外の水田活用米穀も含めて需要に応じた生産が必要だと強調した。主食用米の価格だけでなく面積当たりで収入をどう確保するかの観点も引き続き重要になる。
今回の会合では、米の調達に苦戦する一部の卸売業者から「産地とつながっていることが強みだと思っていたが...」との声が漏れたほか、一方では実需者が産地との契約を結ぶ考えを示した。
原料米の調達に危機感を持つ吉田氏は「再生産価格を考慮した複数年の事前契約を考えている」と話し、「一過性の価格高騰に振り回されることなく、安定した契約を」と求めた。
農水省は年明けの1月に食糧部会を開催し、2025年から26年にかけての需給見通しについて改めて諮問する。
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