「令和の米騒動」招いた農政に批判 「需要減ありき」の政策もう限界 飼料用米振興協会の意見交換2024年12月9日
「年10万トンの需要減」を所与の前提とし、ひたすら生産を抑えて価格維持を図る政策はもう限界ではないか。飼料用米振興協会の意見交換会では、「令和の米騒動」を招いたコメ政策に批判が相次ぎ、政策転換を求める多様な意見が出た。
発端は茨城での集荷競争
足元の米価高騰について、コメ専門ライターの熊野孝文さんは「しょっぱなは茨城県だった。大手ディスカウントショップがコメの集荷部隊を作りチェーン店が対抗、あっという間に2万6000円になった。庭先価格が上がったのは、確実に儲かると、コメのプレーヤーがすごく増えたから。24年産米は、餌米は40%減ったのに主食用米の検査量は増えていない。農水省が言うほど獲れていないのではないか」と指摘した。
青森県の養豚農家・木村洋文さんは「産地にはいろいろな業者も来ていて、検査を通していない米が相当あるのではないか。農家が抱えている米もあると思う。畑を田に変える動きもあり、2~3年すると落ち着くのではないか」との見方を示した。
政府備蓄米放出はあるか
会に参加した首都圏の集荷業者が「このままいくとコメが足りないという意見が圧倒的だ」とし「市場には介入しないという農水省の建前もあるが、政府備蓄米放出は本当にやるのか」と質問すると、熊野さんは「私が決めるわけではないが、備蓄米を放出せざるを得ない状況になっていると思う」と答えた。
「高騰で利益」しっぺ返しも
米価高騰が消費減退を招くリスクについて、生活クラブ連合会の村上彰一会長は「生産者が持続可能な生産をすることが一番大切だと思う。その価格がどこなのか、きちんと知りたい。主食なんで、市場の需給だけで決まるべきでなく、妥当な水準はあると思う。あまり極端に上がって儲かったというような感覚でいるなら、どこかで痛い目に遭うんじゃないか」と語った。
需給変化に弱すぎるコメ政策
それを受けてNHKの佐藤庸介解説委員は、「村上さんが言ったように、再生産費が賄え消費も冷やさないマイルドな上がり方が良かったが、こんな急激に上げたら消費者は反応する。需要が年10万トン減ることを所与の条件に、需給をタイト目にして米価を維持するために仕組んでいるので、需要がちょっと予想より上振れしたくらいでこんなこと(コメ不足)になってしまう。これでは需要が冷え、生産者がしっぺ返しを食う」と説明した。
米価は市場任せがいいか
村上さんは「生産現場を消費者が知れば状況は変わるし、価格の問題についても理解が深まっていく。農家が経営を続けられるには、小売価格にコストを転嫁するだけでなく一定の(所得)補償が必要なんじゃないか」と提言すると、熊野さんは「供給量を絞って価格を上げる政策は早急に止め、先物市場活用も含めコメの値段は市場に任せる。暴落したら、生産者に直接補償すればいい」と応えた。
生産性向上、需要増にも伸びしろ
熊野さんが「ドローン活用など生産性向上も、需要拡大もまだまだ余地がある」と語ると、佐藤さんは「私も、とにかく需要を伸ばさないとダメなんじゃないかと思う。再生産は可能な水準を担保しながら今の価格は下げないと需要が減ってしまう。反収増やコスト削減もタブーなく注力すべき。十勝の畑作も取材したが、農家所得向上をもっとシンプルに考えていた。コメ政策も発想の切り替えがいるのでは」と問いかけた。
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