米麦農家が第三者承継 成功の背景に「働き方改革」 JAくまがやなど支援2025年1月28日
埼玉県熊谷市の米麦農家、井田文雄さん(77)が、さいたま市在住の高橋秀征さん(53)に事業承継した。熊谷市は二期作が盛んで、行政やJAくまがやが第三者承継を支援している。井田さんが承継に成功した陰には、そうした支援に加え、「働き方改革」の努力があった。
井田文雄さん(右)と高橋秀征さん=埼玉県熊谷市
大企業は出ていき、田んぼは残った
井田さんは、利根川にほど近い熊谷市の農家に生まれた井田さんは、当然のように農家を継ぎ、米と、裏作に麦を作ってきた。
「以前は1俵2万5000円くらいして、田んぼを1町もやってれば家族で生活できた」と井田さんは、「良かった時代」を思い出す。その後、食管制度が崩れ、米価は大きく下がった。
熊谷市周辺にも、大企業の工場が次々に来た。だが景気の荒波にもまれて多くの企業がつぶれ、広大な工場が更地になったのも見てきた。「その点、米と麦は世界中の人が食べる。産業としてなくなることはない」。井田さんは、そう確信しながら、米麦作りを続けてきた。
圃場は麦の芽が出たところだった
圃場で元IT技術者と出会う
一方、高橋さんは都内のIT系企業でシステムエンジニア(SE)をしてきた。会社が買収された後、いろいろあって退職を決断。義父が熊谷で農家をしていたこともあり、手伝いながら思った。「生涯できる仕事もいいかな」
そんなある日、義父の手伝いをしていた圃場で、井田さんからたまたま声をかけられた。井田さんはその頃、農家をどう事業承継するか、悩んでいた。子どもたちは東京に出ていたので、県の農林振興センターに相談。第三者承継という方法があると聞いてほどなく、高橋さんと出会った。
「休みなくて大変では」との不安払拭
高橋さんの妻は実家が農家なこともあり、「やってみれば」と言ってくれたが、息子は「農家は大変じゃないの? 休みがなくて」と心配した。だが、IT技術者だった高橋さんは、井田さんの働き方、仕事の進め方に感心していた。「仕事は平日の午前9時から午後5時まで、土日は休み。休めるように段取りを組むんです」。いわば、農業版働き方改革である。
井田さんはなぜ、そうした働き方にしてきたのか。「自分だけでずっとできるなら我流でもいいけど、できなきゃ時代から外れてしまう」と考えてのことだった。そのため、「井田さんは、スケジュールを立て工程を管理し進捗をチェックして、必要なら改善する。PDCAサイクルを回しながら新しいことにも挑戦するのです」(高橋さん)
圃場に近い公園・めぬまアグリパークにはJAくまがやの直売所「ふれあいセンター妻沼店」がある
JAの青年組織に加入し情報交換
高橋さんは、2023年1月、井田さんから農地、機械を含め事業を承継。2年間かけて農業の実際を学んだ。今、水稲7.5ヘクタール、小麦10ヘクタールに加え、新たに秋冬ネギを20アール栽培している。
24年6月には、JAの青年農業者組織「JAくまがやアグリユース」に加入した。高橋さんは「若い農業者との情報交換は助かってます。去年も、カメムシ対策を相談し、ドローンで防除ができました」と話す。
米農家は平均年齢が高く、今後大きく減ると見込まれるが、第三者承継の事例は少ない。資材はすべて農協で買い、米はすべて農協に出荷し、地域農業のこれからを考えてきた井田さんに、高橋さんにバトンタッチできたことについて聞くと、「それは、本当に良かったよ!」と笑顔で答えた。
JAくまがや企画管理部・井上惠右さんの話
全国的に耕作放棄地が増え、管内でも「自分がやめたら、このあたりで田んぼをやる人がいなくなってしまう」という声を聞く。そういう中で、第三者承継は、譲り渡す側も譲り受ける側も覚悟がいって大変だが、信頼関係ができれば重要な選択肢になると思う。熊谷市では、2019年から4件の第三者承継が行われ、うち3件が主穀分野だ。今後も広がってほしい。
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