米:CE品質事故防止強化月間
【現地ルポ】3CEで品種構成を変えて荷受け 岱明地区CE JAたまな(熊本県)2018年9月7日
・米のカントリーエレベーター品質事故防止強化月間(2018年8月1日~10月31日)
・取扱高小さくとも米は地域農業の基本
米穀事業の集荷・販売の拠点施設であるカントリーエレベーター(CE)では、出来秋の収穫期に入り、1年で最も多忙な時期を迎えている。全国の大規模乾燥調製貯蔵施設の管理・運営改善に取り組む全国農協カントリーエレベーター協議会、JA全農、公益財団法人農業倉庫基金の3団体は、毎年8月1日から10月31日までの3カ月間を「米のカントリーエレベーター品質事故防止強化月間」に定め、事故防止の徹底を呼び掛けている。
今年の強化月間が始まった8月末に、熊本県のJAたまなの岱明地区CEを訪ね、CEの運営、事故防止の取り組みなどを取材した。
(写真)岱明地区カントリーエレベータ
◆3CEに品種を区分し効率的な運営
JAたまなは、熊本県の北西部に位置し、福岡県に隣接する2市8町を管内とする広域JAだ。
地形的には有明海に面する平坦な水田地帯と、金峰山、小岱山の山麓地域および山地丘陵の中間地帯に大別される。
玉名地域の中央には、阿蘇外輪山を水源とする菊池川が南北に流れ、この流域の平坦な水田地帯では水稲を中心に、トマト、イチゴなどの施設園芸が盛んだ。
また、山麓地帯や中間地帯ではミカン・ナシなどの果樹、野菜、米、畜産などを組み合わせた複合経営が行われているなど、豊かな農業地帯だといえる。
JAたまなには米麦乾燥調製施設として3つのCEと4つのライスセンター(RC)がある。
CEは今回取材した岱明CEと玉名第一CE、横島CEがあり、車で10分~15分で行ける比較的近距離にあり、大きな利点となっている。
うるち米(普通期)については3CEとも取り扱うのだが、うるち米(早期米)については、横島CEのみが荷受けする。また、飼料用米や米粉用米の新規需要米については、米粉用のミズホチカラは岱明CEが、飼料用米は玉名第一CEが、中食・外食から要望が強い多収米のやまだわらは岱明CEで荷受けする。さらに麦についても、小麦のシロガネコムギは岱明CEで、チクゴイズミは横島CEで、ミナミノカオリは玉名第一CEで荷受する。「先ほど触れたように3CEが比較的近距離にあるので、生産者にとっても大きな負担にならないこともあり」3CEで品種構成を変えて荷受けし効率化・事故防止に繋げていることが大きな特徴だといえる。
いずれの施設もJA直営であることが、こうした仕組みを可能にしたのではないだろうか。
◆稼働率100%超
実際の荷受けがどのように行われているのか岱明CEでみてみると次のようになっている(29年産)。
▽5月下旬から6月初め:シロガネコムギ
▽10月3日~18日:うるち米・森のくまさん
▽10月22日~10月26日:多収米・やまだわら
▽11月3日~6日:米粉用ミズホチカラ(指定地区)
▽11月7日~11日:ミズホチカラ(全地域)
1日の荷受量は、乾燥機が60t×4機の240tなので、240t以内としている。緊急事態などで、これを超える場合は玉名第一CEが4系列6000tの能力を持っているので、一時的に玉名第一CEに助けてもらうこともあるという。
岱明CEは平成8年から稼働しているが、麦の荷受が増えた平成12年以降稼働率は80%を超え、平成19年以降は連続して100%を超える稼働率となっており収支を確保できている。
(写真)収穫1か月前の森のくまさん
◆適期刈り取りの実施など事故防止策を徹底
品質事故防止のためにはどのような取り組みをしているのか。
▽刈り取り:雨・露等で湿っている時の刈り取りはしない。刈り取り後はむれないように生籾は2時間以内にCEに搬入する。
▽荷受け時間は午前10時から午後7時まで。夕方刈り取り翌朝早朝持ち込みは絶対しない。
そして品質保持のためにとして
▽荷受時に著しい低品位の籾(発酵・異種穀粒混入・カメムシやいもち病被害籾)は荷受けを断ることがあるので、事前にサンプルを持ってくる。
▽異種穀粒混入防止のため、コンバインおよびコンバイン袋の清掃を十分励行するよう指導している。特に麦に使用した袋は入念な清掃を。
▽倒伏した籾や品質の悪い籾は刈り取り搬入を別にする。
▽コンバインの脱穀回転に注意し、脱ぷ米が出ないように注意する。刈り取り適期は籾全体の85%が黄化した時。刈り遅れは乳白米・茶米・胴割れ米が発生し品質が低下し等級がさがる。
を徹底している。
◆「本所とは壁がない」風通しの良さ
(写真)岱明CEを支えている方方々(右から小山次長、竹内係長、左から2人目が稲生岱明CE長)
CEの現場はかなり厳しい環境にあるが、そのことがJAのトップに十分理解されず問題となることがあるが、JAたまなでは「現場と本所との間に壁がありません」と稲生寿彦岱明CE長ははっきりと言い切った。
それは一つには、小山雅治指導販売部次長兼農産課長、指導販売部農産課の竹内健太郎係長(上級オペレーター)がCEの経験者で、現場の諸問題を「すぐわかってくれて相談しやすい」ということがある。
毎年発生するメンテナンス費用についても、トップに理解があり予算化も円滑である。突発的なトラブルが発生しないよう、予防的なメンテナンスが実現している。
そしてJAたまなの販売事業取扱高は200億円ありそのうち園芸が150億円で、米麦など農産品は22億円とほぼ1割に過ぎない。
しかし、多くの生産者が水田農業に携わっていること。そして何よりも「地域農業の基本は米にある」ことを歴代のトップが認識し、農協運営をしてきたことが大きいといえる。「忙しい時期は常勤役員が現場に来て激励していくこと」はもはや当たり前のことだという。また、竹内係長も2週間に1回は現場に行き、さまざまなコミュニケーションをとっているという。
また年3回は「共乾施設連絡協議会」を開き、3CEの生産者代表に集まってもらい、角田豊優指導販売部長も出席して意思疎通を図っている。
3つのCEの品種構成を変えることで、荷受時期の平準化とコンタミ防止。品質事故防止対策の徹底。そして現場と本所に「壁がない」風通しの良さ。取扱高が少なくとも米が農業の基本であるという基本的な認識など岱明CEから学ぶことは大変に多かったといえる。
(関連記事)
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