【Jミルク生乳需給見通し】微増も酷暑で先行き不透明 飲用値上げ、脱粉期末在庫8万トン強2025年8月4日
Jミルクは8月1日、夏場の精度を高めた最新の2025年度生乳需給見通しを示した。生乳生産は前回5月見通しから微増と上方修正した。北海道の増産意欲高まりの一方で、酷暑に伴う乳牛ダメージ、8月からの牛乳小売価格値上げによる消費減、脱脂粉乳在庫積み増しなど、生乳需給全体は一段と先行き不透明となっている。(農政ジャーナリスト・伊本克宜)
最需要期の生乳安定供給を強調するJミルク・渡辺裕一郎専務(8月1日、生乳需給見通しの会見で)
■増産と需要減の「ジレンマ」
今回の需給見通しは、前回5月発表時に比べ25年度生乳生産を1万8000トン上方修正した。前回比で微増となったものの、25年度の生乳生産量は前年度比0・3%減の2年ぶりの「減産」に変更はない。
季節ごとに過不足を振り返す生乳需給は、特に夏場7~10月の需要期への安定供給と、年末年始、年度末の学校給食牛乳停止時の余乳処理への対応がカギを握る。今年は、最需要期の安定供給と冬場の不需要期の備えの双方とも難しい対応が迫られる。
一言でいえば、増産と需要減の「ジレンマ」。今回の最新の生乳需要見通しでこの傾向が一段と明らかになった。特に北海道の増産は、飲用、加工向け双方の生産者乳価引き上げに伴う生産意欲の高まりが大きい。即効性のある増産を目指し、配合飼料をやや多めに与えている。確保した粗飼料が良質なことも個体乳量のアップにつながっている。
半面、生産者乳価引き上げは小売価格引き上げと連動する。酪農乳業界の当面の最大関心事は、8月からの牛乳小売価格改定の動きだ。末端小売価格で牛乳1パック(1リットル容器)10円から20円の値上げが広がる見通しで、需要減は避けられそうにない。
■北海道は連続増産、全体シェア58%強に
2025年度の全国生産量は前年度比0・3%減の735万3000トン。酪農家の減少に歯止めがかからず2年ぶりの減産だが、前回5月見通しから1万8000トン上方修正した。北海道の増産が大きい。
25年度の北海道の生産は同0・5%増の428万4000トンで2年連続の増産を見込む。一方で後継者難などから離農加速が進む都府県は同1・3%減の306万8000トンと4年連続の減産を予測する。その結果、生乳全体に占める北海道シェアは58・3%とさらに高まっている。
〇2025年度生乳生産見通し
・北海道 4284(100・5%)
・都府県 3068( 98・7%)
・全国 7353( 99・7%)
※単位千トン、カッコ内は前年度対比
■最需要期9月道外移出6万5000トン
生乳需給ひっ迫のピークは、夏場で搾乳量が減る半面、小中学校の夏季休暇が終わり学乳再開で牛乳需要が高まる9月だ。Jミルク需給見通しでは、都府県の不足分を北海道から運ぶ道外移出量は9月に6万5000トン(前年度対比103%)を見込む。
同日の会見でJミルクは「9月の道外移出は相当な量となる。「ホクレンをはじめ関係者が調整しながらなんとか計画に沿った安定供給を図りたい」とした。懸念材料は二つ。ホルスタイン種は暑さに弱い。7,8月の都府県とさほど変わらない北海道の猛暑に伴う乳牛へのダメージがどのくらいになるか。言い換えれば、効果的な暑熱対策がどれだけ徹底できるのか。もう一つは、異常気象による台風の余波だ。7月も台風の影響で生乳大量輸送を担うホクレンの輸送船「ほくれん丸」が3日間欠航し、都府県の生乳供給が問題となった。9月に北海道にも影響を及ぼす大型台風の襲来がどうなるかも道外移出に支障をきたしかねない。
■需給の「重し」脱粉在庫の削減
用途別の生乳需給を大きく左右するのは、柱の飲用牛乳の動向に加え、乳製品の脱粉とバターの需要の行方だ。飲用牛乳需要が伸び悩めば、それだけ保存の効く乳製品向け加工に回る。そこで問題になるのが累増する脱粉在庫処理だ。
今回の需給見通しでは、25年度末の脱粉在庫を8万1300トン(製品換算)、7・6カ月分と、前年度の5万2000トン、4・1カ月分(在庫対策を除くと4・9カ月分)に比べると大きく積み上がる。
25年秋の補正予算で国の在庫対策対応が必要だが、現時点で8万トンを超す脱粉在庫は過剰の深刻さを裏付ける。酪農家の持続的な生乳生産を「担保」するためにも、脱粉を多く使用するヨーグルトの実効ある需要喚起などが求められている。
■新酪肉近初年度、問われる「需要拡大」
2025年度は、新たな食料・農業・農村基本計画と並行して、今後5年間を展望した酪農肉用牛生産近代化基本方針(新酪肉近)の初年度という重要な年だ。
Jミルクは、需給動向を踏まえた当面の課題で、新酪肉近が人口減少下の国産牛乳乳製品の「需要拡大」を重要課題に挙げたことを踏まえ、需要拡大に業界全体で着実に取り組んでいくことを強調した。さらに指定団体受託酪農家の1万戸割れなどを踏まえ生産基盤の維持・強化への積極的な取り組み強化も挙げた。
「需要拡大」では、牛乳価格改定への対応、脱脂粉乳の在庫削減が大きな課題となる。需要低迷は、放置すれば生乳生産の縮小を余儀なくされ、それが一層の生産基盤弱体化を招くという「負のスパイラル」に陥りかねない。
■全国「需給」、農水省主導で
さらに、もう一つの新酪肉近初年度の重要課題も、農水省が主導して着実に実践していくことが欠かせない。業界全体の生乳需給の安定化だ。
改正畜安法による生乳流通自由化は指定団体を経由しない非系統の割合を増やし全体需給に支障をきたしている。今年度、ようやく具体的な是正の動きが出た。これまでの生乳出荷時のルール違反の規律強化に加え、「需給」を補助事業の要件にした。こうした中で、系統、非系統問わず全国参加型の需給調整参加が徐々に進んできた。これも新酪肉近が掲げた主要な柱の一つだ。
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