黒毛和牛でホルスタイン卵子を形成 世界初の成功-JA全農2016年5月10日
JA全農(ET研究所、飼料畜産中央研究所、家畜衛生研究所の研究グループ)は、このほど黒毛和牛の卵巣内に異品種であるホルスタインの卵子を作らせることに成功した。4月27日に英国のオンライン科学雑誌「SCIENTIFIC REPORTS」に研究成果が掲載された。
 近年の研究では、特定の遺伝子を欠損させた実験動物(ノックアウト・マウス)を活用した実験から畜産技術にも貢献するさまざまな知見が得られている。
 近年の研究では、特定の遺伝子を欠損させた実験動物(ノックアウト・マウス)を活用した実験から畜産技術にも貢献するさまざまな知見が得られている。
 たとえば、マウスではNANOS3という遺伝子をノックアウトさせると精巣や卵巣内に精子と卵子が形成されないことが報告されている。
 さらにNANOS3遺伝子をノックアウトした動物の受精卵に、別の個体の受精卵やiPS細胞などを注入して、キメラ(注)受精卵を作った場合、生まれた個体の精子や卵子はすべて後から注入された受精卵やiPS細胞の遺伝情報を受け継ぐことが分かってきた。
 こうした一連の知見を活用すれば増殖させたい動物を効率よく生産できる可能性があることから、今回、JA全農は基礎技術を構築するため、黒毛和牛の卵巣内に異品種であるホルスタインの卵子形成が可能かどうかを試みた。
 研究は、まず雌黒毛和牛の体細胞からNANOS3遺伝子をノックアウトした細胞をつくり、それを雌黒毛和牛の受精卵の核と置換させる核移植を行った(=体細胞クローンの作製)。発生を始めたその受精卵を仮腹牛に移植し、胎仔の卵巣を観察した結果、黒毛和牛の卵子は完全に欠損することが明らかとなったという。(写真aとb)
 次にこの結果をふまえ、今度は黒毛和牛のNANOS3遺伝子をノックアウトした体細胞クローン受精卵に、ホルスタインの受精卵割球を7~10個注入してキメラ受精卵を作製した。その結果、胎仔の卵巣を観察すると卵子形成が確認できた。NANOS3遺伝子をノックアウトした受精卵からは卵子が形成されないことから、この卵子は注入したホルスタイン受精卵割球由来と考えられることから、これらの実験で黒毛和牛の卵巣内にホルスタイン種の牛の卵子を作り出すことに成功したことが確認された。(写真右)
 JA全農家畜衛生研究所によると、遺伝能力の高い和牛精子や卵子、その受精卵の量産が比較的容易にできる可能性があるという。落合成年所長は、細胞が混ざり合うキメラ受精卵の技術を活用して牛の近縁であるヤギや羊など小動物を活用して有用な精子や卵子を量産することも可能ではないかと話す。
 また、畜産への貢献だけでなく、繁殖能力が低く量産できないために割高な医療研究用ミニブタも、この技術の応用で量産の可能性が高まり、創薬や再生医療の分野にも役立つほか、絶滅の危機に瀕している動物の増殖にも貢献できるのではないかという。
(注)キメラ=同じ動物個体に別の遺伝情報を持つ2種類以上の細胞が混在している状態。
(写真)
○写真a(対照牛)NANOS3遺伝子をKOしていない牛の卵巣には卵子がみられる(矢印)
○写真b(NANOS3-ko)NANOS3遺伝子KO牛の卵巣では卵子が消失している
○写真右 NANOS3遺伝子KO牛の卵巣内で形成されたホルスタイン種の卵子(矢印)
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