合併し組合員と会話保つ:JAふくしま未来代表理事組合長 菅野孝志氏2017年2月12日
どうするこの国のかたち【農協協会新年の集い新春講演会】
1月27日に都内で開いた農協協会新年の集いの特別講演会で、経済評論家の内橋克人氏、東京大学教授の鈴木宣弘氏、JAふくしま未来代表理事組合長 の菅野孝志氏にご講演いただきました。出席できなかったという方のために講演内容を掲載いたします(他2名の講演内容は文末にリンク)。
JAふくしま未来は昨年3月1日発足しました。県内17JAを4JAにする計画でしたが、最終的には5JAになりました。JAふくしま未来はその一つで、県内人口の31%、約60万人を占め、組合員は正・准合わせて約9万5000人です。販売取扱額は、震災前の平成22年が約368億円でしたが震災でがくんと落ち、合併前の昨年27年が273億円。今年度は276億円の目標に対して279億円前後までいく見込みです。
東日本大震災の被災地では、まったく新しい農業を模索しないと震災前の水準には戻れないと認識しています。
津波の影響が大きかった南相馬市では、約6100ha水田のうち3110haを1ha区画にする基盤整備が進んでいます。100%国庫補助の事業ですが、それでも実際に農業をやろうという人がそういません。そうなると農協が母体となって生産組織や農業法人を育てて営農しなければならないという、農協にとって極めて重要な判断が迫られます。
相馬市は民間企業などに参入を働きかけていますが、本当にできるのか。水利や農道の維持・管理はどうするのでしょうか。5、6年は使っても、その後は放棄して帰ってしまうということが、見え隠れしています。
われわれが、本来的にやるべきことは、生産基盤をどう維持・発展させるかであり、そのための仕組みを農家や地域の人と連携しながら作り上げることです。
これまで、販売事業は数の力だと思っていました。しかし実際は違うということが原発事故の後で分かりました。東京市場で平成27年の桃の価格を比べると、全てが東京市場ではありませんが、福島県産約5000tの入荷に対して価格は1kg平均430円、長野県産が同じく800tで515円でした。品質に差があるわけではありません。
この85円の差は何でしょうか。これは完全に流通問題だと認識しています。原発事故の賠償の仕組みの中で、誰かが儲けているのだということです。
われわれはJA大会の決議で農業の再生・拡大を模索しています。改正農協法の主旨にも合致しますが、われわれにとって、それだけが目的ではありません。JA綱領の最後にある「協同の理念を学び実践を通じて、共に生きがいを追求しよう」です。JAに係わることで生きがいのある人生を送ることができたと感じることができるかどうかです。それが協同組合のありかたではないでしょうか。それをサポートするのが本来の協同組合ではないでしょうか。
生産の拡大はその過程であって。JAでは仮称「2・5・10運動」を展開しています。販売単価を2%上げ、生産コストを5%下げ、所得を10%上げようということです。具体的にどうするか、いま議論を進めているところです。
合併してJAと組合員の間が遠くなっているのは間違いありません。そこで、役職員はなるべく外に出で、組合員と直接話す機会をつくるようにしています。それを通じて合併前の4つのJAの意識を一つにして、一体的な運営ができるようめざしています。かつての合併のような不良債権の問題はなく、それができるレベルができています。
組合員から出た意見は必ず形にする。このことが大事です。組合員がいいと言ったらそれを取り上げ、提案した人が主役だと感じられるような仕組みをつくる。職員はそのためのオルガナイザーです。そうすることで、おれたちの農協だと思うようになります。
いま重要なことは、農協の役職員が運動を起こすことだと思います。2012年の国際協同組合年、14年の国際家族農業年、15年の国際土壌年、そして昨年のユネスコの無形文化遺産登録と、協同組合に追い風がありましたが、われわれは、これを疎かにしていたのではないかと、反省するところがあります。改めてその時期、時期に合わせて運動を展開する必要があると思っています。
トランプ政権の誕生でTPPが2国間協定に移ると、先行き不透明ですが、いまよりも厳しくなることが予想されます。
いのちと暮らしを守る運動体としての協同組合セクターの全国的な連携が必要です。
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