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2017.02.12 
「農協改革」は農協潰し:東京大学教授 鈴木宣弘氏一覧へ

どうするこの国のかたち【農協協会新年の集い 新春講演会】

 1月27日に都内で開いた農協協会新年の集いの特別講演会で、経済評論家の内橋克人氏、東京大学教授の鈴木宣弘氏、JAふくしま未来代表理事組合長 の菅野孝志氏にご講演いただきました。出席できなかったという方のために講演内容を掲載いたします(他2名の講演内容は文末にリンク)。

東京大学教授  鈴木宣弘氏 TPPはアメリカ国民が「ダメ」を突きつけました。われわれの主張が正しかったということを改めて確認し、(束の間の)勝利宣言をすべきです。「実体のない恐怖を振りまく"TPPおばけ"」といって反対派を批判してきた人は謝罪すべきです。「TPPはすばらしい、強行採決しろ」と言った人もそうです。
 ただTPPは破棄されても、これからが問題です。トランプ氏は市民の味方などではなく、国内産業を守るといっても、それは「国産国消」ではありません。アメリカの商品をもっと買え、米国内の雇用を増やすため、日本はもっと自動車や農産物を買えということです。その一方で、農産物の輸出補助金を1兆円も使い、それはTPPやFTAでお咎めなしです。自由貿易とは「アメリカが自由に儲けられる貿易」に過ぎません。アメリカが従来から持つ傲慢さが最大限に強化されるのがトランプ政権です。
 国民に守ると約束した非関税措置のほとんどはアメリカの言いなりに崩されて、TPPが発効したも同然です。軽自動車の税金も「自主的に」(=アメリカの言う通りに)上げました。しかし農産物関税は協定をつくらないと発効しません。トランプ政権のTPP離脱に対して一番騒いだのはアメリカの農業団体です。7年後の再交渉の約束も含めて、アメリカ農業にとってこんなおいしい約束はないから、ぜひ、2国間協定で「TPPプラス」でもっと譲歩させようと意気込んでいます。
 トランプ氏の2国間交渉への意欲に呼応して、あっと言う間に前言を翻して、実質的なTPP日米合意の再交渉を容認していく日本政府の姿は国民にも異様に映ります。
 さらに、日本政府は今後アジアに軸足を置いたRCEP(東アジア地域包括的経済連携)もTPP水準をベースにすると言い始めています。日本の経済界は、以前のアジア諸国との2国間FTAでも所管官庁を通じて相手国を罵倒し、技術協力の要請は拒否して、徹底した投資・サービスの自由化を要求しました。その身勝手さはアメリカのTPPでの日本やアジアへの態度とそっくりでした。日本の経済界は、TPPで従来以上の投資・サービスの自由化が実現できたので、それをRCEPにも継承してアジアからの収奪をもくろんでいるのです。
 かたや、農産物はアジア諸国との交渉で「自由化と協力のバランス」を提唱して、コメの自由化はできなくても協同組合間の協力で相手国を支援するなどの形で円満な合意を実現してきました。「共生」をキーワードに、特に食料・農業については零細な分散錯圃の水田に象徴されるアジア型農業が共存できる、柔軟で互恵的な経済連携協定の実現に向けて、日本とアジア諸国は協調すべきときです。
 日欧FTAでも農産物で日本が譲れば自動車で相手国が譲るという「バーター論」があります。有利な条件を自動車で勝ち取るために農産物を犠牲にしろという主張ですが、これは間違いです。仮に日本のチーズをゼロ関税にしたからといって、EUの自動車業界がゼロ関税を受け入れますか? 自動車と農産物交渉は別物なのです。こんなバーター論に乗ってはいけません。
 郵政はアメリカの金融保険業界が郵貯マネー350兆円の運用資金が欲しいといって、「対等な競争条件」の名目で「自主的に」解体され、全国の郵便局でアメリカのA社の保険販売が始まったのです。次の標的は明確です。
 農協解体は郵政解体と同じで、JAマネーの150兆円の運用資金がほしいのです。そういったアメリカの要求の執行機関である規制改革推進会議を通じて「対日要望書」などに沿って、順次やらされているのです。全農の株式会社化も、全農グレインの買収を狙うアメリカの穀物メジャーの意向に沿って、日米合同委員会で出てきたものです。
 政府の「農協改革」の目的は農業所得の向上などではなく、(1)JAマネーの引き剥がし、(2)共販を崩して買い叩き、(3)共同購入を崩して資材を吊り上げ、(4)農家が潰れたら農業参入と、その通りに推進会議は提言しています。
 農家の声に真摯に向き合って改善すべきは徹底的に改善すべきですが、それは先方にとってはどうでもいいことで、農業所得向上に向けた優れた自己改革案を出せば乗り切れるというのは見当違いです。真っ向から対峙しないかぎり間違いなく農協は潰されるでしょう。「営業の自由」(憲法22条と29条)を侵害する行為に従う必要はありません。提訴すべきです。個々の農家の力を結集する共同販売・購入に対する「独禁法の適用除外」という世界共通の大原則を、「見せしめ」による公正取引委員会の査察のような形でなし崩しにしていく行為は世界に恥ずべきことで、これも提訴すべきです。
 今のまま、だまされても、だまされても何かを期待し続けることで未来があるのでしょうか。「今だけ、金だけ、自分だけ」の攻撃を跳ね返し、自分達の力で地域を守る覚悟が協同組合に不可欠です。ひるんではいけません。信念を曲げなければTPPも止めることができました。正義は勝つ(こともある)のです。

(他の講演会内容)
トランプの影にウォール街:経済評論家 内橋克人氏
合併し組合員と会話保つ:JAふくしま未来代表理事組合長 菅野孝志氏

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