直売所を起点に「JA」を発信-組織基盤強化フォーラム2018年8月22日
組合員のメンバーシップ強化を通じて事業利用の促進にとどまらず、組合員がJA運営に参加・参画する協同組合の姿を実現することをめざし、JA全中はJA組織基盤強化フォーラム(東日本会場)を8月21日、横浜市で開いた。JAからは直売所を起点とした組合員、地域住民との関係強化や、モニター制度による組合員の意思反映などの取り組みが報告された。
◆改革への評価 「見える化」を
フォーラムではJA全中の比嘉政浩専務(=写真)が課題提起した。
政府は来年5月までを「農協改革集中推進期間」とし規制改革推進会議がフォローアップしていくこととしている。また、改正農協法では、JA自己改革の実施状況をふまえ、平成33年3月末までに准組合員の事業利用規制のあり方を検討することになっている。
こうした状況をふまえ自己改革に取り組むとともに、その「実績」と「評価」、その後の自己改革の「計画」を示すことがJAに求められており、このうちとくに「評価=組合員からの声」を集約して政府の農協改革に対抗していく必要があると比嘉専務は強調する。
その評価を「見える化」するため、全組合員を対象とする「JAの自己改革に関する組合員調査」の実施を8月の全中理事会で決定した。
全組合員調査の目的は▽組合員の意思を的確に把握して政府・与党に政策提案を行うことだが、それにとどまらずこの調査を通じて▽正・准組合員との一層の関係強化につなげることも目的とし、調査に先立って組合員とJA役職員が「対話運動」を展開することにしている。全中によると、これまでに445JAで実施された試行的な全組合員調査結果を分析したところ、JAの総合事業の必要性や准組合員の利用規制反対との回答はに対しては「JA役職員との直接対話」がもっとも有効だとの結果が出ている。
また、准組合員のJA祭りへの参加や直売所利用などもJAへの理解を深め、メンバーシップ強化につながることも示された。
◆各JAで准組合員の位置づけを
同時にJAとして准組合員の位置づけを明確にすることも必要になっている。農水省も「各農協が准組合員の位置づけを明らかにし、准組合員の意見や参画、意思反映をどうしていくのか自分たちで考えて社会に提案すべき」(本紙・【インタビュー・大澤誠農林水産省経営局長】「自ら変わる」発想で農協の新時代を)との考えを示していることを比嘉専務は強調した。
准組合員は員外利用者とは異なり、地域農業や地域経済の発展をともに支えるパートナーとして位置づける必要がある。
そのため全中は准組合員のメンバーシップ強化のため、JAごとに准組合員をいくつかのタイプに区分し対応することを提起した。准組合員のなかには農家出身や集落の基礎組織に参加している人もいてJAへの意思反映の機会があるが、金融・共済事業など事業利用で准組合員に加入した人たちにもJAや地域農業を理解してもらう必要があり、「個別モニター制度」などでコミュニケーションを深めていく必要がある。そうした取り組みを通じて、"組合のことは組合員が決める"かたちを実現していく必要がある。
全中は同フォーラムで准組合員の意思反映・運営参画促進要領も参加者に示した。
◆金融商品と直売所利用
事例報告で群馬県のJA邑楽館林の阿部裕幸常務(=写真)は、直売所を起点とした活動などを報告した。同JAの直売所ぽんぽこは約11億円の販売額があり、8年前の2倍以上に伸びている。利用者数は年間54万人。
JAは定期積金50万円ごとに500円相当の「JAオリジナル商品券」のプレゼントを企画。年2回キャンペーンを実施している。29年夏キャンペーンは3万券を発行し、1万8000券が直売所で利用されているという。
「農産物直売所はJAが地域とつながる拠点」との位置づけで、金融商品と直売所を結びつけ、地域住民がJAと地域農業を知るしかけとした。
また、広報活動にも力を入れ、特産品であるキュウリを2500本使って「胡瓜」の文字を描く様子をテレビCMとポスターにするなど特徴あるPR活動も行っている。地元のケーブルテレビでは1日5回の広報番組を放送している。阿部常務は「准組合員にも『伝わる』広報活動が大事だ」と強調した。
◆モニター制度で声を聴く
三重県のJAいがふるさとの北川俊一組合長(=写真)は直売所「ひぞっこ」の利用者を対象にモニター制度を導入した取り組みを報告した。
直売所の利用者からモニターを応募、アンケートへの回答や会合に出席してもらうなどの参加を通じて直売所の改善点など明らかにすることが狙い。
応募者は総合ポイント利用者として、常連利用者から応募のあった300人から、属性を絞って100人にモニターを依頼した。正・准組合員、員外利用者、さらに男女の比率、年齢層などを考えた。属性をはっきりさせることで、JAへの意見の背景を把握することができるのがモニター制度の利点だ。支店運営委員など、基礎組織の代表者とはまた異なる意見を聴くことができる。
JAでは直売所に意見箱も置いており、そこには「農産物価格が高い」との声も投げ込まれていたが、モニターからは逆に「安い」との声が4割を占めた。また、出荷する生産者との話が楽しい、生産者POPをもっと増やしては、SNSを活用し情報発信してはどうかなどの意見も出たという。
このモニター制度を活用しJAではJAと農業者について理解を深めてもらうよう、JA施設の見学や生産者との交流会などで、とくに准組合員を農の応援団として位置づけていこうとしている。
(写真)組織基盤強化フォーラム・小林助教の総括
総括をした広島大学の小林元・助教は組合員の多様性を認識し、それぞれへのアプローチをJAが考える必要性と、JAへの参加・参画を促すためには、金融商品と直売所を結びつけてJAにひきつけるといった「横串をさす」発想が求められていると提起した。
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