販売品取扱高 2年連続で拡大-JA自己改革2018年8月8日
JA全中は8月8日、JA自己改革のうち、営農経済事業を中心とした取り組み状況を取りまとめ、公表した。全JAの共通目標とした「JAの販売品取扱高の拡大」では2年連続で拡大した。今後のさらなるJA改革の取り組みに向け、成果を上げているJAの実践の横展開や連合会による支援を展開していく。
◆農業生産の拡大も課題
JAグループは平成26年11月に「農業者の所得増大」、「農業生産の拡大」、「地域の活性化」を基本目標とする自己改革に取り組むことを決めた。27年10月の第27回JA全国大会では農業者の所得増大に直結する「各JAの販売品取扱高の拡大」をJAグループの共通目標として設定した。
その具体策は地域特性や品目によって異なるため、JAは現場の実態に即して創意工夫し実践を続けている。
JA全中の取りまとめによるとJAによる販売品取扱高は26年度が4兆3300億円、27年度が4兆5300億円、28年度が4兆6900億円と増えており、26年度比で8.4%伸びた。
この間、政府統計の生産額ベース食料自給率も2ポイントづつ上がり、68%となったほか、生産農業所得(売上げ総額が経費を引いた付加価値額)も2年連続で10%台の伸びを示している。
JA全中ではこうした結果もふまえると、産地ではより収益の上がる品目へ農家組合員を誘導するなどのJA自己改革の実践によって、全体として販売品取扱高の拡大を実現したとみる。
しかし、この間にはカロリーベースの食料自給率は1ポイント下がって38%と平成の大凶作だった平成5年の37%に次ぐ低さとなった。そのため販売額の増加といっても、生産基盤の弱体化による生産量の減少で価格が高騰したという影響も考えられ、地域の「農業生産の拡大」という目標も引き続き追求が求められる。
◆直接販売、企業連携に力
JAの具体的な営農経済事業の取り組みは、「ファーマーズマーケット等を通じた消費者への直接販売」、「業務用・加工用実需者との契約販売」、「実需者ニーズに基づく生産提案」、「新しい品種・技術等の導入支援」など、生産者手取りを確保するための具体策について、すでに実施しているJAと今後実施する予定のJAを合わせると8割を超える。
具体例として、三重県のJA鈴鹿では、需要減少と価格低迷で厳しい経営環境が続く茶や植木生産者を支援するため、白ネギ生産を複合品目として推進している事例がある。産地として実需者ニーズに応えるため生産部会を新たに結成し29年度には38名に増大した。生産面積も12ha拡大。販売高は27年度の4700万円が28年度には5900万円となるなど着実に伸びている。
北海道のJA道央は同JA管内産の小麦をさらに広く流通させるため、国産小麦の食パン使用を進めていた敷島製パン(株)との共同プロジェクトを28年に立ち上げた。同社のブランド「Pasco」が北海道産小麦を使用しているほか、地域の農業者が運営する「のっぽろ野菜直売所」が出店する「ゆめちからテラス」を今年5月に開設した。
◆トータルコスト低減へ
生産コストの低減への取り組みでは「予約購買による価格メリット設定」、「低コスト技術、省力技術の普及」、「自己取り・直送による物流メリット」など、多数の施策ですでに実施しているJAと今後実施するJAを合わせると8割を超える。
単に生産資材価格の引き下げだけでなく、トータルコストの低減にも取り組んでいる。滋賀県のJA東びわこでは水稲用の肥料について、土壌分析による成分の見直しや、生産者の作業のしやすさと効率的な保管を考慮した規格の見直し(20kg袋→15kg袋)、物流閑散期に大量輸送することなどを通じ、10aあたりのコストを約3割削減できた。
省力技術の普及では、兵庫県のJA兵庫みらいはドローンを導入し、農薬散布作業の省力化を図ろうとオペレーター技能認定証を取得した。同JAは子会社と連携し黒大豆ほ場での試験散布の実施や、今後は稲の病害虫の防除、除草剤の散布にも活用する予定としている。
◆出向く体制82%で整備
大規模化や法人化が進むなど、農業構造の変化が進む生産現場では、JAも担い手の個別ニーズに対応する体制の強化を課題としてきた。
TACなど担い手に出向く体制は約82%のJAが整備している。昨年度比5%の増加で今後の整備予定も含めると90%を超える。専任部署を設置したJAは29年度で294JA(45.1%)となっている。
個別対応の実践としては、静岡県のJAとぴあ浜松の営農アドバイザーの例がある。29名の営農アドバイザーが計145軒の農家に対して「3年で農業所得30%アップ」を目標に実需者ニーズをふまえた生産拡大や品質向上についての「栽培提案書」を作成した。
甘いミカンを求めるバイヤーの要望を受けて管内農家に高糖度ミカンの栽培を提案し、複数回の糖酸度試験で生育管理を徹底し、ブランド化につなげた取り組みなど個々の農家に応じた対応を行っている。きめ細かい対応で対象者の55%にあたる80戸の農家が農業所得30%アップを達成した。
JAグループではGAPの外部認証取得や、野菜の機械化体系整備、労働力確保策、牛繁殖の高度化、農業経営管理支援事業の高度化など「今後めざすJA自己改革の取り組み実践事例」を提示し、さらに自己改革を促進する。
(関連記事)
・今年度の全農自己改革の重点的課題(18.07.30)
・【ヒント&ピント】伝えよう!JAの自己改革2(18.07.19)
・【小松泰信・地方の眼力】創造的自己改革への決断(18.06.13)
・「食料安保」を明確に JAグループ政策確立大会(18.06.08)
・全農の自己改革 初年度計画ほぼ達成(18.03.28)
・【インタビュー・比嘉政浩JA全中専務理事に聞く】自己改革から新たな農協運動へ(前編)(18.05.21)
重要な記事
最新の記事
-
【特殊報】ブロッコリーの黒すす症状 県内で初めて確認 愛知県2025年7月3日
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 富山県2025年7月3日
-
【注意報】花き類、野菜類、ダイズにオオタバコガ 県内全域で多発のおそれ 愛知県2025年7月3日
-
【注意報】ネギ、その他野菜・花き類にシロイチモジヨトウ 県下全域で多発のおそれ 富山県2025年7月3日
-
【注意報】りんご、なしに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 宮城県2025年7月3日
-
【注意報】ねぎにシロイチモジヨトウ 県内全域で多発のおそれ 宮城県2025年7月3日
-
【注意報】セイヨウナシ褐色斑点病 県内全域で多発のおそれ 新潟県2025年7月3日
-
【注意報】いね 斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 山形県2025年7月3日
-
米生産に危機感 高温耐性品種など急務 日本作物学会が緊急声2025年7月3日
-
【人事異動】農水省(7月4日付)2025年7月3日
-
花産業の苦境の一因は生け花人口の減少【花づくりの現場から 宇田明】第63回2025年7月3日
-
飼料用米 多収日本一コンテストの募集開始2025年7月3日
-
米の民間在庫量 148万t 備蓄米放出で前年比プラスに 農水省2025年7月3日
-
【スマート農業の風】(16)温暖化対応判断の一助にも2025年7月3日
-
令和7年度「家畜衛生ポスターデザインコンテスト」募集開始 農水省2025年7月3日
-
農業遺産の魅力発信「高校生とつながる!つなげる!ジーニアス農業遺産ふーどコンテスト」開催 農水省2025年7月3日
-
トロロイモ、ヤマノイモ・ナガイモ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第347回2025年7月3日
-
【JA人事】JA町田市(東京都)吉川英明組合長を再任(6月26日)2025年7月3日
-
【JA人事】JAふくおか嘉穂(福岡県)笹尾宏俊組合長を再任(6月26日)2025年7月3日
-
国産農畜産物で料理作り「全農親子料理教室」横浜で開催 JA全農2025年7月3日