JAの活動:【第29回JA全国大会特集】コロナ禍を乗り越えて築こう人にやさしい協同社会
【緊急座談会:10年後にめざす姿を探って】JAあづみ千國茂組合長×JAぎふ岩佐哲司組合長×JAはだの宮永均組合長(3)今こそJAの役割発揮2021年11月5日
第29回JA全国大会では、新たに次の10年後に向けた「めざす姿」を提起するとともに、重点的に取り組むべき課題を示した。いま経済・社会の大きな変動のもと、農業とJAが進むべき方向について模索が続いている。現場で悪戦苦闘している3JAのトップが、JAのあり方と自らの思いを語り合った。
(司会は文芸アナリストの大金義昭氏)

新たな協同 基盤づくり
大金 協同組合への期待は、地域で高まるばかりですよ。
岩佐 コロナ禍に見舞われ、改めて協同組合について深く考える機会になまりました。ともすれば、決まった仕事をこなせばいいと考えている職員もいます。これまでは自分の頭で考えなくとも、上司や上部機関の指導通りにやればよかったのです。なぜ上げるのかを考えずに、打ち上げ花火を上げていたようなものです。
もう一度、JAは何を目的とする組織なのか。「活力ある農業と豊かな地域社会の実現」とは何か。3カ年計画の策定過程で、改めて組合員と共に考えていきたい。
中期計画はこれまで3カ年計画しかなかったのですが、コロナ禍で、3年間では十分なことができないと分かりました。そこで3倍の9年を目標にしたいと理事会に提案すると、若い理事から「活力ある農業とは何か」と問われました。そこから出発し、10年後に目ざすべき姿を描きながら、大いに議論をしています。
この座談会では、格差問題をどう解決するか、JAあづみの助け合い活動「あんしん」や「新興塾」、JAはだのの「特技者登録制度」など数多くを学ばせていただきました。さっそくやってみたい。
大金 「協同の共感」が広がり、異種協同組合も含めて共に手を携え、「協同の原理」を改めてゼロ・ベースから積み上げていくような「思想と行動」が大事だということですかね。
宮永 私たちの使命は農業を振興しつつ、地域社会の豊かな発展に貢献することです。「夢のある農業と、次世代へつなぐ豊かな社会を地域で築く」の理念のもとに、「消費者・次世代・アジア」との「共生」を長年にわたって実践してきました。しかし、コロナ禍でそれが大きな壁にぶつかりました。それをどう巻き返し、巻き直すかが課題です。
この2年間、職員・役員・組合員が一丸となって、「新たな協同」の確立に努めてきました。良いものは伸ばす。スクラップしないでいいものは維持する。そして駄目なものはスクラップするだけでなく、新たなものをつくる。そのための旗振りをしたい。もう一つ重要なことは「協同組合間の連携」です。インフォーマルなネットワークづくりができればと思っています。
大金 つまり、この時代にふさわしい協同のあり方ですね。
宮永 かつてのJAは、地域の農家や農業のための職業的な協同組織でした。しかし今は「新たな協同」のあり方を模索するときです。協同組合がつくる地域組織がしっかりすれば、やれることは数多くあります。先人はいろんな批判に屈せずに、現在の組織・事業・経営を築いてきました。私たちには、これを継承し、さらに新しい時代にふさわしい協同を築いていく役割があります。
千國 系統の上部組織に指導される構図が崩れ、自分の頭で考えなければならない時代が到来したと考えています。一方で、JAの主体はあくまでも組合員です。組合員自らの取り組みとして組織・事業活動が存在しています。主役がやるべきことを、職員が代わってやる方が効率的かもしれませんが、良くはありません。また組織が大きくなり、きめ細かにはできないが、大きな協同組織としてJAが地域の「小さな協同」活動をどうしたらサポートできるかを常に頭に置いて活動すべきです。
大金 「組合員のために」ではなく「組合員と共に」ですね。知られる通り、長野県厚生連佐久総合病院の若月俊一さんの言葉を思い出します。若月さんは一方で「病院経営が赤字では話にならない。経営基盤を常に盤石なものにしておかなければならない」と唱えています。JAの経営も同じですよね。
千國 「協同組合としての役割発揮」と「経営基盤の確立」とは、車の両輪です。職員としてのプライドを高めることも、JAの経営陣のミッションです。
宮永 JAの役割を理解し、これをしっかり受け止めてくれる職員を育てる必要があります。それが教育ですね。各種のアンケート調査を見ても、JA職員としてのやりがいを聞くと、組合員や利用者の皆さんから「ありがとう」と言われたときだと回答しています。JA職員には、そう言ってもらえるチャンスがあるのです。
岩佐 元氣と勇気とヒントをいただく本日の出会いに感謝します。
大金 全く同感です。ありがとうございました。
【座談会を終えて】
4者同席の機会は初めて。それでもさっそく本題に入り、尽きない議論は紙幅を超えた。「人は石垣、人は城」という唄の文句があるが、「協同の原理」を掲げ、「協同の価値」を求めて先陣に立つ「一国一城の主」同士を結ぶ「信頼と共感」にあふれた会談であった。困難な時代だからこそ「協同の絆」が光り輝き、「新しい協同」の姿が立ち現れてくるのではないか。コロナ禍という未曾有の試練が、協同組合の真価を浮き彫りにしている。
(大金)
【緊急座談会:10年後にめざす姿を探って】
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