JAの活動:第42回農協人文化賞
【第42回農協人文化賞】信用事業部門 市川市農協理事長 今野 博之 氏 都市型農協の基盤強化2022年2月21日
千葉・市川市農業協同組合代表理事理事長 今野 博之 氏
JAいちかわは、千葉県北西部の市川市、船橋市、浦安市と柏市北部に位置し、江戸川を挟んで東京都に隣接する都市化が進む地域を管内としております。一方では農業が盛んな地域でもあり、地域団体商標を受けている「市川のなし」「船橋にんじん」「船橋のなし」をはじめ、ネギ、カブやトマトなど多品目が生産され、特に梨の産出額は全国でもトップクラスの一大産地となっています。そうした営農意欲の高い組合員に支えられ、令和5(2023)年度には市川市農業協同組合設立60周年を迎えます。
私は昭和54(1979)年に入組し、農業生産の盛んな地域と都市化の進む地域のそれぞれの支店業務を経験し、それぞれの組合員が抱える課題や地域が必要とするニーズにお応えしようと挑戦してきたことは、現在の私の礎であり、その時の組合員の皆様との信頼関係は貴重な財産です。
平成14(2002)年に高度成長期から都市化が進み続け、都心へのベッドタウンとなった市川南地区の行徳支店支店長に就任。時を同じくして就任した行徳支店が農林中央金庫による住宅ローン推進強化にかかるモデル支店に指定され、先頭に立って住宅ローンをはじめとする貸出金の強化に取り組み、組合員の資産活用と地域にお住いの皆様への住宅や資金の需要と供給ニーズに貢献してまいりました。
その後、平成19(2007)年に総務部長に就任した際には、信用事業における貯貸率を意識し、貯貸率を上げる事で総合農協としてバランスのとれた経営が出来ると強く感じたことから、全店での住宅ローンの強化に取り組みました。平成21(09)年に常務理事に就任後には、信用事業等の専門性や密度の濃い職員が求められることから、特別推進課を設置。特に住宅ローン推進チームは、ハウスメーカーや住宅販売業者との連携体制を構築し活躍を続けています。
その結果、当時組合全体で住宅ローン新規実行額が1億円にも満たない実績でありましたが、様々な推進施策を継続し続けた結果、100億円を超える実行額、近年では150億円を超える住宅ローン新規実行額にまで成長することができ、令和3(2021)年度では、3762件976億円の残高となり、当組合の一番の収益源であるとともに、毎年400人を超える准組合員が増加しています。このように安定した収益源を確保することにより営農指導や当組合の自慢であるふれあい・還元事業の実践を支える経営基盤となっています。
この体制を構築する過程には、バブル経済期にかかえた不良債権の処理問題が大きく経営に影響を与えました。しかしながら毎年不良債権比率を意識した経営を継続し、当時10%を超える不良債権比率も0・4%を下回るまでに改善いたしました。更には、合併により支援いただいていた、支援金や優先出資についても、約10年で返済・償却などし、これらの処理・手続きを行った期間には、単年度の決算で赤字を計上するなど非常に厳しい経営状況を経験してまいりました。この経験は、私が現在の経営を遂行するにあたり常に緊張感をもつ記憶の一つであり、また、経営基盤強化にもいち早く取り組むこととなる要因でもありました。
当組合では農協改革が提起された年の平成26(2014)年から2度の組織・施設整備の取り組み方針を策定いたしまして、19支店あった店舗を現在では13支店とし経営基盤の強化を図るとともに、リスクを伴うことなく適正な人員配置の構築と内部統制の確立と強化を実践いたしました。
この内部統制の確立についてもいち早く着目し、平成23(2011)年に総務部内にコンプライアンス課を新設。その後組織・施設整備を進め、令和2(2020)年に総務部人事課を人事部に昇格設置し人事教育課による職員教育・育成体制を整備。また、先に設置したコンプライアンス課と企画部の事務統制課を統合した総合リスク管理部を新設し、内部統制を強化いたしました。これらの取り組みの結果、令和3(2021)年9月末の信用事業実績は貯金平残3523億円、貸出金平残2259億円、貯貸率64・1%で、バランスのとれた経営基盤を構築出来ているものと自負をしております。
当組合は、令和4(2022)年度を初年度する「地域農業振興3カ年計画」「協同活動強化3カ年計画」を策定し、テーマとして「JAいちかわのイノベーション~食と農を基軸として地域に根ざした協同組合であり続けるために~」を設定し、取り組みをスタートいたしました。
これまでに構築をしてまいりました組合風土、自主運営体制(収益構造)、内部統制体制等を大切にしながら、経済情勢や地域の環境・ニーズ等の変化を的確に捉え「JAいちかわのイノベーション」を発揮した新たな協同組合の価値の提供に挑戦し、経済・信用・共済・資産管理事業による経営基盤の縦軸をしっかりと固めます。また営農事業をはじめ、ふれあい・還元事業等の横軸となる事業の実践を通じて、組合員・地域・役職員が一体となった地域農業振興や地域の活性化に取り組んでまいります。
座右の銘
【略歴】
こんの・ひろゆき 昭和30(1955)年7月生まれ。昭和54(1979)年市川市農協入組、平成14(2002)年行徳支店長、平成19(07)年総務部長、平成21(09)年常務理事、平成26(14)年専務理事、平成29(17)年副理事長、平成30(18)年3月代表理事理事長、現在に至る。
【推薦の言葉】
信頼築き事業活性化
学識経験豊富で、かつ行動力あふれる今野氏は、時田正一代表理事組合長との連携による独自の理事会運営を進め、都市型農協のJAいちかわらしい農協運動を盛り上げてきた。コミュニケーションと組合員との信頼関係を大切にして、組合員と役職員をつなぎ、高度な専門知識を持つ各事業部門を活性化させた。さらに組合員の満足度を向上させ、JA事業に大きく貢献している。
とりわけ信用事業は厳しい環境が続くなか、今野氏のリーダーシップによって、経済や金融などの事業部署を縦軸、「ふれあい活動・教育文化活動」を横軸に、協同組合らしい相乗効果を発揮している。
他の金融機関と異なる理念、戦略、具体策が信用事業の革新を進め、併せて役職員・組合員の誇りを喚起し、信用事業への結集力と利用者の満足度を高めている。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日
-
キウイブラザーズ新CM「ラクに栄養アゲリシャス」篇公開 ゼスプリ2025年4月30日