JAの活動:沖縄復帰50年~JAおきなわが目指すもの~
【特集:沖縄本土復帰50年】合併20年 今、JAおきなわが目指すもの 職員座談会(2)2022年5月30日
JAおきなわ 総合企画部長 古波蔵清氏
同 元北大東支店長 城間ゆう子氏
同 北部地区本部長 平安山英克氏
同 代表理事理事長 普天間朝重氏〈司会〉
合併してできたこと 離島農家救済や投資
普天間 離島だけでは難しかった投資が、JA合併で進みましたね。
城間 平成15年は台風が16個ぐらい来て、サトウキビがやられました。それまで1万tを割り込んだことがない収穫量が、8600tに留まり、翌年は台風が8個も来た上、大干ばつでした。1年目は耐えることが出来ましたが、もう1年続けて大きな災害が来た時は、農家を助けてもらいたいと本店に頼み、融資返済や未収金等を「3年間の分割返済」の条件変更してもらいました。
それと同時にサトウキビとジャガイモ以外に離島で何が栽培できるかと本店で必死に協議し、かぼちゃが生まれました。3年間で全ての農家が全額返済し、かぼちゃ栽培は支店運営員が中心となり島に定着しました。合併していて良かったと、支店運営の皆様や組合に感謝されました。私はあの時「どこかに神様が、いるんじゃないかな」と思いました。
普天間 かぼちゃを選んだのはなぜ。
城間 本店からの提案です。専任担当部長をすぐ派遣してもらって、収穫できないさとうきび畑をカボチャに変えました。一つ一つ手作業で行うかぼちゃ栽培を指導員から学んだとおりに栽培し、市場から高い評価を受け、今ではかぼちゃの拠点産地となっています。平成28年、本店からの提案と北大東村の支援を受け「特定地域経営支援対策事業」でジャガイモとかぼちゃの集荷場を造ってもらいました。
古波蔵 融資規制が解除になってから融資課長になったんですが、支店の管理職も職員も融資をやる気がない。暇で参りました(笑)。そこで、「稟議(りんぎ)を書かせてほしい」と本店に依頼し、最初に稟議を書いたのが1億1000万円くらいの共同取得資金で、見事通った。そこから、融資に対するみんなの意識も変わってきましたね。
平安山 合併前の平成11(1999)年ころから「あるある大事典」というテレビ番組で紹介され、評判になったシークワーサーを増やしたんですが、番組が終わってダメになりました。その時、シークワーサー農家と初めて個別の長期契約を結び、成功したのです。3年前には花の農家400人と契約して出荷量を確保、販売先に優先予約販売60%を達成できました。市場任せでなく、農家の収入が安定する契約制度ができたのは良かったです。
これからの課題 「顔の見える農協を」「若い担い手支援」
普天間 最後に、「JAおきなわ」でめざすものを話してもらえますか。
古波蔵 組合員からよく言われるのが「地元の職員がいない」ということです。合併前は単協で採用され、地域の農家の子弟が入ってくるんで、名前を聞いただけで「あんたとこのね...」と話が弾んだんですけど、合併してからはそういうわけにはいきません。それと組合員の高齢化です。JAは農家のために運営していますが、私たちは農家の顔が見えているかどうか、振り返ってみる必要があります。
全戸訪問運動やふれあい活動をやってるんですけどコロナでなかなかできなくて。あとは融資とかですね。お父さんの出資金が500万円だとすると、家族全員呼んで、100万円ずつ分けて出資する形にしてもらう。そうすると、お父さんが亡くなっても、各人から直接出資してもらっているので解約しに来ないんです。
また、自動車ローンを完済した時、脱退ということもあります。でも、この人が次に家を建てることもある。自動車ローンを借りてるうちに、いろんなアプローチをしていく。家庭では、盆と正月、親戚を回るときに子どもと一緒に行くように、家庭でやってることを農協でもやればいいと思うのですが。
城間 台風の時、土壌点滴用のホースの巻取り作業が出来ない高齢者の農家に、島外からのJA職員が来て作業をやってくれた時、農家の方は親戚の方々がやって手伝ってくれたように喜んでいました。組合員と職員が接することのできる研修や実体験を通して、困ったときや嬉しいとき関わりのある関係になれるといいですね。
普天間 あの時は、島に行った職員も勉強になったね。
平安山 沖縄の園芸品の主力品目は何か、県の担当部課長から、JAの役員が変わるたびに聞かれます。販売をしていて気付いたのは、沖縄は離島県なんです。スーパーには必ずニンジン、レタス、キャベツ、ピーマン、ダイコンなどを置いています。その品目はみんな必要ですから必ず入れるんです。輸送費まで含めて内地から引っ張るより沖縄から入れたほうが安くなるので、2月から6月までは価格が安定しているんです。だけど夏場は、沖縄では園芸ものは暑すぎて栽培できませんから内地のものを引っ張るため値段が高くなります。
沖縄には、いろんな品目の産地があるんですけど、そこをもっと明確にしてみんなで増やしていく。そして冬場は、県外ではインゲンやゴーヤの生産が少ないので、量を作っているところは県内に納めるとともに県外にも販売する。そこをうまく調整するのが園芸部門の課題だと思います。県外に販売しないと、県内産が出てくるときレタスが暴落したりするんですね。
また、「農家に寄り添わないといけないよ」と言っても、なるべく寄り添わないようにするのが今の若い職員たちだから、どういう風にJAの理念を教えていけばいいのか悩んでいます。
普天間 「いちゃりぱちょーでー」(一度会えばみな兄弟)というのは若い人たちにはないんだね。
城間 支店長を8年間ほどしていた時、1年間だけ本店に行き女性部に属して、JAって色々な事業をやっていることを知りました。その時に、新規就農支援事業でトラクターや施設への補助事業があると聞きました。翌年、支店に帰った時、若い人たちが3人いたので話したら飛びついてきて、最初は不安もあったようですが、今では彼らが力強い担い手になっています。収穫後の肥培管理作業は夜遅くまで仕事があるのですが一人も根をあげず、20代の若者も「畑だけでは厳しいのでトラクターで稼ぎたい」と言っています。
「サトウキビは島を守り、島は国土を守る」
普天間 離島の農家、農協は大変だけど、国土を守っている役割もあるよね。
城間 島では農家数がだんだん減っていますが、農地そのままで農業委員会が斡旋して、若い人が農地を拡大しています。大干ばつの時、自分の飲む水を畑にあげたいと涙していたおじいちゃんも、ちゃんと後継者に引き継がれています。
「サトウキビは島を守り、島は国土を守る」という言葉を島でよく聞きました。島にいる人たちはとても誇りに思いその責任感を背負っているといつも感じていました。私は今事情で那覇にいるので「島の人」じゃないのですが、北大東島の人たちにずっと見守られてきました。家族のように接してくれたので、私も一緒に頑張らないといけないと思ってやってきました。私が支店長の時は赤字でしたが、今はたぶん黒字かな。
普天間 ちゃんと黒字になっていますよ。
城間 良かった。苦労してやってきたことが、いま実を結んでいるのかなと思います。
普天間 本日は忌たんのないご意見をありがとうございました。
引き続き沖縄のためJA運動にまい進して行きましょう。
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