【ドイツの有機農業を訪ねて】第2回 連帯農業カルトッフェル・コンビナート "顔の見える"を訴求 橋本直史徳島大学講師2024年10月24日
ドイツの有機農業について、3回にわたって報告する。第2回は徳島大学の橋本直史講師による「連帯農業カルトッフェル・コンビナート」についてレポートしてもらう。
【ドイツの有機農業を訪ねて】第1回 ビオラント農場クレッポルト 手厚い公的助成金 山口和宏・鳥取環境大学准教授(24.10.23)
ドイツで顕著な拡大をみせる「連帯農業」
取り組みを熱心に説明するダニエル氏
ここでいう"連帯農業"とはドイツ版の地域支援型農業(CSA・コミュニティ・サポーティド・アグリカルチュア)であって、米国における取り組みと活動内容と大きな変わりはない。ドイツ国内における連帯農業の農場数は、1989年の1農場から、2009年10農場、2015年92農場と伸長し、2021年には368農場と、ここ数年で急増した。しかも現在もその勢いは加速しているとみられる。
この契機となったのは、2011年のドイツ国内での「連帯農業協同組合ネットワーク」の設立、ならびに「連帯農業」(Solidarity Agriculture, Solawi) の定義の明確化があったことによるであろう。こうして消費者を巻き込んだ環境面・経済面での"持続可能な農業"の構築をめざした産消提携、有機農業運動が組織化され、以降、取り組みが加速していった。以下で紹介するカルトフェル・コンビナートはその牽引・旗振り役となった。

野菜栽培作業
連帯農業加盟農場はドイツ国内で463農場(2024年8月時点)を数え、各州で万遍ない広がりをみせている。地域グループの設立(13組織)や、協同組合形態での農場設立(2020年4月時点で11組織)も増加を後押ししたと考える。なお、加盟農場は隣国のルクセンブルク、オーストリア、スイスにまで及んでいる。
筆者の調べでは、加盟農場の多くがエコロジカルな農業を実践し、また、EUの有機基準よりハードルが高い有機農業連盟(Bioland、Naturland、Demeterなど)の認証を取得した農場がある一方、有機認証は未取得であるが有機農法を実践する農場などさまざまである。そして、農産物の販売は野菜・果実が軸となっているが、ハーブ類、ビール・ワインを含む飲料や、食肉や乳製品を販売する農場も一定程度ある。加盟農場における提携可能な世帯数は100戸以下が大半を占め、活動方針・細かな規約は農場毎の裁量に委ねられているようである。
連帯農業を牽引するカルトフェル・コンビナート農場

予冷庫にあるトマト
ここで紹介するカルトフェル・コンビナート農場は、ミュンヘンの北西40㎞圏にある。農園創設者の一人であるダニエル・イーバアル氏は大学では情報学を専攻し、農業の知識は有していなかったという。農園創設のきっかけは、ダニエル氏がスーパーマーケットの店頭では「誰が?どのように?作ったのか?」が分からない食料品で埋め尽くされていることに疑問を持ったことである。現状の変革をめざし、当農場を連帯農業の理念に基づいた協同組合組織として友人のサイモン・ショール氏とともに2012年に立ち上げた。ダニエル氏によれば、CSAの考えは友人や家族から学び、実践においては日本の「産直」を参考にしたという。農場名を直訳すれば"ジャガイモ・コンビナート"となるが、ジャガイモの訴求が狙いではなく、知名度向上のために名前のインパクトを重視したようである。
農場の経営面積は43ha、従業員は40人で、その他研修生も受け入れている。野菜をメインとし、その数は50品目におよぶ。もちろん、化学肥料・農薬は一切使用せず、環境保全に努めている。地力維持のために輪作とマメ科作物を重視し、ヒマワリ、クローバ、デントコーン、ソバも作付けしている。野菜作は露地栽培が主だが、9棟の温室ハウスもある。圃場の中央部には予冷庫を備えた集出荷施設がある。現在、予冷庫の電力などのエネルギー自給に向けて、集出荷施設の屋根にソーラーパネルを設置する費用100万ユーロの出資を3000戸の消費者組合員に募っている。

野菜ボックス
消費者組合員は、2024年9月現在ではミュンヘン市民を中心に3500戸になっている。これは全国の連帯農業加盟農場では"断トツ"の規模である。会員は30~40歳代の子育て世帯が中心という。3500戸のうち、現在野菜ボックスを毎週配送しているのは2400戸である。ミュンヘン市内には130か所のデポジットが設置されている。野菜の収穫と箱詰めは月曜~木曜日、デポジットの配送(3台のトラック・担当者8人)は火曜~金曜日になされる。ちなみに月曜日を例に挙げれば、第1チームは朝に野菜を収穫し、洗浄・予冷を担当する。第2チームは同日の午前中に予冷された野菜の箱詰めを担当する。第3チームが翌火曜日にデポジットに輸送する。野菜以外では、パンやジュース、さらに2021年からは自家製ビールも配送リストに加わった。
橋本直史 徳島大学講師
消費者会員の会費は年間936ユーロ(1ユーロ=100円では14万円)の先払いで、配送はクリスマスから大晦日の1週を除いた年間51週となる。なお、消費量が少ない単身世帯の回避は600ユーロ(9万円)に減額考慮されている。届けるアイテムは家族の世帯員数を考慮して数量を調節しているという。配送される野菜は、食べるのに問題がないかぎり、規格外品や虫つきのものも野菜も詰められる。ダニエル氏によれば、会員からのクレームはさほどないという。野菜の調理方法についてもしっかり伝えている。
カルトッフェル・コンビナート農場は、ドイツ国内の連帯農業運動の先頭を走っている。直近の9月26日に発表された欧州委員会による「第3回EU有機農業賞」の最優秀有機農家部門にこのルトッフェル・コンビナート農場が選定されたことは、全国の連帯農業運動を励ますものであろう。
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