【終戦の日に寄せて】石破総理は信念を新談話で語れ 元東京大学教授・森島賢氏2025年8月15日
今日は終戦の日である。誤った戦争だったとはいえ、国のために戦って命を捧げた人たち、戦災によって尊い命を奪われた人たちに、あらためて哀悼の意を表したい。
元東京大学教授・森島賢氏
●2つの総理談話
今年は80年目の区切りの年である。これまで、こうした年には総理大臣が談話を発表していた。50年目には村山富市総理(当時)が、そして70年目には安倍晋三総理(当時)が、村山談話とは対照的な総理談話を発表した。
だが石破 茂総理は見送るようだ。自民党の中に、少数ではあるが強い反対があるからのようだ。なぜ反対なのか。
以前の2つの対照的な総理談話をみてみよう。
●村山談話と安倍談話
はじめは、村山談話である。その骨子は「・・・わが国は・・・植民地支配と侵略によって・・・アジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は・・・この歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします」(資料は 外務省 次も同じ)というものだった。つまり、侵略を認めて、反省とお詫びの気持ちを表明した。
これに対して、安倍談話は、侵略を認めないし、お詫びもなかった。それどころか、「・・・私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。」と言って、今後の謝罪も拒否した。
石破総理は、どうするのか。報道では、これまでの先例を破って、談話は出さないようだ。この談話は、石破総理の基本的な外交姿勢を、国の内外に向かって語るものである。自分の信念を語らなくていいのか。
●開拓という名の侵略
さて、ひるがえって戦中、戦前をみると、満州開拓という国策があった。無人の未墾地である満州(中国北東部)へ行って開拓しよう、というものである。
その実態は、現地人を武力で立ち退かせて、勝手に開拓したものである。満蒙開拓青少年義勇軍という軍隊も組織され、銃も持っていた。これが武力でなくて何であろうか。これが侵略でなくて何であろうか。日本は、開拓という名で、中国に対して侵略を行ったのである。
だが、安倍談話は、この紛れもない事実を認めない。
●開拓という名の棄民
満州開拓は、同時に農村の過剰人口問題の解決策にもなるという。農村の次男や三男は、過剰だから、満州へ出て行って農業をしてもらう、というのである。これは、一種の棄民政策ではなかったか。
また、「過剰」とは無礼ではないか。これは、日本資本主義が犯し続けている罪悪ではないか。だが、当時はそのように言われていた。
だが、言われっ放しではなかった。長野県の大日向村は、これに事実上の抗議をした。いわゆる満州開拓を、いわゆる過剰人口問題の解決策としては容認しなかった。
どうしたか。
●長野県大日向村の満州開拓
長野県の大日向村は、言われっ放しで、忍従してはいなかった。満州開拓に対して、しなやかに協力するようにして、しかし、いわゆる過剰人口問題、実は次三男は家庭を持てないという、村の貧困問題の解決策として、換骨奪胎しようとした。
その経緯は、神谷慶治先生が、綿密な学術調査をして、報告書を刊行している。和田 傳の小説はベストセラーになり、脚色したものを前進座が公演した。豊田四郎は映画化して、いまでもYOUTUBEで公開している。
それによれば、当時の淺川武麿村長は、みんなで一緒に満州へ行こう、といった。つまり、女性はもちろん、次三男だけでなく長男も一緒に行こう、小作農だけでなく、地主も一緒に行こう、といった。これは、農協など、共同体の基本論理に、忠実に従ったことである。
村民は賛成し、その通りに分村して、中国北東部に新しい大日向村を作った。
●石破総理の新談話への国民の期待
さて、石破総理の総理談話へ戻ろう。総理は、今後日本は侵略戦争はしない、と考えているようだし、その考えを公表したいようだ。そうして、日本の内政、外交の礎にしたいようだ。
それは、敬虔なクリスチャンの彼らしい、不戦の誓いだろう。それは、カルバン派の教会で洗礼を受けた彼にとって、神から与えられた崇高な使命だ、と考えているのだろう。
それなら、先日、広島で行われた平和記念式典での挨拶のように、自分の言葉で、思いのたけを存分に発表するのがいい。石破総理は、今ではそれが出来る数少ない政治家のうちの一人である。
その日は、終戦の日でなくてもいい。近い日に発表すればいい。
自民党の中には、反対意見があるようだ。だが、国民の大多数はクリスチャンでなくても、大賛成だろう。そうして、熱く期待している。
(本稿は ChatGPT から資料の検索について貴重な示唆を得た。ここに記して厚く謝意を表したい。)
(2025.8.15)
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