協同組合の将来像を探る JC総研が研究報告2014年5月22日
本質・参加・教育で討議
一般社団法人・JC総研は5月16日、都内で平成26年度研究セミナーを開き、「新協同組合ビジョン研究」報告を行った。同総研は2012年の国際協同組合年を記念し、10年11月から新協同組合ビジョン研究を進めている。12年8月の中間報告に続き、今回が最終報告。
セミナーでは明治大学の中川雄一郎教授が「協同組合は『未来の歴史』を書くことができるか」、都留文科大学非常勤講師の田中夏子さんが、「協同組合は『参加』の問題とどのように向き合うのか?」、聖学院大学の大高研道教授が「現代協同組合が求める教育活動の姿」のテーマで講演。さらにコープみやざきの亀田高秀理事長が「組合員さんの日々のくらしに役立ち続ける生協めざして」、JAグリーン近江の岸本幸男理事長が「組合員・地域とJAの関係構築を目指して」のテーマで、それぞれ実践報告した。
(写真)
JC総研の新協同組合ビジョン研究報告セミナー
◆レイドロー超えて
中川教授は、1980年の第27回ICA(国際協同組合同盟)モスクワ大会における「西暦2000年の協同組合」のレイドロー報告について、「協同組合の本質は何かを追求する際には、ヨーロッパ中心の解釈を乗り越え、環境の変化をしっかりとらえた新しい視点が必要」と指摘。
特に、[1]地球の諸資源を分け合う方法、[2]だれが何を所有するべきかという方法、[3]土地の果実(食料)と工業製品を分け合う方法、[4]各人が必要な部分を公正に取得できるシステムを整える方法――といった未解決の経済問題を解決する方法を考えるべきだという。そのためには、単一の協同組合だけでなく、ワーカーズコープ等も含めた多様な利害関係者で取り組む必要性を強調した。
◆周辺の参加反映を
また、協同組合の「参加」について話した田中さんは、参加のあり方として「協働」を重視。求められる参加の方法は、組織側の論理からだけではなく、相対的に周辺とされる構成者の考え方を反映させる必要があると指摘。
例として長野県のJAあづみ女性部の活動と、そこから広がった「助け合いネットワークあんしん」の活動を紹介。
その特徴は、[1]JAの枠を超えた地域ニーズの発掘、[2]より多くの人が活動にかかわる工夫、[3]生活現場の小さなニーズに応えるさまざまな活動は独立採算の運営だが、その立ち上げに際して、先行のグループからの支援を可能とする協働の仕組みの存在――で、「外延的な広がりがある」と評価。「すでにある土俵に招き入れる(包括する)のではなく、一緒に働くことが可能なやり方をともに開拓することが必要だ」と指摘する。
◆広報宣伝から脱皮
次に、協同組合の教育について話した大高教授は、何のため(目的)、何を(内容)、誰が(主体)、どのように(方法)学ぶかを問うべきだと問題提起。今日の協同組合教育は、経営の発展にそった実務教育に傾斜し、また利用者としての組合員の結集のための手段(広報)となっていると分析する。
これを改めるため、[1]広報宣伝活動の手段としての教育文化活動の再検討、[2]商品・サービスの価値を知ってもらう教育からの脱皮、[3]学びの文脈化(「地域に知ってもらう」から「地域を知る」へ、「教えられる」から「育ちあう」へ)の必要性、を指摘。その上で、協同組合教育の未来について、「コミュニティに根差した実践と多様なステークホルダーの参加を通した協同の価値の発見と共有が必要」と述べた。
また、実践例として、亀田理事長が、自分の意見や要望をきちんと主張でき、その主張をもとにみんなで協同できる生協づくりに取り組んでいるコープみやざきの取り組みを報告。さらにJAグリーン近江の岸本理事長は、役職員の行動規範としている「グリーンウェイ」の取り組みを紹介した。これは、[1]社会人として地域から信頼される人材、[2]組合員、利用者の豊かなくらしをサポートできる人材、[3]仲間を大切にする組織風土づくり――をめざすもので、職員間、地域、次世代、農業者と消費者などのつながりを深めている取り組みを報告した。
(関連記事)
・【インタビュー】『魅力ある地域を興す女性たち』を著したJC総研主任研究員・小川理恵さんに聞く 女性の力が地域を盛り上げる(2014.05.13)
・【時の人 話題の組織】萬代宣雄・JA島根中央会会長 いま、なぜ1県1JAなのか?(2014.05.09)
・労務相談件数、大きく減る JC総研(2014.05.09)
・JC総研 「ビジョン研究会」の成果を集大成(2014.04.25)
・精肉の国産志向が顕著に JC総研調査(2014.04.09)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(159)-食料・農業・農村基本計画(1)-2025年9月13日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(76)【防除学習帖】第315回2025年9月13日
-
農薬の正しい使い方(49)【今さら聞けない営農情報】第315回2025年9月13日
-
【人事異動】JA全中(10月1日付)2025年9月12日
-
【注意報】野菜類、花き類、豆類にハスモンヨトウ 県内全域で多発のおそれ 兵庫県2025年9月12日
-
【注意報】果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2025年9月12日
-
【石破退陣に思う】農政も思い切りやってほしかった 立憲民主党農林漁業再生本部顧問・篠原孝衆議院議員2025年9月12日
-
【石破首相退陣に思う】破られた新しい政治への期待 国民民主党 舟山康江参議院議員2025年9月12日
-
【石破退陣に思う】農政でも「らしさ」出しきれず 衆議院農水委員会委員・やはた愛衆議院議員(れいわ新選組)2025年9月12日
-
ドローン映像解析とロボットトラクタで実証実験 労働時間削減と効率化を確認 JA帯広かわにし2025年9月12日
-
スマート農業の実践と課題を共有 音更町で研修会に150名参加2025年9月12日
-
【地域を診る】個性を生かした地域づくり 長野県栄村・高橋彦芳元村長の実践から学ぶ 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年9月12日
-
(452)「決定疲れ」の中での選択【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年9月12日
-
秋の味覚「やまが和栗」出荷開始 JA鹿本2025年9月12日
-
「令和7年台風第15号」農業経営収入保険の支払い期限を延長 NOSAI全国連2025年9月12日
-
成長軌道の豆乳市場「豆乳の日」前に説明会を実施 日本豆乳協会2025年9月12日
-
スマート農園を社会実装「品川ソーシャルイノベーションアクセラレーター」に採択 OYASAI2025年9月12日
-
ご当地チューハイ「寶CRAFT」<大阪泉北レモン>新発売 宝酒造2025年9月12日
-
「卵フェスin池袋2025」食べ放題チケット最終販売開始 日本たまごかけごはん研究所2025年9月12日
-
「日本酒イベントカレンダー 2025年9月版」発表 日本酒造組合中央会2025年9月12日