【TPP】3月に首席交渉官会合2015年3月2日
現場に不安情報開示を
TPP(環太平洋連携協定)交渉について甘利明TPP担当大臣は3月9日から首席交渉官会合が開かれることを2月24日に記者会見で明らかにし「その後、最終的には大臣会合になり、CN会合(首席交渉官会合)の進捗と合わせて日米の二国間で残されている課題解決のスケジュールが決まってくるのではないか」と述べ「残されている問題の着地点を探りながら交渉を進めていきたい」などと語った。
難航分野は多い
甘利大臣によると首席交渉官会合に合わせて日米の事務折衝が大江首席交渉官代理とカトラーUSTR(米通商代表部)次席代表代行との間で行われる見込みだという。現在は「この点についてはこういう認識でいいですね、この点についてはこういう課題が残されているということでいいですね、という最終的な課題解決に向けての論点整理をしている。それができたら事務折衝が再開されると思う」と述べた。 2月16日にTPP政府対策本部は関係団体への説明会を開いた。
説明した渋谷審議官は「甘利大臣は最終コーナーを回ってゴールは見えてきたが、ゴールまでの距離が分からない」との発言を紹介した。
そのうえで渋谷審議官は「まったくその通りで、これまでの交渉を振り返り現在の状況をみると、マクロで見るとゴールは近いと言えるけれども、しかし知的財産、国有企業、日米の物品貿易などミクロで見るとまだまだハードルは高い」と述べた。
交渉分野のうち難航しているのは知的財産。著作権保護期間、医薬品のデータ保護期間、地理的表示について議論が行われいるが「非常にセンシティブな」だという。たとえば、医薬品のデータ保護期間についても単に期間が問題となるだけなく、薬価を保険料で負担しているか、税金で負担しているかといった国の社会保障の事情が絡む。データ保護期間が長くなればその分税負担が重くなることになれば政治問題になりかねないなど、交渉が難航している理由だという。著作権違反に関して親告罪とするかどうかも議論が進んでいないという。
一方で環境や労働などかなり議論が整理されてきた分野もあるという。米国はこの分野の進捗状況を公表しTPA(大統領貿易促進一括権限)取得推進の材料にしたい思惑もあるとされ、次の会合ではさらに議論が進められる可能性もある。
また、ISDS(投資家対国の紛争解決手続き)の扱いについては、公共政策目的でのルールまで制限することがないようにするなど、国の主権を損なうようなISDS導入がなされないよう交渉が行われているという。
農産物協議の真偽は?
説明会ではわが国の重要品目に関する具体的な報道が相次いでいることへの真偽を問う質問も出た。
米では米国側が主食用米輸入拡大を20万t規模で要求しているなど。牛肉では15年かけて38.5%の関税を10%前後まで引き下げる案が浮上しているなどの報道だ。
一方、自動車分野でも日本の乗用車に課す関税を10年以上かけて撤廃するものの、日本が問題を起こせば米国は関税水準を元に戻せるという条項がつくなどとの報道もあった。こうした内容は米国のマスコミや貿易専門紙では一切報道されていない。
説明会で渋谷審議官は「合意されていないのに合意されたかの報道は明らかに事実誤認」と話した。そのうえでこれらの報道について▽憶測でありそれ自体が違う、▽憶測の前提となる事実を見誤っている、▽本質を捨てて枝葉だけの誤った報道などがあると指摘した。 方向性が決まったかのような報道だが、交渉は行ったり来たりですべて流動的で「すべてパッケージで決まる」として日本は「最終的に国会で承認していただけない交渉にしてはいけないことを常に念頭においている」と説明した。
そのほか為替条項をTPP交渉に盛り込むことについては米国議会などで話題になることがあっても「TPP交渉の場で話題になったことはない」とした。
また、米国は次期大統領選挙戦入り前にこの秋にも議会で承認を得たい意向があるため、春に大筋合意、夏には署名というスケジュールを描くが「日本にはそういうスケジュールはない。早く合意しなければならないというスタンスではない。しかし、いつまでもずるずるはよくない。いい内容で早くまとまるようにが基本」との考えも示した。
現場からの危機感を払しょくするためにも衆参国会決議に基づく十分な情報開示が求められる。
【平成25年4月衆参農林水産委員会決議より】
七:交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること。
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