津波被災農地の7割 営農再開が可能に2015年3月10日
2700ha大区画化に
3月11日で東日本大震災発生から4年を迎えるが、農林水産省は農林水産業の復興状況などをこのほどまとめた。平成26年度中に津波被災農地の約7割で営農再開が可能となっている。
東日本大震災では農林水産関係全体で約2兆4000億円の被害が発生した。阪神・淡路大震災時の農林水産関係被害の約26倍、新潟県中越地震の約18倍もの被害額となった。
とくに津波によって6県(青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉)を中心に2万1480haの農地に被害が発生した。このうち復旧事業によって26年度中に約7割で営農再開が可能となった。
面積は約1万5000ha。ただ、県によってばらつきがある。千葉、茨城は100%復旧したが、宮城は84%、岩手は62%、原発事故の被害も受け帰還困難になった地域も抱える福島は30%にとどまっている。
津波被害を受けた農業経営体は約1万経営体あったが、農水省が関係者から聞き取りのうえ推計したところ、55%にあたる約5610経営体が経営を再開している。ただ、農水省によるとこの経営体数には、集落営農に参加して経営を再開した農家や、担い手に農地の利用権を委託した農家などの動向は反映されていない。このため農業経営体数の変化については11月公表予定の農林業センサス結果で明らかになるという。 農地の復旧に合わせてほ場の大区画化(標準区画1ha)も進められている。計画では岩手、宮城、福島の3県計で8990haで、そのうち27年5月に2760haで大区画化が実現する見込みとなっている。
津波被害からの復興のひとつの取り組みに、東北一のいちご産地である仙台いちごの復活がある。産地の宮城県亘理町・山元町の生産者380戸のうち、356戸が被災。農地は96haのうち91haが被害を受けた。
震災から約半年後の10月までに阿武隈川沿いの耕作放棄地にパイプハウスを整備し生産・出荷を開始した。その後、約40haのいちご団地を整備、さらに従来の土耕栽培から高設養液栽培に切り替えた。いちご選果場も再整備し25年11月から本格的に出荷が行われている。 被災地では生産・加工等にかかわる先端技術を使った大規模実証研究を実施している。
土地利用型農業では大型機械を使った乾田直播や、鉄コーティング種子を使った湛水直播で育苗作業の軽減やコストダウンが試みられている。
いちご栽培では紫外光蛍光灯照射(病害防除)や移動栽培ベンチ(省力化)などの新技術を活用している。農水省は今後、これらの技術の体系化と経営体単位での導入効果の検証を行い、普及を図る必要があるとしている。
【東日本大震災の農林水産関係の被害】
合計 2兆3841億円
〈農林業関係被害〉
被害額合計:1兆1204億円
○農地(1万8186か所):4006億円
○農業用施設等(水路、揚水機、集落排水施設等1万7906か所):4408億円
○農作物・家畜等:142億円
○農業・畜産関係施設等(農業倉庫、ハウス、畜舎等):493億円
○林野関係(林地荒廃、治山施設、木材加工流通施設等):2155億円
〈水産業関係被害〉
被害額合計:1兆2637億円
○漁船(2万8612隻):1822億円
○漁港施設(319漁港):8230億円
○養殖施設:738億円
○養殖物:597億円
○共同利用施設(1725施設):1249億円
(関連記事)
・復興支援プログラムを27年度も継続 農林中央金庫(2015.03.09)
・不足している支援「被災地農畜産物の購入」(2015.02.13)
・被災地福島へ初の6次化ファンド 農林中金等(2015.03.03)
・被災経営体5割超で再開 震災から3年(2014.03.07)
・農業所得、平均約6割に戻る 津波被災地(2013.07.30)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日