農産物輸出 初の1兆超え 1兆2385億円 2021年2022年2月4日
政府は2月4日、2021年の農林水産物・食品の輸出額が1兆2385億円となったと発表した。前年から2525億円伸びた。世界でコロナ禍が続くなか、小売店やEC販売など新たな販路での販売が堅調だったことなどが輸出額を伸ばした。
昨年の輸出実績9860億円から25.6%伸びた。2012年から9年連続で前年を上回っている。政府は2006年に1兆円目標を打ち出し初めて目標を達成した。1兆2385億円のうち、農産物は8043億円で昨年の6552億円から1491億円伸びた。
農水省によると、コロナ禍で消費者にニーズが変化するなか、小売店向けやEC販売など新たな販路への販売が堅調だったことや、中国や米国などでは経済活動が回復して外食需要も回復してきたことなどで、多くの品目で過去最高の輸出額となった。
農産物では畜産物が46.7%伸びて872億4300万円となった。牛肉は85.9%伸びて536億7900万円、牛乳・乳製品は9.8%増の243億9000万円、鶏卵は27.9%増の58億6700万円、豚肉は14.5%増の20億1300万円となった。
鶏肉は鳥インフルエンザの影響で▲37.2%の12億9500万円となったが、その他の品目はすべて過去最高額となった。牛肉は米国で外食需要が回復したことに加え、小売店向けやEC販売が好調だったという。
野菜・果実は全体で28.0%増の569億5000万円となった。ながいも、なしを除き過去最高額でリンゴは51.5%増の162億1200万円、ブドウは12.4%増の46億2900万円、イチゴは54.4%増の40億6100万円などとなった。
青果物は春節時期が例年より遅く、リンゴ、イチゴなどの需要が2月上旬まで続いたことや、台湾でのリンゴの贈答用や家庭内需要が増加したことが輸出を伸ばした。
米も過去最高額となる59億3300万円で11.6%伸びた。輸出数量は2万2833t。農水省によると香港、シンガポールを中心におにぎりなどの中食と外食の需要が伸びたことが要因だという。
一方、パックご飯は5億9300万円で前年比▲10%、輸出量は1129tで同▲6%だった。農水省によると米国、香港、台湾で需要は伸びているが、日本国内の需要拡大への対応で手一杯となったのが要因だという。各国に需要はあることから農水省は、産地とともにパックご飯の製造工場整備を支援する水田リノベーション事業などを活用した輸出拡大を呼びかけている。
2021年12月単月の輸出額は1217億円で前年同月より205億円増え、20.2%伸びた。単月で過去最高となるともに、これで18カ月連続で前年を上回った。世界的なコロナ禍でコンテナ不足の影響が懸念されたが、12月は米国の主要港湾で24時間稼動が始まるなど、円滑な海上輸送への努力なども輸出も伸ばした。また、中国の春節に向けた需要も影響したという。
輸出先国では中国が初めて1位となった。輸出額は2224億円で35%増。金額の構成比では19.1%。昨年まで1位だった香港は2位(輸出額2190億円、構成比18.8%)、3位米国(1683億円 14.5%)、4位台湾(1245億円、10.7%)、5位ベトナム(585億円 5.0%)となった。
中国が輸出先国として1位になった要因として農水省はホタテ貝の需要増や、ウイスキーの単価の上昇、日本酒の外食での需要回復などが考えられるという。
輸出の伸びについて政府は「政府一体で進めてきた拡大の取り組み」も強調する。福島第一原発事故後から日本産の輸出規制を多くの国が続けてきたが、日本政府の交渉で昨年は米国を始め10か国が撤廃、EUやインドネシアなどが規制を緩和した。輸出証明書の円滑な発行、牛肉処理施設の整備や、見本市・商談会の開催なども行ってきた。
ただ、農産物の輸出額8043億円のうち、加工食品が57%を占める。青果物は28%伸びたものの376億円にとどまる。政府は2025年までに2兆円、2030年までに5兆円という目標を設定した。
実現に向けて強調するのが「マーケットイン輸出」だ。果実では、たとえば富裕層をターゲットにした大玉の高級なリンゴだけでなく、手頃な価格で提供して中間層を取り込む販売や、パック売り、粒売り、カット商品など「輸出先のニーズに合わせて販売することが必要だ」(輸出・国際局)と強調する。そのための産地の育成にも力を入れるが、取り組みを進めるには輸出額の増加が農業者の手取りにどう結びついているのかの検証も必要になる。
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