下水汚泥資源の肥料利用拡大へ官民検討会 農水省・国交省2022年10月18日
農林水産省と国土交通省は10月17日、「下水汚泥資源の肥料利用の拡大に向けた官民検討会」を設置した。今後は月1回程度開催し、年内を目途に論点整理を行う。
この検討会は、岸田首相が9月9日、政府の食料安定供給・農林水産業基盤強化本部で農相に対して国交省と連携して下水汚泥やたい肥など未利用資源の拡大を図ることを指示したことを受けて設置された。
構成員は学識経験者、下水汚泥の肥料利用に取り組む地方自治体、JA全中・全農など農業団体と肥料メーカー、下水道事業関係者など。
下水汚泥には年間リン需要量(約30万t)に対して約5万tが含まれており、下水汚泥ポテンシャルを活用した肥料利用は農林水産業の持続性に貢献する。下水汚泥を肥料として利用するには、脱水汚泥をコンポスト化する方法や、一部自治体では汚泥処理の際にリンを回収しているが、施設のコストが高い。
汚泥の焼却灰を肥料として利用する技術もあるが、現在は焼却灰は多くは埋め立て・建設資材に利用されており、下水汚泥の肥料利用は1割にとどまっている。
一方、農水省はみどり戦略のなかで「2050年までに輸入燃料や化石燃料を原料とした化学肥料の使用量を30%低減する」との目標を掲げている。さらに9月に閣議決定された新たなバイオマス活用推進基本計画では、下水汚泥中の有機物をエネルギーや緑地などに利用する割合を「下水道バイオマスリサイクル率」として追加し、現在の約35%を2030年には約50%とする目標を掲げた。
検討会ではリンの回収のコストや、地域による回収成分のばらつきや、即効性がないことふまえた肥料化などの課題をめぐって意見が出たほか、汚泥中の重金属を懸念する声が農業者からあった。これに対して下水道関係者からは法的基準で安全が確認されており、正しい認識を積み重ねていく必要性が指摘された。
そのほか農業者、消費者の理解増進による需要拡大が課題になることや、「ネーミングがネガティブ」と名称を検討すべきとの意見もあった。
農水省と国交省は、今後の検討会で課題を明確にして「誰が何に取り組むべきか」など年内に整理したい考えだ。
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