農業経営体 2030年に54万へ半減の見込み 農地の集約化促進へ 農水省2024年11月7日
農林水産省は11月6日、食農審企画部会に農地と農業者の将来見通しを示した。農業経営体は2020年の108万から2030年に54万へと半減し、規模拡大がなければ2020年に比べて約3割の農地が利用されなくなるおそれがあるとした。農水省は、規模拡大する経営体へ農地バンクを通じて農地の集約化を進めることが必要だとしている。

11月6日の企画部会
54万経営体のうち、法人は5万法人と2020年より1万増えるが、主業経営体は23万から11万へ▲52.2%、準主業・副業的経営体は81万から38万へ▲53.1%となるという趨勢を示した。
農業者が急速に減少することが見込まれるなか、「農地を適正に利用する人の確保が最大の課題」だと指摘する。
ただ、品目によって農業経営体の減少の状況や新規就農の状況が異なる。
米で収益 15ha以上
米・麦・大豆では1経営体あたりの経営規模は、2010年から2020年に1.5倍規模拡大しており、法人など団体経営体では27.7ha、主業経営体では8.5haとなっている。ただ、年1作であり面積当たりの収益性が低いため、500万円の所得を確保するには15ha~20haの経営規模が必要なため、外部からの新規参入は進みにくい。
さらに規模拡大しても農地が分散している場合もあり、集約化とそれに対応したスマート農業の普及も課題となる。
農水省はこうした現状分析のうえ、既存の経営体のさらなる規模拡大と資金力のある法人などの参入で農地利用を維持し、スマート農機や多収品種の導入による生産性向上で農業者が減少するなかでも生産の拡大を図ることをめざすとした。
そのために地域計画づくりを活用して規模拡大する経営体へ農地を集約し、さらに農地の大区画化を推進するとともに、スマート農業の本格化への条件整備などを図るという方向を示した。
加工・業務用で産地形成
野菜では露地の経営面積が26万haから18万ha、施設は3.2万haが2.3万haへと減少するが、法人が1000経営体増えると見込まれ、生産減少の影響は比較的少ないとみる。年に複数回生産できることもあり、米と違って新規就農者は多い。ただ、機会化が進んでおらず人手に依存しているため、規模拡大の障壁となり、コスト引き下げも難しくしている。
一方で加工・業務用野菜のニーズは高まっていることから、規模拡大が求められている。
こうした分析をもとに農水省は露地野菜は、基盤整備を実施して地域計画に基づいた集約化した産地の育成が必要とし、施設野菜では大規模施設を増やすため、法人の経営基盤の強化をめざす方向を示した。
果樹は面積5割減見込み
果樹は20万haの経営面積が2030年には11万haへと5割弱減少する見込みだ。中山間地域での栽培が多く、しかも収穫など労働ピークが集中するなど労働力の確保が課題となるほか、新規参入するには未収益期間を乗り越える資本力が求められる。
ただ、国産果実の価格は上昇傾向にあり、参入できれば収益を上げることが可能だ。
農水省は果樹も地域計画を活用し、基盤整備による労働条件の改善や、新たな果樹団地への樹園地の移設などで、生産性の高い果樹産地を育成する方向を提起した。省力樹形の導入や機械化も課題とした。
飼料作物 地域計画に
また、飼料作物についても地域計画に基づき、耕種農家による飼料生産も含めて集約化した飼料産地を育成する方向を提起したほか、畜産農家が規模拡大するなか自ら飼料生産をする余裕がなくなっていることから、地域の飼料生産を支えるコントラクターなど外注できる組織の育成を図ることも必要だとした。
今回は米、野菜、果樹について課題と今後とるべき施策の方向を示したが、今後は主要な品目の生産量、作付面積、生産性向上対策などを検討し、次期基本計画では、生産目標だけでなく、担い手への農地の集積・集約化に関する目標設定と、農業経営体数、農業経営体の規模など、将来の農業構造の見通しも検討する。
中山間地 食料安保に不可欠
企画部会で山野徹JA全中会長は水田農業でさらに大規模化を進めるという農水省の提起に、「地帯別の検討が必要」と指摘し、とくに中山間地域は農地や農業産出額で4割を占めるが、小規模なほ場が多いとして「現状を踏まえた対応策が食料安保にとって不可欠」と強調するとともに、農地の大区画化には時間がかかることから「その間、どのように農地を維持するかの目標も必要だ」と述べた。
全国農業会議所の稲垣照哉専務は「家族農業の活性化」も重要だと提起した。とくに法人化せず雇用もしていない家族経営でも3000万円程度の収益がある経営はあり、その維持を目標として設定することは農村政策、地域政策の観点からも重要で支援が必要だと述べた。また、市町村の認定農業者22万人の4割が65歳以上で「経営承継対策が待ったなし」の状況であり、新規就農の確保につなげていく視点での市町村による「マンツーマンでの支援」が求められているとした。
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