JAの活動:今さら聞けない営農情報
農薬の正しい使い方(57)ウイルス病の防除タイミング【今さら聞けない営農情報】第323回2025年11月8日
「いまさら」では農薬を正しく、安全に、しかも高い効果を得るための農薬の正しい使い方の基礎知識をご紹介しています。農薬の防除効果は、有効成分をいずれかの方法で作物に付着または吸着させることができてはじめて発揮されますので、高い効果を発揮させるには、有効成分をいかに効率よく作物に付着させるかが鍵となります。しかし、農薬をより効率よく正しく使用するためには、製剤の選択の他に散布対象となる作物やその生育ステージ、あるいは病害虫雑草の生態に合わせた使い方も重要になります。このため、現在、病害の生態に合わせた防除の考え方をご紹介しており、前回と前々回で糸状菌病と細菌病の防除タイミングについてご紹介しましたので、今回は最も厄介なウイルス病の防除タイミングについてご紹介します。
ウイルス性病害も細菌性病害と同様に最適な防除タイミングはなんといっても予防です。つまり、ウイルスに感染させない対策が最も重要です。ウイルス病の感染防止対策(=予防対策)は抵抗性品種の利用と感染経路の遮断の2つに限られます。ウイルス対策資材には一部管理作業時の道具や手指の消毒のための資材があるくらいで、はっきりいって、ウイルスを迎え撃って不活性化させたり、侵入したウイルスにアタックしてウイルスの増殖を防ぐことができる有効成分は今のところ無いのが現状です。
つまり、ウイルス病の対策には耕種的防除しか選べる方法がないのです。ではその対策にどんなものがあるのかご紹介します。
まず、抵抗性品種の利用ですが、文字通りウイルスに抵抗性を持つ品種を作付けすることです。ただし、品種によって抵抗性の度合いが異なり、また抵抗性品種であっても発病がゼロになる品種はまれで、発病が軽症で済む程度のものが多く、抵抗性品種だけで完全な防除ができるとは考えない方が良いでしょう。
次に、ウイルスの感染経路の遮断です。ウイルスの感染経路は、媒介虫や媒介菌が作物を加害することや、ウイルスが付着した手指や道具で作物の芽かきなどの管理作業を行った際にウイルスが侵入してしまうことが主な経路です。この感染経路を遮断するには、管理作業時の手指や道具の消毒を徹底したり、媒介虫や媒介菌の場合には、それぞれに有効な殺虫剤や殺菌剤を使用して媒介者を死滅させたり、施設栽培であれば媒介虫の侵入を阻止する防虫ネットの設置や汚染土の混入を防止する対策が必要になります。また、ウイルス媒介菌が土壌に存在する場合には、熱水や蒸気による土壌消毒によって土壌中の媒介菌を死滅させたりする方法も有効です。
いずれにしても、ウイルス病を効率よく防除するには、抵抗性品種の作付けとウイルスの感染経路の遮断の両方を同時に行うことが、現在のところ最も効率の良い防除対策だと考えられます。
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