「節水型乾田直播」は収量安定化が不可欠 超党派「農業の未来を創造する議員連盟」が農水省・農研機構からヒアリング(2)2025年11月12日
11月11日に開かれた、超党派「農業の未来を創造する議員連盟」による農水省・農研機構のヒアリングでは、節水型乾田直播(は)を含めた直播栽培について、参加した国会議員から疑問や質問が相次いだ。そこで、実際に節水型乾田直播や湛水直播に取り組んでいる農業者にも取り組みの状況を聞いた。
水稲の直播栽培の推移
節水型乾田直播に関しては、新しい技術と言うこともあり「ネット発で広がっている」(農水省)。その一方で、「収量が極めて不安定な事例もある」とされ、収量安定に向けた技術の確立が課題だ。
2年取り組んだが節水型を断念
2024、25年に節水型乾田直播栽培に挑戦した、山形県の農業法人に話を聞いた。この法人では当初、「節水型乾田直播栽培方法がほぼ同じ、主食用米とWCS稲を考えていた」。しかし、水不足と畑雑草対策に悩まされ、1年目はWCS稲の半分以下しか収穫できず、2年目はほとんど収穫できずに終わり「26年は節水型乾田直播はあきらめた」という。
この法人では水稲を50ha以上作付けしており、一部に飼料用米やWCS稲もあるが、大半は主食用。ほかに大豆やソバ、牧草、山菜、子実トウモロコシなども生産している。節水型乾田直播によるWCS稲はこのうち、2024年に2ha、25年に1haで取り組んだ。
節水型のため「もともと水持ちの悪いほ場を選んだ」。「バイオスティミュラントやマイコス(生育促進資材)を使えば、水が少なくても育つと聞いていたが、ほ場の水持ちが悪ければ生育に大きく影響する」と指摘する。特に、25年は干ばつの影響が大きかった。
雑草にも悩まされた。6~7月の生育期は「乾田直播のマニュアルに沿って除草剤を散布し、当初は問題なかった」が、その後に畑雑草が繁殖。除草剤の散布タイミングがずれたり、散布ムラがあると「完全な除草は難しい」。1年目の刈り取り時には、通常のコンバインで刈り取ろうと試みたが、雑草が絡んで収穫が困難な状態に。そこで、契約先の地元の畜産組合に委託し、ホールクロップ用の汎用コンバインで刈り取りを行った。
こうした経験から、特に節水型乾田直播であっても「水持ちのいいほ場を選ぶ必要がある」と振り返る。
湛水直播も課題残る
直播栽培では、農水省が「技術確立済み」とする湛水直播でも、収量確保や除草剤散布の労力などの課題は残っている。
北海道で湛水直播に取り組む農業者に聞くと、「直播稲の弱点は適した品種が少なく、収量が不安定で少ない」と指摘する。この農業者は16haで稲を栽培しており、当初は夫婦で作業していたが、妻が「体がもたないから」との理由で、労力軽減を目的に全面的に湛水直播に切り替えた。
しかし、収量は「10a当たりせいぜい8俵」。25年からはドローンによる播種も始めたが、収量への効果は今のところ見られないという。また、25年はゴールデンウィーク前後の播種期に天候が悪く、播種のタイミングが1週間遅れたため、「生育期間が短くなり、収量がさらに落ちたのではないか」とみている。
この地域では冬場の雪解け水が豊富で水不足の心配はないものの、雑草対策がネックになっている。「移植栽培なら除草剤散布は1回で済むが、直播栽培では3回必要で経費もかかる。しかも散布タイミングを逃せば雑草対策に追われる」という。
周辺でも直播に取り組む農業者は多いが、その背景には「地域で基盤整備が進み、中山間地でもない」など、地理的条件があるという。こうした条件がそろわなければ「小規模ほ場では直播栽培の効率性に疑問が残る」。また、水田には低温から稲を守り、雑草の発生を抑える効果もあり、「あくまで移植栽培が中心であるべき」と強調した。
直播栽培による一定の労力軽減の効果は認めるが、「温暖化の影響で、北海道でも冷害の心配が少なくなった。20年前なら直播が広がることはなかったのではないか」とも述べる。「農業は自然に左右されるのが現実。これを度外視すれば非科学的になる」と指摘する。
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