ヘルスケアの識者が「米の力」を解説 需要拡大へマーケティングも グレイン・エス・ピーが学術セミナー2026年1月15日
グレイン・エス・ピーは1月14日、東京都内で学術セミナー「ヘルスケアの識者が語る米の力」を開いた。農水省補助事業「令和7年度米需要創造推進事業」として行い、約150人が参加した。
日本の食文化の基盤でもある米を取り巻く環境が変わる中で、改めて米の力に関心が高まっている。そこで、米の性能や効能が心と体の健康にとって欠かせないことを、各分野の専門家を招いて発信した。
グレイン・エス・ピーの島鏡太郎社長
主催者を代表して、グレイン・エス・ピーの島鏡太郎社長が、農水省補助事業としてセミナーを4年間続け、今回は初の試みとして平日夜間開催を企画し。総合プロデュースをNPO法人女性ウェルネス食推進機構の伊達友美理事長に委託したことを説明し、専門家による講演で「知見を持ち帰り、共有、拡散を」とあいさつした。
農水省農産局穀物課米麦流通加工対策室の小川英伸室長
続いて、農水省農産局穀物課米麦流通加工対策室の小川英伸室長が来賓あいさつを行った。小川室長は、食生活の変化の中で主食である米の需要が減少してきたことを踏まえ、「米の良さが忘れられている。(セミナーを通じて)米の機能や効能を認識してほしい」と強調した。
冷ますと増える「レジスタントスターチ」
文教大学健康栄養学部の笠岡誠一教授
セミナーでは最初に、文教大学健康栄養学部の笠岡誠一教授が、「腸活には、ごはんを冷まして食べなさい」と題して講演した。食物繊維に近い働きをする炭水化物「レジスタントスターチ」について、生成のメカニズムや生理作用を科学的に解説した。
レジスタントスターチは、消化されにくく大腸まで届くことで、「ブドウ糖に分解されにくく、食後血糖値の上昇を抑えるほか、脂質代謝にも良い影響を与える」ことが知られている。炊き立てのご飯は、冷却によってデンプン構造が変化し、レジスタントスターチが増える。一度冷凍した後に電子レンジで再加熱した場合でも、「実験条件によっては同等、あるいはやや増加するケースが確認されている」と説明した。
こうした仕組みは穀類などにも共通するが、「日本人の主食である米は摂取量が多く、レジスタントスターチ摂取への寄与が大きい」と指摘。炭水化物によって十分なエネルギーを確保することで、たんぱく質が効率よく筋肉の維持に使われ、「高齢者の機能低下であるフレイル予防にもつながる」など、さまざまな効能を示した。
米は設計しやすい主食
トライアスロン エイジグループ日本代表の高橋善郎氏
続いて、トライアスロンのエイジグループ日本代表で、料理研究家でもある高橋善郎氏が、「アスリートと米食」をテーマに講演した。高橋氏は競技生活を続けながら、管理栄養士の資格取得に向けて専門学校にも通っている経験を踏まえ、米食の効能を述べた。
競技の特性から、食事とコンディション管理がうまくいかないと、体重変化や疲労の蓄積、故障、胃腸の不調、パフォーマンス低下につながるため、「必要なのは『完璧』より調整可能性」と指摘。ウォーキングなど軽度の運動を行う広義の「アスリート」でも「食事の設計」の効果があり、「米は唯一無二の設計しやすい主食」とした。
特に、1日3食を固定するのではなく、回数を増やす「分割設計」がパフォーマンス効率の高い食習慣作りにつながること。また、自ら弁当を毎日作った経験から、「ご飯は冷めてもおいしいから続けやすく、痩せやすい体になった」理由として、①調理が簡単で量で計れる②味付けの設計自由度が高い③冷めても味や食感の劣化が少ない、といった特徴を列挙。「頑張らなくても続けられる食生活を知ってほしい」と呼びかけた。
行動変容を設計する
ヘルスケア・ビジネスナレッジの西根英一社長
最後は、ヘルスケア・ビジネスナレッジの西根英一社長が、「マーケティングから考える 食育で大切な4つのこと」と題して講演した。マーケティングを「目的とする行動を獲得すること」とし、米の需要拡大では「ご飯をどう食べるか、どう食べ続けてもらうか」が目的行動にあたると指摘。行動変容の設計にあたり、①モノ(ブランディング)②コト(イシューイング)③ヒト(ターゲティング)④ハコ(マーケティング)の4つの戦略を説明した。
「モノ」では、「おいしい」といった機能価値だけでなく、家族や友人と食べる体験価値や社会的価値の重要性を強調。地域ブランドとして「米と水を一体で売る」可能性に触れた。「コト」では、専門用語を避け、「錆びないカラダ」など分かりやすく共感を得やすい表現で話題化することが普及啓発につながるとした。「ヒト」では、属性による「ペルソナ」ではなく、行動特性が近い「クラスター」に着目し、行動変容の段階に応じたアプローチの有効性を指摘。「ハコ」では、「隠れ不眠」など新たな切り口によるブルーオーシャン市場の創出や、若い世代に目を向ける重要性を示した。
最後に、健康格差の拡大を背景に、ヘルスケアが「カラダ・ココロ・キズナのバランスを整えるウェルビーングへ移行」しており、時代背景から見ても必要な視点だとまとめた。
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