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佐賀県知事選と農協「改革」 田代洋一・大妻女子大学教授2015年1月22日

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・政権が地域に殴り込み
・小選挙区制の虚妄
・安倍首相の四つの顔
・「改革」と言う名の農協攻撃
・統一地方選に向けて

 1月11日投開票の佐賀県知事では、農協改革は争点ではないといいながらも結果として改革推進派が敗北した。安倍政権が推した候補である。今後の農協改革の議論にどんな影響を与えるのか? これを機に中央会改革に焦点があたっている農協改革の本質と問題点を改めて認識し、今後の統一地方選などで意思を示す必要がある。田代洋一大妻女子大教授に課題提起してもらった。

◆政権が地域に殴り込み

田代洋一・大妻女子大学教授 政権が地方選に国政課題を掲げて殴り込みをかけて敗退した。このところ滋賀、沖縄、佐賀と、対決型の知事選で政権は同じパターンで全敗している。
 知事選をめぐって、全国紙と地元や地方紙の報道には大きなギャップがあった。全国紙は、例えば「規制改革の象徴として政権が取り組む『農協改革』をめぐる攻防」(朝日新聞1月6日)だとしたが、佐賀県農政協副会長は「農協改革の是非を問う意図は全くなかった」「われわれは反自民ではない」(佐賀新聞1月14日)としている。
 地方の意図に反して「中央対地方」「政権対農協」の構図(西日本新聞1月13日)をつくったのは、もっぱら政権側である。官邸は、市図書館を「ツタヤ」に運営させたり、市民病院の民間移譲を進めたり、「レモングラス」なるものを農協を通じないで販売したり、農協全体を見直す必要があるとする元武雄市長を「改革」派と見込んで地元に押し付けた。
 選挙戦には政権中枢がこぞって応援に駆けつけ、安倍首相も有権者に「改革を進めるために樋渡候補に1票を」の留守番電話を入れ、物議を醸した(佐賀新聞1月13日)。日経新聞も社説で「過ぎた介入」とした(1月14日)。選挙後に甘利大臣は「政策で支持されたが、候補者で支持されなかったのが今回の結果」(同)としたが、政策でも候補者でも負けた、というより地方選に国政課題をもちこんで負けたのが「今回の結果」である。

(写真)
田代洋一・大妻女子大学教授

 

◆小選挙区制の虚妄

 衆院選で大勝した政権が知事選で連敗する。なぜか。そこに小選挙区制のからくりがある。
 衆院選の小選挙区で、自民党は得票率48%で75%の議席を確保した(比例代表では33%で38%)。絶対得票率(対有権者比)は27%に過ぎない。比例代表では15%たらずである。自公あわせても小選挙区26%、比例代表23%。4分の1の得票で政権を獲得できるのは、要するに小選挙区比例代表制が民意の正確な鏡ではないことを物語る。それは僅差をお化けのように拡大する凸面鏡である。
 時代は政権交代期になったにもかかわらず、野党は政権交代に打ってでられなかった。白けた有権者は棄権した。棄権は小選挙区制の歪み率を高める。さらに小選挙区制は膨大な死票を生み、歪み率をさらに高める(小選挙区で48%とった自民党は75%の議席、13%とった共産党は0.3%の議席、3.7倍の票で228倍の議席がとれる)。

 

◆安倍首相の四つの顔

 大勝におごる安倍首相には四つの顔がある。
 第一は、戦中の侵略の歴史や戦後の民主改革の歴史を「なかったことにする」歴史修正主義者の顔。
 第二は、「岩盤規制」さえとりはらえば経済成長できるとする新自由主義者の顔。
 第三は、国家社会を株式会社化して、一国を株式会社のように運営しようとするワンマン社長の顔。それは日本という国を、「美しい国」どころかブラック企業にしてしまう。
 第四は、慣行化したルールや異なる意見を無視して自分の情念と利害を追求し、抗するものには執拗・陰険ないじめ・仕返しをするいじめっ子の顔。
 第一と第二の顔は、戦後改革期に生まれた農協を「岩盤規制」として解体しようとする。第三の顔は、営利を追求しない協同組合としての農協に営利企業化を迫る。
 最近ではとみに第四の顔がむきだしになっている。沖縄県知事と面会せず沖縄予算を削る。消費税引き上げを伸ばす代わりに福祉予算を削減する。であればこそ、佐賀県知事選についても、「農協が選挙で圧力をかける団体と言う誤った印象を植え付け、官邸が急進的な改革をさらに進めないか不安」(佐賀新聞1月14日)、「全中の中にも、知事選での激突で政権と抜き差しならない関係になることを心配する声もある」(朝日新聞1月6日)とされる。
 そういう懸念も分からないではない。しかし知事を選んだのは運動団体ではなく、あくまで県民である。そして農協王国・佐賀の県民にとって農協「改革」が大きな争点でないわけがない。
 農協「改革」の全てを首相が仕切っているとは言わない。しかし西川農水大臣は6日の記者会見では中央会監査と公認会計士監査の選択制を示唆したが、9日には公認会計士一元化に豹変した。首相は選挙後の14日にも西川大臣に農協改革方針の「着実な推進を指示した」(信濃毎日新聞、1月15日)。大所は首相の意向といえる。

 

◆「改革」と言う名の農協攻撃

 農協「改革」の主な争点は、
[1]非営利規定の否定、営利追求化、
[2]総合農協の解体、専門農協化、
[3]准組合員利用制限、
[4]中央会とその監査制度の廃止、
[5]全農(経済連)・中金・全共連の農協出資の株式会社化
等である(加えて規制改革会議は企業OBを理事に送り込みたがっている)。[1]と[5]は営利企業化という思想で一致する。[2]と[3]は地域の生活インフラとしての農協の否定という点で一致する。
 [4]も[1]と連動する。農協が営利企業化すれば、農協が協同組合原則に即して事業しているかを厳しくチェックする中央会業務監査は不要で、出資者・債権者保護のための公認会計士監査一本でいいということになるからである。
 要するに、個々の論点もさることながら、このような体系性・総合性をもった攻撃であることを看過してはならない。
 政権は、農協「改革」は単協の自由度を増し、農業者等の所得倍増のためという建前を強調する。しかしその背後にはアメリカ金融資本の強い思惑がある。2015年5月まで有効の「在日米国商工会議所意見書」は言う。「JAグループの金融事業を金融庁規制下にある金融機関と同等の規制に置くよう要請する」と(法人税軽減措置の廃止も明示)。さらに「JAバンクとJA共済を監督している農林水産省は、金融監督の専門家ではない。こうした省庁の検査基準は金融庁のそれに比較すると緩く、透明性が低く、運用においても厳格性に劣る」とする。中央会監査も同断ということになろう。
 そして以上の要請が通らない場合には、員外利用、准組合員制度、独禁法適用除外の見直しという二段構えの要求をしている。要するに上記の農協「改革」の論点と全く同じだ。さらに同会議所は「こうした施策の実行のため、日本政府及び規制改革会議と緊密に連携し、成功に向けてプロセス全体を通じて支援を行う準備を整えている」としている。アメリカ金融資本と「連携」し、「支援」を受ける農協「改革」が、なんで日本の農業者のためだろうか。
 それだけではない。上記[5]で全国事業連の農協出資株式会社化が言われているが、そうなれば第一に、アメリカ金融資本は農協だけという出資制限にクレームをつけるだろう。第二に、専門農協化した単協はいずれ経営悪化・倒産し株式を手放さざるを得なくなる。そもそも株式の取得・譲渡制限そのものが株式会社の本旨に反する。こうして手放された株が外資の手に移ればどうなるかは、いくつの破綻銀行の末路に明らかである。その点で農協「改革」は「売国の改革」でもある。

 

◆統一地方選に向けて

 小選挙区制下では候補者は各階層から万遍なく票をとる必要から、特定階層向けの政策を主張しにくい。勢い国政上の争点が国政選挙の争点にならないという奇妙な現象が生じる。それに対して小選挙区制ではない地方選では、それぞれの地域における階層利害が争われ、結果的に国政上の争点が地方で浮上する。それが最近の県知事選の教訓である。
 4月の統一地方選は、農協「改革」法案の上程、TPP妥結の動きと時期的に重なる。国政上の争点が地方選で争われる。地域から国を創る時代がきた。

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