農政:農業協同組合研究会 第29回研究会
【村山美彦・JA共済連代表理事専務】JAのサポート機能を強化 共済事業の自己改革2019年3月4日
・自己改革の取り組み全農と全共連が報告第29回農業協同組合研究会
農業協同組合研究会(会長:梶井功東京農工大名誉教授)は2月16日、東京都内で第29回研究会「自己改革の取り組み状況と課題」を開いた。JAグループの自己改革をテーマにした2回目の研究会で、今回はJA全農とJA共済連からそれぞれの事業の改革実践状況を報告した。本ページは村山美彦・JA共済連代表理事専務の報告です。(司会は元JA全農専務の岡阿彌靖正氏)
共済事業としての自己改革の全体像は、(1)JAの事務負担軽減に向けた取り組み、(2)「農業者の所得増大」に向けた取り組み、(3)「地域の活性化」に向けた取り組み、(4)JA支援機能の強化に向けた取り組みの4本柱で取り組んでいる。
JAの事務負担軽減のメインツールとしてタブレット端末「Lablet's」を導入、LA(ライフアドバイザー)の提案力と活動効率を高めている。訪問先でも事務所でも活用ができ、訪問先の保障内容や近況などを確認登録できるほか、申込手続きもペーパーレス・キャッシュレスで行っている。また災害時の損害調査にも活用し査定の迅速化を実現した。
ペーパーレスの導入により生命の契約申し込みにかかる時間は平均1件あたり約17分軽減されている。JAからは業務時間が減少し組合員・利用者の相談を聞く時間が増えたなどの評価を得ている。導入割合は28年度は32%(生命共済)だったが平成31年1月末は82.5%(長期共済計)と進んでいる。
自動車損害調査での業務分担見直しも進めており、29年度末までに221JAが連合会へ体制移行し30年度末には累計364JA、33年度末までに全県移行を完了することになっている。
農業経営に貢献する取り組みでは農業リスク診断活動を実施してきている。農業経営のリスクに関する意識喚起を行い、リスクチェックとリスクに対する保障提案などを行う活動を35県本部で実施(30年12月末)した。 28年4月からは担い手経営体等の事業リスクを包括的に保障する「農業応援隊」を提供し29年度は36県本部で460件の契約実績となっている。29年10月からはJA労働災害保障制度を実施。また、JAを通じた輸出農産物に起因する損害賠償責任をJA単位で保障するJA共済海外PL保障制度も実施している。
地域活性化に向けた取り組みでは3年間で240億円を準備した地域・農業活性化積立金を活用し、JAにおける地域のくらし、営農に貢献する取り組みを支援してきた。29年度は47都道府県で約65億円を活用し、農業高校への支援、鳥獣害対策、食農教育など4000件を超える独自策を実施した。
次期3か年計画は、「安心と信頼の『絆』を未来につなぐ~地域のくらしと農業を支えるJA共済~」をスローガンに、基本方向は「(1)組合員・利用者への保障提供の徹底と新たなJAファンづくりによる強固な事業基盤の確保」、「(2)永続的な保障提供に向けた効率化の追求と健全性の強化」として検討を進めている。生命保障を中心とする保障提供の強化に向け、地域特性に応じて推進(攻め=新契約獲得)・保全(守り=保障切れ・解約未然防止)両面でのエリア戦略の強化、対象者を明確にし、そのニーズに合わせた施策の一体的取り組みなどのほか、農業リスク診断活動や農作業事故の未然防止活動の展開等により、農業者・農業法人等との関係を強化するとともに、共済契約者・地域住民への理解促進にも取り組み新たなJAファンづくりも強化する。
また、JA共済を取り巻く事業環境変化と他社との競争激化に対応するため、中長期的な事業展開の視点も検討する。
そのイメージは「寄り添う」、「届ける」、「繋がる」をキーワードに、データに基づいて組合員を理解し身近な存在として寄り添い、一人一人に最適な保障・サービスの提供を通じて安心を届ける。そして他事業との連携、協同活動を通じて助け合いの仲間を広げていくことだ。そうすることで、JA共済の使命である「安心と満足の提供を通じた組合員・利用者の豊かな生活・地域社会づくり」に貢献していくため、協同と助け合いの場を広げながら組合員の不安を安心に変えることに取り組んでいきたい。
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