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農政:許すな命の格差 築こう協同社会

【特集:許すな命の格差 築こう協同社会】提言:レジリエンスとしての協同組合 加藤好一(一社)市民セクター政策機構理事長2021年8月19日

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いまの世界は、1980年代の資本主義の本性をむき出しにした「新自由主義」登場し、「世界を独善的に跋扈」し、その結果として「際限のない資本の運動と、限界のある地球生態系との矛盾が頂点に達した」結果であり、これへの対処法は「成長ではありえない」と加藤氏は指摘。そして「厳しい状況においてこその協同組合、このような確信を強めたい」と提言する。

加藤好一(一社)市民セクター政策機構理事長加藤好一(一社)市民セクター政策機構理事長

脱成長に向けた世界的な潮流

JAcomに連載の鈴木宣弘・東大院教授によるコラム、「食料・農業問題 本質と裏側」に注目している。5月27日号は「種から消費までの地域循環型経済を確立する」と題するものであった。

新自由主義は、「今だけ、金だけ、自分だけ」を至上とし、特に多国籍企業が究極の権力の座にある資本主義だ。そのような資本主義はいま末期的状況にあると見受けられるが、その振舞は暴力的だ。ここで鈴木先生は、「進行する事態を把握し打開するためのキーワードは、『グレートリセット』『アグロエコロジー』『ミュニシパリズム』である」と指摘する。

鈴木先生はミニュシパリズムを、「ヨーロッパを中心に広がりつつある、地域に根付いた自治的な民主主義や合意形成を重視する」社会運動として紹介している。バルセロナ(スペイン)、ナポリ(イタリア)、グルノーブル(フランス)などがその中心的な地域だ。これら地域に特徴的な思潮が「脱成長」であり、資本主義の脱構築(システム・チェンジ)だ。

2019年9月の国連地球温暖化サミットで、16歳(当時)のグレタ・トゥーンベリさん(スウェーデン)の演説が世界の共感を呼んだ。彼女は「あなた方が話すことは、お金のことや、永遠に続く経済成長というおとぎ話ばかり。よく、そんなことが言えますね」と訴えた。この演説は、小手先の改革ではない、真に根本的な転換の緊急性を主張している。

こうした世界のうごめきを、これが必然だと平明に語る良書が最近出版された。ヨルゴス・カリス(バルセロナ自治大学)他著の『なぜ、脱成長なのか』(NHK出版)である。邦訳の解説を斎藤耕平・大阪市立大学院准教授が書いている。

家族と循環を基本とする日本農業を

斎藤氏は『人新世の「資本論」』で、「かつて、マルクスは、資本主義の辛い現実が引き起こす苦悩を和らげる『宗教』を『大衆のアヘン』だと批判した。SDGs(持続可能な開発目標)はまさに現代版『大衆のアヘン』である」と言う。ここに脱成長のラディカリズムが表れている。「持続可能な開発」は成長論に等しく、開発=成長で脱成長に反するのだ。

村田武・九州大学名誉教授は、斎藤先生のSDGs批判を反批判する。私は村田先生の主張を支持する。一方で、斎藤先生はリービヒ(ドイツの化学者)のマルクスへの影響を重視するが。村田先生もここは同様の立場だ(『家族農業は「合理的農業」の担い手たりうるか』等)。私もリービヒには関心があり、国連の「国際家族農業年」(14年)をふまえた拙稿で(「農林金融」14.4月号)、概ね次のように書いたことがある。

「マルクスの農業論というと、かつてのソ連の国営集団農場的なものと思われる向きもあろう。しかしマルクスは『小生産者たちのアソシエーション(連合)』(柄谷行人氏)こそ、農業生産にふさわしいと考えた」。

「加えて環境・循環の視点(物質代謝)を重視した。そして北米的な近代農業を、土壌成分を収奪し、持続的生産を損なうものとして批判した。このマルクスの思想を導いたのがリービヒだ。

リービヒは「農芸化学の父」と称され、化学肥料を持論に基づき開発した。しかしその一方で循環型の農業を重視し,江戸期の日本農業を高く評価した」。

リービヒは『化学の農業および生理学への応用』で、「日本の農耕は大きな自然の法則にのっとった、『循環の鎖の輪』だ。その輪が断ち切られた時、自然の法則が壊され、地球の自然そのものが狂ってくる」と説いた。アグロエコロジー的な主張の走りと言えよう。

後述するレイドローも「食糧価格は,とくに石油に頼った高度な機械化農業の産物については,上昇しつづけていくだろう。大規模農業が効率的でないと考えられるようなひとつの限界点にわれわれは達するだろうし,より小規模な農場への回帰が避けられなくなるかもしれない」と予見した。

昨今わが国で、50年までに有機農業を全農地の25%に拡大するなど、意欲的な目標を掲げる「みどりの食料システム戦略」が策定された。ただしその実現に生命工学的な技術(例えばゲノム編集等)が採用されないか等の懸念もなくはない。今後注視したい問題だ。

画期としての80年とレイドロー報告

新型コロナ感染症による世界経済の危機への対処法は「成長」ではありえない。この成長こそ、今日の様々な地球規模の危機を招いた原因で、新型コロナもその一環だろう。

成長の不可能性は70年代に顕著であったが(ローマクラブの「成長の限界」、『複合汚染』、オイルショック等)、80年代に新自由主義という本性を剥き出しにする資本主義が登場する。そして89年のベルリンの壁崩壊による資本主義の勝利宣言や、地球を覆いつくすグローバリズムの進展と相まって、新自由主義は世界を独善的に跋扈した。その結果、際限のない資本の運動と、限界のある地球生態系との矛盾が頂点に達した。

「西暦2000年における協同組合」(レイドロー報告/ICA〔国際協同組合同盟〕モスクワ大会〔80年〕レポート/日本経済評論社)は、このような歴史的変質を予見し、この事態への主体的防御としての協同組合が果たすべき役割を的確に示唆した。「協同組合セクター論」(注1)や、「四つの優先分野」(注2)等に示されたレイドローの提言がそれだ(注3)。

しかも重く受け止めるべきは、その表題が示すように、20世紀中になすべき事としてこの提言があったことだ。しかしすでに21世紀も21年が、レイドロー報告から数えると41年の時間が過ぎ去った。

学術書である『大崩壊』(19年/草思社)が、フランスでベストセラーになった。この本は今日的な危機がもたらす近未来を、かなり悲観的に語る。今日の「人新世」(18世紀後半の産業革命以降の「人類の時代」)と称されるこの時代が、恐竜に次ぐ地球史上第6番目の大量絶滅=人類自滅の局面を招いたとの認識がその根底にある。

『大崩壊』によれば、この危機を適切に回避するには、80年代から世界的枠組みで対処すべきだった。しかし新自由主義はこれとは真逆に地球を改造し、指数関数的に危機を増幅させた。自然大災害の頻発(慢性化)はその証左であろう。ようやく世界は国連のもと16~30年までのSDGsを掲げるに至ったが、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)がその進捗を著しく阻害している。

協同組合的レジリエンスの強化

悲観的な『大崩壊』に数少ない未来志向的な提言がある。「地域レベルでレジリエンス(適応力・回復力)のある小さなシステムを構築し、来るべき経済、社会、生態への衝撃に耐えられるようにする」というものだ。

この喫緊の課題を担う重要なアクターとして、協同組合への期待が高まっている。『なぜ、脱成長なのか』の著者たちも、協同組合の役割を重視する。

8月15日の日本農業新聞は、国連における持続可能な開発目標の達成に向けた日本政府の報告について報じた。「SDGs達成へ協同組合評価 "新しい公共"担い手に」という見出しで、協同組合がポジティブに位置づけられたという。私は民主党政権時代に、首相官邸で不定期に開かれた「新しい公共推進会議」の委員として参加したが、多勢に無勢、そこでは協同組合は「古い公共」と評された。

このような諸情勢を踏まえ、労働者協同組合法が成立したいま、協同組合陣営は自信を持つべきだ。厳しい状況においてこその協同組合、このような確信を強めたい。そして地域協同をより重層化し、かつ協同組合間連携を強め、協同組合的レジリエンスの可能性を拡げる。ともにがんばりましょう。

(注1)協同組合セクター論:暴走する「私」〔企業〕と「公」〔政府〕の両セクターを、「共」〔協同組合等の社会的連帯経済の部門〕のセクターが制御するという、セクターバランス論。

(注2)四つの優先分野:(1)食料問題への貢献、(2)労働者協同組合の推進、(3)安全・健康・環境に配慮する保全者の社会づくり、(4)協同組合地域社会(協同村)の建設。

(注3)『西暦2030年における協同組合』(20年/社会評論社)所収の拙稿を参照願えれば幸いである。

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